KANTO Industrial College

【車未所持者向けアンケート】車は買う?シェアで十分?20代のカーライフ意識調査

若者の車離れが叫ばれて久しいですが、実際の20代は車にどのようなイメージを持っているのでしょうか。今回の調査では「車を買うか、それともシェアで十分か?」というテーマを中心に、9つの設問を通して20代のリアルなカーライフ意識を探りました。

所有への意欲、維持費への不安、新技術への期待など、グラフに表れた結果からは世代ならではの特徴が浮き彫りになっています。本記事では、それぞれの設問ごとの回答傾向を紹介しつつ、背景にある価値観や今後の可能性について解説していきます。

車の所有についての考えを教えてください

62%が「自分で所有したい」と回答しており、若年層の間でもマイカー志向は依然として根強いことがわかりました。車を持つことで自由に移動できる安心感や、自分だけの空間を所有する満足感が背景にあると考えられます。

一方で「カーシェアやレンタルで十分」と答えた人も22%おり、必要なときだけ利用するという合理的な価値観も広がっています。さらに16%は「所有したくない」と回答しており、駐車場代や保険料など維持費用の高さが所有を敬遠する理由になっていると推測されます。

全体としては「所有したい派」と「必要時だけ派」の二極化が進んでおり、モビリティサービスの多様化を裏付ける結果となりました。今後は、ライフスタイルに応じて所有とシェアを柔軟に選択できる仕組みが求められるでしょう。

車を持つとしたら、一番の目的は何ですか?

「レジャー・旅行」が35%で最多、次いで「買い物・生活」が28%、「通勤・通学」は22%にとどまりました。20代にとって車は日常の必需品というより、余暇や生活の利便性を高めるツールとして位置づけられていることが見て取れます。公共交通が発達している都市部では特に通勤・通学での必要性が低下しており、その分「休日の楽しみ」や「大きな買い物の利便性」が所有理由を押し上げていると考えられます。

さらに「デート・交友」9%、「家族のため」6%といった回答も一定数あり、ライフステージに応じて利用目的が変化していくことがうかがえます。メーカーや販売側にとっては、「日常の快適性」と「非日常の体験」を両立できる車種の提案や、レジャー向けのアクセサリー・装備を強調した訴求が効果的だといえるでしょう。

車を選ぶ際に最も重視するポイントは何ですか?

最も多かったのは「価格」で34%、続いて「燃費・維持費」が28%と、6割以上がコスト面を最重要視していることが明らかになりました。「デザイン」17%、「安全性」16%と、外観や安心感を重視する層も一定数いますが、「最新技術(自動運転など)」や「環境性能(EVなど)」はほとんど選ばれていません。

これは、20代の多くが“車を買えるか、維持できるか”という現実的な視点を優先していることを示しています。収入が安定する前の若い世代にとって、燃費や保険、税金を含めたトータルコストは特に大きな懸念です。したがって、販売やマーケティングの場面では、単純な車両価格だけでなく、3年間や5年間での総支払額をシミュレーションし、維持費まで含めた「コストパフォーマンスの良さ」を具体的に提示することが、購入意欲を高めるポイントになるでしょう。

車にかかるコストの中で、最も気になるものはどれですか?

「購入費用」が24%で最多でしたが、「駐車場代」21%、「ガソリン代」21%、「車検費用」20%とほぼ同水準で続いており、単一の負担ではなく“全体的な出費感”が所有をためらう要因になっていることがわかります。「自動車保険料」は12%で相対的に低めですが、決して無視できる数字ではありません。若者にとっては車の価格だけでなく、購入後に毎月・毎年積み重なっていくコストが心理的なハードルとなっています。

この結果から見えてくるのは、車に関わる費用が多岐にわたるため、予測可能性と分かりやすさが重要であるということです。残価設定ローンやカーリース、維持費込みの定額制サービスなどは、この不安を和らげる有効な手段になり得ます。つまり「総額でどれくらいかかるのか」を見える化する工夫が求められています。

駐車場代(月額)としていくらまでなら許容できますか?

「5,000〜1万円」が40%、「〜5,000円」が39%と、約8割の回答者が“月1万円以内”を理想としていることが明らかになりました。さらに「0円」と答えた人も10%存在し、特に地方や郊外では駐車場にお金をかけたくないという意識が強いと考えられます。

一方で「1〜2万円」は9%、「2万円以上」と答えた人はわずかであり、駐車場に高額を支払うことへの抵抗感は明らかです。駐車場代は車の購入可否を左右するほど大きな要素であり、都市部では車を所有しない理由の一つになっているといえます。

販売やメーカーにとっては、駐車場の確保やコスト削減をサポートする施策が鍵です。例えば、購入者向けの駐車場優待やカーシェア併用プランの提案、住宅メーカーとの連携による駐車環境のセット提供などが考えられます。

自動車保険料(月額換算)としていくらまでなら許容できますか?

