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自動車エンジニアの仕事が変わる:EV・自動運転時代に求められる技術とは

自動車エンジニアの仕事は、EV(電気自動車)や自動運転の技術革新によって、従来の機械中心からソフトウェアや電気・電子分野へと大きくシフトしています。本記事では、この大変革期において求められるスキルセットの変化を徹底解説。C++やPythonといったプログラミング言語、AI・データサイエンス、サイバーセキュリティなど、今後必須となる専門知識を具体的に紹介します。新卒や転職で自動車エンジニアを目指す方、現役エンジニアが自身のキャリアを見つめ直すための、未来のキャリアパスと学習戦略が分かります。

自動車エンジニアとは 従来の仕事内容と役割

自動車エンジニアとは、自動車の研究、設計、開発、生産、品質管理など、車が顧客の手に渡るまでの一連のプロセスに携わる技術者の総称です。一台の自動車は約3万点の部品から構成される複雑な工業製品であり、その開発には多岐にわたる専門知識を持つエンジニアたちの連携が不可欠です。ここでは、自動車業界が大きな変革期を迎える以前の、いわゆる「従来型」の自動車開発における代表的なエンジニアの仕事内容と役割について解説します。それぞれの専門領域で技術を追求し、より魅力的で高性能な車を世に送り出すことが彼らの使命でした。

車体やシャシーを設計する機械系エンジニア

車体やシャシーを設計するエンジニアは、自動車の骨格と足回りを担当し、車の基本性能である「走る・曲がる・止まる」と「安全性」を根幹から支える重要な役割を担います。車体(ボディ)設計では、衝突時の衝撃を吸収して乗員を守るための衝突安全性能や、走行時の安定性に影響するボディ剛性を確保しつつ、燃費向上のための軽量化という相反する課題に取り組みます。一方、シャシー設計では、サスペンションやブレーキ、ステアリングといった部品を担当し、乗り心地や操縦安定性を追求します。3D-CADを用いた精密な設計はもちろん、CAE(Computer Aided Engineering)と呼ばれるコンピュータシミュレーションを駆使して、強度や剛性、衝突性能などを事前に解析・評価しながら開発を進めていきます。

エンジンなどパワートレインを開発するエンジニア

自動車の心臓部であるエンジンやトランスミッションをはじめとするパワートレイン(動力伝達装置)の開発は、自動車の動力性能や環境性能を決定づける、花形ともいえる分野です。エンジン開発エンジニアは、より高い燃焼効率を求めて熱効率の改善やフリクションの低減を追求し、高出力と低燃費、そしてクリーンな排出ガスを両立させることを目指します。ピストンやクランクシャフトといった部品単位の設計から、吸排気システム、燃料噴射システムまで、エンジン全体を一つのシステムとして統合し、性能を最大限に引き出すための研究開発と実験・評価を繰り返します。近年では、ハイブリッドシステム(HV)の開発もこの領域に含まれ、モーターとエンジンを協調制御する高度な技術が求められてきました。

内外装デザインを実現する設計エンジニア

内外装の設計エンジニアは、カーデザイナーが描いた創造性あふれるデザインを、量産可能な製品として具現化する役割を担います。デザイナーの意図を正確に汲み取りながら、安全性、法規、空力性能、生産性、コストといったエンジニアリングの観点から実現可能性を検討し、具体的な形状に落とし込んでいきます。外装(エクステリア)ではバンパーやドア、ライトなどの部品を、内装(インテリア)ではインストルメントパネルやシートなどを担当します。デザイン性と機能性、生産性を高い次元で両立させるための調整役として、デザイナーや生産技術エンジニアなど、多くの関係部署と密に連携しながら業務を進めるコミュニケーション能力も不可欠です。

高品質な車づくりを支える生産技術エンジニア

生産技術エンジニアは、設計部門が作成した図面をもとに、自動車を高品質かつ効率的に量産するための生産ラインや製造プロセスを構築する専門家です。図面上の車を現実の製品として世に送り出す、モノづくりの最前線を担う存在と言えるでしょう。具体的な仕事内容は、プレス、溶接、塗装、組立といった各工程における最適な工法を開発し、必要な生産設備やロボットの導入を計画することです。また、製造現場で発生する課題を解決し、生産性の向上やコストダウン、品質の安定化を図るための改善活動も重要な業務です。サプライヤーと協力して部品の品質を確保するなど、その活動範囲は工場内にとどまらず、多岐にわたります。

