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二酸化炭素を出さない車が注目される理由|環境負荷を減らす最新技術まとめ

なぜ今、二酸化炭素を出さない車が注目されているのでしょうか。その背景には、地球温暖化対策としてのカーボンニュートラル実現に向けた、世界的な環境規制の強化があります。この記事では、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)など、CO2を排出しない車の種類と仕組み、それぞれのメリット・デメリットを徹底比較。日産やトヨタの代表的な車種から、購入時に利用できる補助金制度まで、次世代の車選びに欠かせない情報を網羅的に解説します。

なぜ今二酸化炭素を出さない車が求められるのか

近年、世界中で「二酸化炭素を出さない車」への関心が急速に高まっています。テレビやインターネットで電気自動車(EV)のニュースを目にする機会も増え、私たちの生活にとって身近な存在になりつつあります。では、なぜ今、これほどまでに走行時に二酸化炭素(CO2)を排出しない車が求められているのでしょうか。その背景には、地球環境の未来を左右する深刻な問題と、それに対する世界的な取り組みがあります。この章では、その理由を3つの視点から詳しく解説します。

地球温暖化対策とカーボンニュートラルへの挑戦

地球温暖化は、もはや遠い未来の話ではなく、私たちの暮らしに直接影響を及ぼす喫緊の課題です。夏の猛暑や集中豪雨の頻発など、世界各地で観測される異常気象の主な原因は、大気中の温室効果ガス、特に二酸化炭素の増加にあるとされています。運輸部門からのCO2排出量は全体の約2割を占め、その中でも自動車が大きな割合を占めています。この状況を打開するため、世界各国が目指しているのが「カーボンニュートラル」です。これは、二酸化炭素の排出量と吸収量を均衡させ、実質的な排出量をゼロにするという壮大な目標です。日本政府も2050年までのカーボンニュートラル実現を宣言しており、その達成には自動車分野の脱炭素化が不可欠です。二酸化炭素を出さない車は、この国家的な挑戦を成功させるための鍵を握る存在なのです。

世界で強化される環境規制と企業の取り組み

地球温暖化対策は、もはや努力目標ではなく、国際的なルールになりつつあります。その象徴が、気候変動問題に関する国際的な枠組みである「パリ協定」です。この協定に基づき、世界各国はCO2排出量削減に向けて具体的な目標を掲げ、法規制の強化を進めています。特に欧州連合(EU)では、自動車メーカーに厳しいCO2排出基準を課しており、基準を達成できなければ多額の罰金が科されます。さらに、イギリスやフランス、アメリカのカリフォルニア州などでは、将来的にガソリン車やディーゼル車といった内燃機関車の新車販売を禁止する方針を打ち出しています。こうした世界の潮流に対応できなければ、自動車メーカーは市場で生き残れません。そのため、各メーカーは存続をかけて電動化戦略を加速させ、二酸化炭素を出さない車の開発と販売に巨額の投資を行っているのです。

持続可能な社会SDGsへの貢献

2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、環境、社会、経済の3つの側面から、より良い世界を目指すための17の国際目標です。二酸化炭素を出さない車を選ぶことは、このSDGsの達成に直接貢献するアクションと言えます。例えば、クリーンなエネルギー利用を促進する目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」や、大気汚染を改善し住みやすい都市を目指す目標11「住み続けられるまちづくりを」、そして気候変動への対策を掲げる目標13「気候変動に具体的な対策を」など、多くの目標に関連しています。私たち消費者が車を選ぶという日常的な行動が、地球全体の持続可能性を高めることにつながるのです。また、近年では環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を重視するESG投資が世界の金融市場で主流となっており、環境に配慮しない企業は投資家からも選ばれにくくなっています。社会全体が持続可能性を重視する中で、二酸化炭素を出さない車は時代の要請そのものなのです。

二酸化炭素を出さない車の主な種類と仕組みを解説

走行中に二酸化炭素(CO2)を排出しない「ゼロエミッション・ビークル(ZEV)」は、環境負荷を低減する次世代自動車の総称です。しかし、一口に「CO2を出さない車」と言っても、その動力源や仕組みは一つではありません。ここでは、現在注目されている代表的な4つの種類を取り上げ、それぞれの技術的な特徴やエネルギー供給の方法について分かりやすく解説します。

電気自動車(EV) バッテリーの電気でモーターを動かす

電気自動車(Electric Vehicle、EV)は、大容量のバッテリーに蓄えた電気をエネルギー源として走行する車です。その仕組みは非常にシンプルで、バッテリーからの電力をインバーターで制御し、モーターを回転させてタイヤを駆動させます。ガソリンエンジンを搭載せず、走行中に二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)などの排出ガスを一切出さない点が最大の特徴です。エネルギーの補給は、自宅のコンセントや商業施設、高速道路のサービスエリアなどに設置された充電スタンドから行います。エンジンがないため構造がシンプルで、静粛性が高く、モーターならではの力強い加速も魅力の一つです。