調査では「5,000〜1万円」が42%と最も多く、次いで「〜5,000円」が34%でした。つまり全体の4分の3以上が「月1万円以内」を希望していることになります。「1〜1.5万円」は16%にとどまり、「2万円以上」と答えた人はほとんどいませんでした。

保険は必須の固定費であるため、若年層にとって高額になると車そのものの所有を断念する理由につながりやすいといえます。この結果は、自動車保険の価格設定や商品設計に対して強いインパクトを持ちます。例えば、走行距離や運転行動に応じて保険料が変動するテレマティクス型の保険、または若者専用の低価格プランの導入はニーズに合致します。

さらに「保険料を下げる工夫」をわかりやすく提示することで、車の所有意欲を下支えできる可能性が高いといえるでしょう。

EV(電気自動車)や自動運転車についてどう思いますか?

「興味はあるがコストが不安」と回答した人が65.7%と圧倒的多数を占めました。「積極的に使いたい」は13.1%にとどまり、「あまり使いたくない」が19.2%、「全く使わない」はごく少数でした。若年層にとってEVや自動運転は魅力的な存在である一方で、購入価格の高さや充電インフラの不足、維持費やバッテリー寿命といった要素が大きな懸念材料となっていることが伺えます。

つまり「興味」と「現実」の間に大きなギャップがある状態です。メーカーや販売側は、補助金や残価設定ローンを含めた実際の負担額をわかりやすく提示する必要があります。また、短期リースやカーシェアでEVを体験できる機会を提供することで、導入の心理的ハードルを下げることも有効です。普及には“身近に感じられる価格設計と体験”が不可欠です。

車を持つとしたら、どんな点の維持や整備が一番気になりますか?

回答の半数以上、52%が「車検」と答えており、定期的にまとまった出費が発生することへの懸念が最も大きいことがわかりました。次いで「メンテナンス(オイル・タイヤ交換など)」が34%で、日常的な維持費用も大きな負担要素と認識されています。一方、「燃費やエコ性能」を気にする人は11%、「修理費用」はわずか3%でした。

若者にとっては突発的な修理よりも、必ず発生する定期出費の方が心理的に大きな負担となっているといえます。この結果からは、コストを予測しやすく、負担を分散できる仕組みの必要性が浮き彫りになります。例えば、定額制の整備パックやメンテナンス費込みのカーリース、車検費用の分割支払いなどが若年層には受け入れられやすいでしょう。見通しの立つ安心感が、所有のハードルを下げるカギになります。

自動車整備士の仕事について、どのようなイメージがありますか?

「車を安全に維持する大事な仕事」と回答した人が43%で最多でした。次いで「技術が必要で難しそう」が33%、「体力的に大変そう」が16%と続きました。「将来性がありそう」と答えた人はわずか4%にとどまり、ネガティブな印象が少なからず存在することが浮き彫りとなりました。

整備士という職業に対しては、責任の重さや専門性への尊敬がある一方で、厳しい環境で体力を消耗する仕事というイメージが強いことがわかります。若者に整備士の仕事を魅力的に映すには、電動化や自動運転化といった新技術に対応できる職業としての成長性をアピールする必要があります。

また、働き方改革やデジタル診断機器の普及により、従来よりも効率的で体力的な負担が少ない現場に変わっていることを伝えることも大切です。こうした情報発信が「大変そう」というイメージを払拭し、将来性を感じさせる鍵となるでしょう。

調査結果から見える20代のカーライフ観

今回の調査を通じて、20代のカーライフ観は「自由に所有したい派」と「必要な時だけ使う派」に二極化していることが明らかになりました。購入や維持にかかるコストへの懸念は強いものの、レジャーや生活の利便性を高めたいという気持ちは根強く残っています。また、EVや自動運転など新しい技術には関心を示しつつも、現実的には価格やインフラの問題が普及の壁となっていることも浮き彫りになりました。
今後のモビリティ市場に求められるのは、「所有とシェアの両立」「コストを明確化したサービス設計」「体験の提供」による心理的ハードルの解消です。20代の価値観に寄り添った提案が、自動車業界にとって次の成長機会となるでしょう。