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増加する外国人整備士!その実力と日本の自動車業界への影響

整備士不足が叫ばれて久しいですが、近年、その解決策として注目されているのが外国人整備士です。高い技術力を持つ外国人材の活躍は、日本の自動車業界に新たな風を吹き込んでいます。しかし、言葉の壁や文化の違いなど、乗り越えるべき課題も存在します。本記事では、外国人整備士増加の背景から、彼らの実力、そして日本の自動車業界に与える影響までを詳しく解説。さらに、外国人整備士と働く上で重要なポイントについても紹介します。これから整備士を目指す方、外国人材の採用を検討している企業の方、そして外国人整備士と働く現場の方まで、ぜひ本記事を通して、外国人整備士の活躍と、これからの日本の自動車業界について考えてみましょう。

外国人整備士増加の背景

近年、日本の自動車業界では外国人整備士の存在感が増しています。その背景には、日本の社会構造の変化と自動車業界の状況が大きく関わっています。

日本の自動車業界における人手不足

長らく続く少子高齢化の影響で、日本の労働人口は減少の一途を辿っています。自動車整備業界も例外ではなく、深刻な人手不足に悩まされています。特に、ベテラン整備士の引退や若者の車離れなども相まって、人材の確保は業界全体の喫緊の課題となっています。

要因詳細
少子高齢化若年層の自動車整備士志望者が減少し、ベテラン整備士の大量退職期に突入しているため、人材の供給が追いついていません。
労働条件の厳しさ重労働・長時間労働のイメージや休日の少なさなどから、敬遠されがちな職業となっています。
待遇面の課題他業種と比較して給与水準が低い、昇給が見込みにくいなど、待遇面での改善が求められています。

グローバル化と外国人労働者の受け入れ拡大

一方、グローバル化の進展に伴い、日本企業は海外進出を加速させています。自動車メーカーもその例外ではなく、海外での生産・販売拠点の拡大に伴い、現地での整備士の需要が高まっています。また、国内においても、輸入車の増加や外国人観光客の増加に伴い、外国語に対応できる整備士の必要性が高まっています。

こうした状況を背景に、政府は外国人労働者の受け入れを拡大する政策を打ち出しました。2019年には「特定技能制度」が創設され、自動車整備もその対象職種の一つとなりました。この制度により、一定の技能と日本語能力を持つ外国人材が、より円滑に日本で就労できるようになりました。

特定技能制度の概要

●技能実習制度よりも高い技能水準と日本語能力を有する外国人材を対象とした在留資格
●自動車整備を含む14分野が対象
●最長5年間の在留が可能

これらの要因が複合的に作用し、外国人整備士は日本の自動車業界において、欠かせない存在になりつつあります。

外国人整備士の実力

近年、日本の自動車業界で存在感を増している外国人整備士。彼らは、高い技術力と勤勉な仕事ぶりで、業界に新たな風を吹き込んでいます。具体的には、以下のような点が挙げられます。

高い技術力と専門性

外国人整備士の中には、母国で長年の経験を積んだベテランや、高度な専門知識を持つ人材が多くいます。特に、欧州車やアメリカ車など、外国車に精通した整備士は、日本国内では希少価値が高く、重宝されています。彼らの多くは、最新の技術や知識を積極的に習得しており、日本の自動車整備技術の向上にも貢献しています。

豊富な経験と専門知識

●母国で長年整備士として活躍してきた経験を持つ人が多く、豊富な知識と経験を活かして、様々な車種の整備に対応することができます。
●特定のメーカーや車種に特化した専門知識を持つ人も多く、高度な技術や知識が求められる輸入車の整備にも対応可能です。

最新の技術への対応

●電気自動車やハイブリッド車など、最新の技術が導入された車両の整備にも積極的に対応しています。新しい技術を学ぶことに意欲的で、常にスキルアップを目指しています。
●コンピューター診断など、最新の機器やシステムを使いこなせる人材も多く、効率的かつ正確な整備を提供できます。

勤勉な仕事ぶり

外国人整備士は、真面目で責任感が強い人が多く、与えられた仕事を最後までやり遂げようとする勤勉な姿勢が評価されています。また、日本の自動車整備の品質の高さへの理解も深く、丁寧な仕事をすることを心がけています。

真面目さと責任感の強さ

●時間厳守やルール遵守を徹底し、責任感を持って仕事に取り組む姿勢は、日本の職場環境にもよく馴染みます。
●顧客の要望に真摯に耳を傾け、安全で快適な車を提供するために、最善を尽くします。

日本の自動車文化への適応

●日本の自動車整備の高い品質基準を理解し、丁寧で正確な作業を心がけています。
●チームワークやコミュニケーションを重視し、周囲と協力しながら仕事を進めることができます。