燃料電池自動車(FCV) 水素と酸素で発電し走行する

燃料電池自動車(Fuel Cell Vehicle、FCV)は、「走る発電所」とも呼ばれるクリーンな車です。車載の高圧タンクに充填された水素と、空気中から取り込んだ酸素を「燃料電池スタック」と呼ばれる装置内で化学反応させることで発電します。この電気を使ってモーターを駆動し走行するのが基本的な仕組みです。走行時に排出するのは水(H2O)だけであり、CO2や大気汚染物質を全く出さないため、「究極のエコカー」として期待されています。エネルギーの充填は専門の水素ステーションで行い、ガソリン車の給油とほぼ同じ数分程度で完了します。

水素エンジン車 水素を燃やして動く未来のエンジン

水素エンジン車は、ガソリンの代わりに水素をエンジン内部で直接燃焼させ、そのエネルギーでピストンを動かして走行する車です。従来のガソリンエンジンと多くの部品や技術を共有できるため、自動車メーカーが長年培ってきた内燃機関の技術を活かせることが大きな利点です。燃料が水素のため燃焼時にCO2は発生しませんが、エンジンオイルの燃焼などによりごく微量のCO2や、高温燃焼により窒素酸化物(NOx)が発生する可能性があります。現在、主にレースなどの過酷な環境下で技術開発が進められており、実用化に向けた挑戦が続いています。

合成燃料(e-fuel)車 カーボンリサイクル技術の応用

合成燃料(e-fuel)車は、車自体は従来のガソリン車と変わりませんが、使用する燃料が異なります。合成燃料とは、再生可能エネルギーから作った水素(H2)と、工場などから排出・回収した二酸化炭素(CO2)を合成して製造される人工的な石油です。燃焼させるとCO2は排出されますが、製造過程で大気中のCO2を利用するため、全体として大気中のCO2を増やさない「カーボンニュートラル」な燃料と見なされています。既存のガソリンスタンドなどのインフラをそのまま活用できるため、急進的なインフラ整備を必要としない現実的な選択肢として注目を集めています。

【種類別】二酸化炭素を出さない車のメリットとデメリット

走行中に二酸化炭素を排出しないエコカーは、大きく分けて電気自動車(EV)と燃料電池自動車(FCV)が主流です。それぞれに動力源や仕組みが異なるため、メリットとデメリットも大きく変わります。ご自身のライフスタイルや車の使い方をイメージしながら、どちらがより適しているか比較検討することが、満足のいく車選びの第一歩となるでしょう。

電気自動車(EV)の長所と短所

電気自動車(EV)は、バッテリーに蓄えた電気でモーターを駆動させて走行する車です。ガソリンエンジンを搭載せず、走行中に排気ガスを一切出さないため、環境性能の高さから次世代自動車の本命として注目されています。日産のリーフやサクラ、テスラの各モデルなど、国内外のメーカーから多様な車種が販売されており、選択肢が豊富なのも特徴です。ここでは、EVならではの長所と、購入前に理解しておくべき短所を詳しく見ていきましょう。

メリット 静粛性とパワフルな加速力

EVの最大の魅力は、エンジンがないことによる圧倒的な静粛性です。走行中のノイズや振動が極めて少なく、車内での会話や音楽をクリアに楽しめます。また、モーターはアクセルを踏んだ瞬間から最大トルクを発生させる特性を持つため、信号待ちからの発進や高速道路での合流などで、ガソリン車とは比較にならないほどスムーズで力強い加速を体感できます。さらに、ガソリン代に比べて電気代の方が安価な傾向にあり、自宅で充電できるため燃料スタンドに行く手間が省けるなど、維持コストや利便性の面でも大きなメリットがあります。

デメリット 充電時間と航続距離への懸念

一方で、EVにはエネルギー補給に関する課題があります。ガソリン車の給油が数分で終わるのに対し、EVの充電には時間がかかります。自宅での普通充電では満充電までに数時間、外出先の急速充電器を利用しても30分以上かかることが一般的です。また、一回の充電で走行できる航続距離は年々向上していますが、まだガソリン車に及ばないモデルも少なくありません。特に、エアコンの使用が増える夏場や冬場はバッテリーの消費が激しくなり、想定よりも航続距離が短くなる点には注意が必要です。集合住宅にお住まいで自宅に充電設備を設置できない場合、充電場所の確保が課題となるケースもあります。