自動車業界の大変革CASEが自動車エンジニアの未来を変える

自動車業界は今、「100年に一度の大変革期」の真っ只中にあります。この変革を象徴するキーワードが「CASE(ケース)」です。これは、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリング&サービス)、Electric(電動化)という4つの技術トレンドの頭文字を取った造語です。これらは個別の技術ではなく、相互に連携することで、自動車の価値を「所有するもの」から「利用するもの」へ、単なる移動手段から「社会インフラの一部」へと根本的に変えようとしています。この巨大な変化の波は、自動車エンジニアの仕事内容、求められるスキル、そしてキャリアパスに大きな影響を与えています。もはや従来の機械工学の知識だけでは、新しい時代の車づくりに対応することは困難になりつつあるのです。

EV化で激変するパワートレイン開発の現場

CASEの中でも特に大きな変化をもたらしているのが「E」、すなわち電動化(EV化)です。これまで自動車の心臓部であったエンジンやトランスミッションといった内燃機関(ICE)の開発は、パワートレインエンジニアの主戦場でした。しかし、EVではこれらの部品がモーター、バッテリー、インバーターといった電動コンポーネントに置き換わります。これにより、開発の主役は大きく変わりました。機械工学的な燃焼効率の追求から、電気・電子工学や化学に基づいたエネルギー効率の最大化へと開発の重点がシフトしたのです。例えば、バッテリーのエネルギー密度を高めるための材料開発、航続距離を伸ばすための高度なバッテリーマネジメントシステム(BMS)の構築、そしてモーターの性能を最大限に引き出すインバーターの制御技術など、新たな専門知識が不可欠となっています。長年エンジン開発に携わってきたエンジニアも、これまでの経験を活かしつつ、こうした新しい電動化技術へのリスキリングが急務となっています。

自動運転とコネクテッドがもたらすソフトウェアの重要性

「A」の自動運転と「C」のコネクテッド技術は、自動車を「走るコンピューター」へと進化させています。自動運転レベルが高度化するにつれて、カメラ、LiDAR(ライダー)、ミリ波レーダーといった膨大な数のセンサーが搭載され、それらの情報を統合・分析して瞬時に車両を制御するECU(電子制御ユニット)の役割は飛躍的に増大しました。この複雑な処理を実現するのは、まさしくソフトウェアの力です。さらに、コネクテッド技術により、ソフトウェアを無線通信でアップデートするOTA(Over-The-Air)が一般化し、納車後も自動車の機能や性能が向上し続けるようになりました。この結果、自動車開発に占めるソフトウェアのコード行数は爆発的に増加し、その価値はハードウェアを凌ぐとさえ言われています。もはや自動車エンジニアにとって、プログラミングやシステムアーキテクチャの設計能力は必須スキルです。AIを活用した画像認識アルゴリズムの開発、膨大な走行データから価値を生み出すデータサイエンス、そして外部ネットワークと接続することによるサイバーセキュリティの脅威への対策など、従来の自動車開発とは全く異なる領域の知識と技術が求められているのです。

EV・自動運転時代に活躍する自動車エンジニアに必須のスキル

自動車業界のパラダイムシフトを象徴する「CASE」。この変革の波に乗り、未来のモビリティ社会を創造する自動車エンジニアには、従来の機械工学の知識に加え、新たな専門スキルが不可欠です。もはや自動車は単なる移動機械ではなく、ソフトウェアによって価値が定義される「走るスマートデバイス」へと進化しています。ここでは、これからの時代に第一線で活躍するために必須となる4つの重要なスキルセットを具体的に解説します。

ソフトウェア開発の専門知識

近年の自動車には100以上のECU(電子制御ユニット)が搭載され、そのソフトウェアのコード行数は1億行を超えると言われています。自動運転やコネクテッド機能の高度化に伴い、ソフトウェアが車両の性能や安全性を直接左右する「ソフトウェア・ファースト」の時代が到来しました。そのため、自動車エンジニアにとってソフトウェア開発能力は、機械設計と同じくらい基本的なスキルとなりつつあります。ハードウェアを制御する組み込み系の知識から、アプリケーション開発、クラウド連携まで、幅広いソフトウェア技術への深い理解が求められます。