外国人整備士が持つ強みの具体例

上記以外にも、外国人整備士は様々な強みを持っています。具体的な例を以下の表にまとめました。

国籍強み具体的な例
ドイツ高度な技術力、精密機械への強みドイツ車は世界的に品質の高さで知られており、ドイツ出身の整備士は高度な技術力と精密機械への深い知識を有しています。特に、エンジンやトランスミッションなど、複雑な機構を持つ部品の整備を得意としています。
アメリカ大型車、アメ車の整備経験アメリカは、日本に比べて大型車やピックアップトラックが普及しており、アメリカ出身の整備士は、これらの車両の整備に豊富な経験を持っています。また、アメ車の整備にも精通しており、カスタムパーツの取り付けなども得意としています。
ブラジルフレキシブルな対応力、自動車修理への柔軟性ブラジルは、日本とは異なる環境や条件下で自動車が使用されていることが多く、ブラジル出身の整備士は、臨機応変な対応力と柔軟な発想で問題解決にあたることができます。限られた資源や情報の中でも、工夫して修理を行うことができるのも強みです。

このように、外国人整備士は高い技術力や勤勉な仕事ぶりなど、多くの強みを持っています。日本の自動車業界において、彼らの存在はますます重要性を増していくでしょう。

日本の自動車業界への影響

外国人整備士の増加は、日本の自動車業界にさまざまな影響を与えています。人手不足の緩和や技術の向上といったプラス面だけでなく、新たな課題も生まれており、それぞれの影響について詳しく見ていきましょう。

人手不足の緩和と技術の向上

深刻化する人手不足に悩む日本の自動車業界にとって、外国人整備士の増加は貴重な人材獲得の機会となっています。外国人整備士の多くは高い技術力と専門性を持ち、勤勉な仕事ぶりで現場を支えています。特に、自動車整備の専門学校や訓練機関を卒業し、母国で実務経験を積んだ人材は即戦力として期待されています。

また、外国人整備士の流入は、日本の自動車業界全体の技術力向上にも貢献しています。異なる文化や言語背景を持つ整備士が共に働くことで、新たな技術や知識が共有され、技術革新やサービス向上につながる可能性を秘めていると言えるでしょう。

国際化の進展

外国人整備士の増加は、日本の自動車業界の国際化を促進する要因の一つとなっています。海外の自動車メーカーや部品メーカーとの取引が増加する中、外国人整備士は、その言語力や文化理解を活かして、円滑なコミュニケーションやビジネスの橋渡し役を担うことが期待されています。また、外国人顧客への対応においても、外国人整備士の存在は大きな強みとなります。彼らの母国語での接客や文化的背景を考慮したサービス提供は、顧客満足度向上に繋がり、企業の競争力強化にも貢献するでしょう。

新たな課題と対応策

外国人整備士の増加は、日本の自動車業界にとって多くのメリットをもたらす一方で、新たな課題も浮き彫りにしています。これらの課題を克服し、外国人整備士と日本人スタッフが共に働きやすい環境を整備することが、業界全体の成長に不可欠です。

言語の壁とコミュニケーション問題

外国人整備士とのコミュニケーションにおける言語の壁は、業務効率や安全性の面で大きな課題となります。特に、専門用語や複雑な指示を正確に伝えることが求められる整備現場では、言葉の誤解が重大事故に繋がる可能性も孕んでいます。そのため、企業は、外国人整備士に対する日本語教育や、多言語対応の整備マニュアルの導入など、コミュニケーションを円滑にするための取り組みが求められます。また、日本人スタッフ側も、異文化理解を深め、外国人整備士の文化や習慣を尊重したコミュニケーションを心がけることが重要です。

ビザ取得と雇用管理

外国人整備士の雇用には、適切なビザの取得と、外国人雇用に関する法令遵守が求められます。企業は、出入国管理法などの関連法令を熟知し、外国人整備士が安心して働けるよう、適切な雇用契約の締結や社会保険への加入手続きなど、必要なサポートを提供する必要があります。また、ビザの更新手続きなど、外国人雇用に伴う事務手続きを適切に行う必要があり、専門知識を持った担当者を配置するなど、体制整備が求められます。

文化や習慣の違いへの理解

外国人整備士と日本人スタッフとの間には、文化や習慣の違いから、誤解や摩擦が生じる可能性があります。例えば、労働時間に対する考え方や、上司・部下間のコミュニケーション方法、休暇の取得時期など、国や地域によって異なる価値観を理解し、互いに尊重することが重要です。企業は、外国人整備士と日本人スタッフが共に働きやすい環境を作るため、異文化理解研修などを実施し、相互理解を深めるための取り組みを行うことが求められます。