プログラミング言語 C++やPython

車載システムの開発現場では、リアルタイム性と処理速度が要求されるため、古くからC言語やC++が主流です。特に、ECUの制御や安全に関わるシステムの開発においてC++のスキルは必須と言えるでしょう。一方で、自動運転に不可欠なAI(人工知能)や機械学習の分野では、豊富なライブラリを持つPythonが広く活用されています。車両から収集した膨大なデータを解析したり、AIモデルを開発したりする場面でPythonの知識が活かされます。これからのエンジニアは、目的応じてこれらの言語を使い分ける能力が重要になります。

モデルベース開発 MATLABやSimulink

自動車のシステムが複雑化する中で、開発の効率と品質を飛躍的に向上させる手法として注目されているのがモデルベース開発(MBD)です。MBDは、数式モデルを用いてシステムの設計やシミュレーションを行い、そのモデルから自動でコードを生成する開発手法です。これにより、開発の初期段階で問題を洗い出し、手戻りを大幅に削減できます。この分野では、MathWorks社のMATLAB/Simulinkが業界の標準ツールとして広く使われており、これらのツールを使いこなすスキルは、制御システムの開発において強力な武器となります。

電気・電子工学の深い知見

EV(電気自動車)化の進展により、自動車の心臓部であったエンジンは、バッテリー、モーター、インバーターといった電動コンポーネントに置き換わりました。これらの部品はすべて電気・電子工学の塊です。航続距離の伸長、充電時間の短縮、そしてパワフルな走行性能を実現するためには、各コンポーネントを最適に制御する高度な電気・電子技術が不可欠です。エネルギー効率を最大化するパワーエレクトロニクスの知識や、高電圧を安全に取り扱うための知見は、EV時代のエンジニアにとって必須の教養と言えるでしょう。

バッテリー・モーター・インバーター制御技術

EVの性能を決定づけるのが、バッテリー、モーター、インバーターの三種の神器です。バッテリーの性能を最大限に引き出すためのBMS(バッテリーマネジメントシステム)の設計、モーターの回転数を精密に制御して滑らかな加減速を実現する技術、そしてバッテリーの直流電力をモーター駆動用の交流電力に高効率で変換するインバーター制御技術など、それぞれのコンポーネントに対する深い理解と、それらを統合して最適化するシステム設計能力が求められます。

半導体や各種センサーに関する知識

自動運転の「目」や「耳」となるのが、カメラ、LiDAR(ライダー)、ミリ波レーダーといった多種多様なセンサーです。これらのセンサーが収集した膨大な情報を瞬時に処理し、車両の制御判断を行うためには、高性能な半導体(SoC: System on a Chip)が欠かせません。どのようなセンサーをどこに配置し、得られた情報をどの半導体でどう処理するかを設計するスキルは、安全な自動運転システムを構築する上で極めて重要です。半導体の特性やセンサーの原理を深く理解しているエンジニアの需要はますます高まっています。

AI・データサイエンスの活用能力

自動運転システムは、AI、特に深層学習(ディープラーニング)技術の塊です。また、コネクテッドカーは走行中、常に様々なデータを生成し、クラウドサーバーと通信しています。これらの膨大なデータを収集・分析し、新たな価値やサービスを生み出すデータサイエンスのスキルは、自動車エンジニアの新たな武器となります。単にプログラムを書くだけでなく、データに基づいて課題を発見し、解決策を導き出す能力が、企業の競争力を左右する時代になっています。

画像認識と機械学習の実装スキル

自動運転の実現には、車両周辺の歩行者、他の車両、信号機、道路標識などを正確に認識する技術が不可欠です。この中核を担うのが、AIによる画像認識技術です。大量の画像データをAIに学習(機械学習)させ、物体の種類や位置を高い精度で特定するモデルを構築・実装するスキルが求められます。TensorFlowやPyTorchといったフレームワークを使いこなし、常に進化し続ける最新のAIアルゴリズムをキャッチアップしていく姿勢が重要です。

走行データの収集とビッグデータ解析

世界中のコネクテッドカーから集められる走行データ(プローブデータ)は、まさに宝の山です。このビッグデータを解析することで、渋滞予測の精度向上、危険箇所の特定による事故防止、ユーザーの運転傾向に基づいた保険サービスの開発、さらには故障予知保全(PdM)など、これまでにない付加価値サービスを創出できます。データを収集・蓄積する基盤技術から、統計学やデータ分析手法を駆使して有益な知見を引き出す能力まで、一気通貫で対応できるエンジニアが求められています。

サイバーセキュリティ対策の知識

自動車がインターネットに常時接続される「コネクテッドカー」の普及は、利便性を飛躍的に向上させる一方で、サイバー攻撃という新たなリスクを生み出しました。悪意のある第三者による遠隔操作や個人情報の窃取といった脅威から車両を守るため、サイバーセキュリティは今や人命に関わる最重要課題です。開発の初期段階からセキュリティを考慮する「セキュリティ・バイ・デザイン」の考え方が不可欠であり、全ての自動車エンジニアがセキュリティに関する基礎知識を持つことが求められます。特に、車両のネットワーク設計やソフトウェア開発においては、専門的なセキュリティ技術が必須となります。

これからの自動車エンジニアになるには キャリアパスと学習方法

自動車業界が100年に一度の大変革期を迎える中、自動車エンジニアになるための道のりは多様化しています。従来の機械工学や電気工学の知識だけでなく、ソフトウェアやAIといった新しい分野のスキルが強く求められるようになりました。ここでは、新卒、異業種からの転職者、そして現役エンジニアという3つの視点から、これからの時代に求められる自動車エンジニアになるための具体的なキャリアパスと学習方法を解説します。

新卒で自動車エンジニアを目指す場合におすすめの大学と学部

新卒で自動車エンジニアを目指す場合、大学での専門教育がキャリアの基盤となります。従来通り、機械工学系や電気電子工学系の学部は、車体設計、パワートレイン開発、電子制御システムの設計など、自動車開発の根幹を担う領域で依然として高い需要があります。しかし、近年の技術革新に伴い、情報工学、ソフトウェア工学、AI関連の学部・学科の重要性が飛躍的に高まっています。自動運転システムやコネクテッドサービスの開発には、高度なプログラミングスキルやデータ解析能力が不可欠だからです。東京大学、京都大学、東京工業大学といったトップクラスの国公立大学や、早稲田大学、慶應義塾大学などの有力私立大学の工学部では、自動車メーカーとの共同研究も盛んに行われています。学生時代には、講義で基礎を固めるだけでなく、学生フォーミュラへの参加やプログラミングコンテストへの挑戦、メーカーでのインターンシップなどを通じて、チームでの開発経験や実践的な問題解決能力を養うことが、就職活動で大きな強みとなります

異業種から転職する自動車エンジニアの可能性と需要

CASE革命は、異業種で活躍してきたエンジニアにとって大きなチャンスをもたらしています。特に、IT業界や電機メーカーで培った専門スキルは、新しい自動車開発の現場で即戦力として高く評価されます。例えば、WebサービスやSaaS開発の経験を持つソフトウェアエンジニアは、コネクテッドカーのサービス開発や車載インフォテインメント(IVI)システムの構築で活躍できます。また、半導体メーカーやセンサーメーカー出身の電気・電子エンジニアは、EVのバッテリーマネジメントシステム(BMS)や自動運転に不可欠なセンサーフュージョン技術の開発でその知見を活かせます。転職を成功させるためには、自身の専門スキルが自動車業界のどの分野で貢献できるかを明確にすることが重要です。同時に、自動車業界特有の機能安全規格(ISO 26262)や、高い品質要求、複雑なサプライチェーンに関する知識を学ぶ意欲も求められます。未経験から挑戦する場合は、まず特定の技術領域に強みを持つ部品メーカー(サプライヤー)や開発会社を目指すのも有効なキャリア戦略です。

現役エンジニアが学ぶべきリスキリング戦略

現在、自動車業界で活躍しているエンジニアにとっても、スキルのアップデート、すなわち「リスキリング」はキャリアを継続・発展させる上で不可欠です。エンジン開発に携わってきた機械系エンジニアが、モーターやバッテリーの知識を学ぶ、あるいは車体設計のエンジニアがシミュレーション技術やデータ解析のスキルを身につけるといった動きが活発化しています。具体的には、プログラミング言語(C++、Python)やモデルベース開発ツール(MATLAB/Simulink)の習得は、多くの領域で応用が利くため優先度が高いと言えます。また、AIや機械学習の基礎を学び、画像認識やデータ分析のプロジェクトに参加することもキャリアの幅を広げます。学習方法としては、企業が提供する研修プログラムを最大限に活用するほか、UdemyやCourseraといったオンライン学習プラットフォームで専門講座を受講したり、社会人大学院で体系的に学び直したりする選択肢もあります。グローバルな開発競争が激化する中、海外の最新論文や技術動向を把握するための英語力(TOEICなど)も重要なスキルです。