外国人整備士の定着支援

外国人整備士にとって、日本での生活や仕事に適応し、長期的に活躍するためには、企業によるサポート体制が重要となります。住居探しや生活に必要な手続きのサポート、日本語学習の機会提供、日本の文化や習慣に関する情報提供など、外国人整備士の生活面をサポートすることで、安心して仕事に集中できる環境を整えることが、定着率向上に繋がります。また、外国人整備士のキャリアパスを明確化し、スキルアップや昇進の機会を提供することで、長期的なキャリア形成を支援していくことも重要です。

これらの課題を克服することで、外国人整備士は日本の自動車業界にとって貴重な人材となり、業界全体の発展に大きく貢献することが期待されます。

外国人整備士と働く上で大切なこと

増加する外国人整備士と円滑に、そして最大限に能力を発揮しあえるような環境で働くためには、文化や言語の違いを理解し、積極的にコミュニケーションを取り、相互理解を深めることが重要です。ここでは、外国人整備士と働く上で特に意識したいポイントを具体的に解説します。

異文化理解と言語の壁

育ってきた環境や文化が違えば、価値観や仕事に対する考え方、コミュニケーションのスタイルも異なります。例えば、日本人は上司の指示を待つ傾向が強いですが、国によっては自分の意見を積極的に発言することが求められる文化もあります。また、宗教上の理由から特定の食品を食べられない、特定の日に休暇を取る必要があるなど、就労上の配慮が必要なケースもあります。

言葉の壁も、スムーズなコミュニケーションを阻害する要因となります。特に専門用語や技術的な表現は、母国語であっても理解が難しいものです。外国人整備士が理解できるレベルの日本語で話しているか、専門用語を補足するなどの配慮が必要です。

具体的な取り組み例

●外国人整備士の出身国や文化について学ぶ機会を設ける
●社内用語集を作成する
●重要な指示や連絡は文書でも残す
●ジェスチャーや図解を積極的に活用する
●翻訳アプリや通訳サービスを活用する

コミュニケーションとチームワーク

職場環境におけるコミュニケーション不足は、誤解や作業効率の低下につながり、外国人整備士との間では、文化や言語の違いがさらにそのリスクを高めます。チーム全体で積極的にコミュニケーションを取り、相互理解を深めることが、外国人整備士の能力を最大限に引き出し、職場全体の活性化にもつながります。

コミュニケーションを円滑にするためのポイント

場面具体的な行動
日常会話
挨拶を交わし、雑談などを通じて距離を縮める相手の文化や習慣に興味を示し、積極的に質問する自分の国の文化や習慣についても紹介する
業務指示簡潔で分かりやすい言葉を使う重要なポイントは繰り返し伝える理解度を確認しながら進める指示内容を文書や図解で共有する
報告・連絡・相談
報告・連絡・相談の重要性を理解させ、習慣づける専用ツールやフォーマットを導入する定期的な面談で進捗状況や課題を共有する

チームワークを築くためのポイント

●チームの目標や役割分担を明確にする
●外国人整備士の意見も尊重し、積極的に採用する
●飲み会やイベントなど、交流の機会を設ける
●外国人整備士のメンター制度を導入する

外国人整備士と働くことは、日本の自動車業界にとって新たな可能性を広げる一方で、文化や言語の違いなど、乗り越えるべき課題も存在します。しかし、これらの課題は、互いの文化や考え方を理解し、積極的にコミュニケーションを取ることで解決できるものです。外国人整備士と日本人整備士がお互いの強みを活かし、協力し合うことで、より良い職場環境を築き、日本の自動車業界の発展に貢献していくことが期待されます。

まとめ

日本の自動車業界は深刻な人手不足に直面しており、その解決策として外国人整備士の活躍が期待されています。彼らは高い技術力と勤勉な仕事ぶりで、日本の自動車業界に貢献しています。外国人整備士の増加は、人手不足の緩和だけでなく、技術の向上や国際化の進展にもつながっています。

しかし、異文化理解や言語の壁など、外国人整備士と働く上で克服すべき課題も存在します。円滑なコミュニケーションとチームワークを築くためには、お互いの文化や考え方を尊重することが重要です。外国人整備士と日本人整備士が協力し、それぞれの強みを生かすことで、日本の自動車業界はさらに発展していく可能性を秘めていると言えるでしょう。

参考:【技能実習OR特定技能】フィリピンなどの外国人自動車整備士を雇用するならどっちがいいの?
参考:特定技能「自動車整備」|外国人を雇用するために必要な準備・ステップ・注意点とは?
参考:増加する外国人整備士!その実力と日本の自動車業界への影響