自動車エンジニアの将来性と仕事のやりがい

100年に一度の大変革期を迎えている自動車業界。その中心で未来のモビリティを創造する自動車エンジニアは、かつてないほど重要性が高まっています。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の波は、エンジニアの仕事内容を大きく変えると同時に、無限の可能性と大きなやりがいをもたらしています。ここでは、自動車エンジニアという仕事の将来性と、この仕事ならではの魅力について深く掘り下げていきます。

将来性:モビリティ革命の中心で高まり続ける市場価値

自動車が単なる移動手段から「社会インフラ」へと進化する中で、自動車エンジニアの活躍領域は拡大の一途をたどっています。特にソフトウェアや電子技術の専門性は、今後のキャリアにおいて極めて強力な武器となるでしょう。

CASE革命がもたらす需要の拡大

EV(電気自動車)化や自動運転技術の高度化に伴い、自動車開発におけるエンジニアの役割は劇的に変化しました。従来のエンジンやトランスミッションに代わり、バッテリー、モーター、インバーターといった電動化技術、そして車両全体を制御するソフトウェアの開発が主戦場となっています。これにより、機械系のエンジニアだけでなく、ソフトウェア、AI、電気・電子、通信、サイバーセキュリティといった多様な分野の専門家の需要が爆発的に増加しています。自動車産業は「モビリティ産業」へと進化を遂げ、その変革をリードするエンジニアの市場価値は今後も高まり続けることが確実視されています。

キャリアパスの多様化と高待遇への期待

自動車業界の変革は、完成車メーカー(トヨタ、日産、ホンダなど)だけでなく、デンソーやボッシュといったメガサプライヤー、さらにはソニー・ホンダモビリティのような異業種からの新規参入組の存在感を増大させています。これにより、エンジニアの活躍の場は大きく広がり、自身の専門性を軸に業界や企業を横断するキャリアパスを描くことが可能になりました。特に、AIや高度なソフトウェア開発スキルを持つエンジニアは引く手あまたであり、高い専門性を持つ人材は、年齢や経験年数に関わらず、好待遇で迎え入れられるケースが増えています。

仕事のやりがい:最先端技術で社会の未来を創造する

自動車エンジニアの仕事は、単に「クルマを造る」だけではありません。人々の生活を豊かにし、社会が抱える課題を解決へと導く、大きな使命感と達成感を得られる仕事です。

社会課題の解決に貢献する達成感

自動車エンジニアが開発する技術は、社会に直接的なインパクトを与えます。例えば、高度な運転支援システムや自動運転技術は、交通事故の削減に大きく貢献します。また、EVやFCV(燃料電池自動車)の開発は、カーボンニュートラルを実現し、地球環境問題の解決に繋がる重要な取り組みです。自分の知識やスキルが、人々の安全を守り、持続可能な社会の実現に貢献しているという実感は、他の仕事では得難い大きなやりがいとなるでしょう。

グローバルな舞台で世界中の人々の生活を豊かにする

自動車は世界中で使われるグローバルな製品です。そのため、自動車エンジニアの仕事は、必然的に世界が舞台となります。世界各国のエンジニアと協力してプロジェクトを進めたり、異なる文化や市場のニーズに応える製品を開発したりする機会が豊富にあります。自分が開発に携わった自動車が、世界中の道を走り、人々の暮らしを支えている光景を想像してみてください。国境を越えて人々の生活に影響を与えるスケールの大きなものづくりに携われること、それが自動車エンジニアという仕事の醍醐味の一つです。

まとめ

自動車エンジニアの仕事は、CASEという100年に一度の大変革によって、その役割を大きく変えようとしています。これまでのエンジンや車体といった機械工学中心の開発から、EV化や自動運転技術の進化に伴い、自動車が「走るスマートフォン」ともいえる高度な電子デバイスへと進化していることがその理由です。この変化は、エンジニアに新たな挑戦と成長の機会をもたらしています。

これからの自動車開発の最前線で活躍するためには、C++やPythonなどのソフトウェア開発スキル、AI・データサイエンス、バッテリーやモーターを制御する電気・電子工学の知見が不可欠です。これらの専門性は、新卒学生だけでなく、異業種からの転職や現役エンジニアのリスキリングによっても十分に獲得可能であり、多様な人材に活躍の道が開かれています。

技術の変化は激しく、常に学び続ける姿勢が求められますが、それは自らの手で未来のモビリティ社会を創造するという、計り知れないやりがいにつながります。この変革期をチャンスと捉え、新しいスキルを武器にすることで、次世代の自動車開発をリードする主役となれるでしょう。