燃料電池自動車(FCV)の長所と短所

燃料電池自動車(FCV)は、タンクに充填した水素と空気中の酸素を化学反応させて発電し、その電気でモーターを動かして走行します。走行中に排出するのは水(H2O)のみであることから、「究極のエコカー」とも呼ばれています。EVが抱える課題のいくつかを解決できる可能性を秘めていますが、普及にはまだ高いハードルが存在するのも事実です。トヨタのMIRAIなどが代表的なモデルとして知られています。

メリット 短いエネルギー充填時間と長い航続距離

FCVの大きな利点は、エネルギーの充填時間がガソリン車とほぼ同じ約3〜5分と非常に短いことです。EVのように長時間の充電を待つ必要がないため、これまでのガソリン車と同じ感覚で利用できます。さらに、一度の水素充填で走行できる距離が長いことも特長です。現行モデルのトヨタMIRAIは850km程度の航続距離を誇り、長距離ドライブでも安心して出かけることができます。災害時には大容量の「走る発電機」として活用できるなど、エネルギー供給源としての側面も注目されています。

デメリット 水素ステーションの整備状況と車両価格

FCV普及における最大の課題は、インフラ整備の遅れです。水素を充填するための水素ステーションは、四大都市圏を中心に整備が進められていますが、その数はまだ全国的に少なく、どこでも気軽に充填できる状況ではありません。旅行や出張の際には、事前にルート上の水素ステーションの場所や営業時間を調べておく必要があります。また、高度な技術を要するため車両本体価格がEVよりも高額になる傾向があり、車種の選択肢も限られているのが現状です。国や自治体の手厚い補助金制度を活用しても、購入のハードルは依然として高いと言えるでしょう。

日本国内で選べる代表的な二酸化炭素を出さない車

カーボンニュートラル社会の実現に向け、日本の自動車メーカー各社も個性豊かな「二酸化炭素を出さない車」を次々と市場に投入しています。ここでは、国内で購入可能な代表的な車種をメーカーごとの戦略とともにご紹介します。それぞれの特徴を理解し、あなたのライフスタイルに最適な一台を見つける参考にしてください。

日産 アリアやサクラなどEVのパイオニア

日産は、世界に先駆けて量産型電気自動車(EV)「リーフ」を発売したパイオニアとして知られ、その豊富な経験と技術を活かした多彩なEVラインナップを展開しています。その代表格が、クロスオーバーEVの「アリア」です。力強く滑らかな加速性能と、静粛性の高い上質な室内空間を両立。最新の運転支援技術「プロパイロット2.0」を搭載し、ハンズオフ走行も可能にするなど、未来のドライブ体験を提供します。また、日本の交通事情に革命をもたらしたのが軽EVの「サクラ」です。軽自動車ならではの取り回しの良さと、EVの静かで力強い走りを融合させ、補助金を活用することでお求めやすい価格を実現。日常の足としてEVを身近な存在にした画期的なモデルとして、高い評価を得ています。

トヨタ MIRAIやbZ4Xなど全方位での展開

トヨタは、EVだけでなく燃料電池自動車(FCV)やハイブリッド車(HV)など、多様な選択肢で環境問題に取り組む「マルチパスウェイ」戦略を掲げています。その象徴的な存在が、FCVの「MIRAI」です。水素をエネルギー源とし、走行時に排出するのは水だけという究極のクリーン性能を誇ります。約3分という短い水素充填時間で長い航続距離を実現し、ガソリン車と遜色ない利便性を持つのが大きな魅力です。一方、グローバルで展開するEVシリーズの第一弾が「bZ4X」です。SUVとしての優れた実用性と、スバルと共同開発したAWDシステムによる高い走破性を兼ね備えています。サブスクリプションサービス「KINTO」でも提供されるなど、新しい車の所有スタイルを提案している点も特徴です。このように、トヨタは顧客のニーズやインフラの状況に合わせて最適な選択肢を提供できる体制を整えています。

ホンダ Honda eに見る独自の電動化戦略

ホンダは、ユニークなコンセプトとデザイン性で電動化時代に新たな価値を提案しています。その代表が、コンパクトEVの「Honda e」です。未来感と親しみやすさを両立したレトロモダンなデザインが目を引きますが、その本質は都市部での移動に最適化されたシティコミューターとしての機能性です。航続距離はあえて街乗りに絞り、その分、最小回転半径を小さくするなど、抜群の取り回しの良さを実現しました。インストルメントパネルに広がる大型ディスプレイは、これまでにない先進的なインターフェースを提供します。また、商用軽EVの「N-VAN e:」の投入も予定されており、日々の暮らしやビジネスを支える実用的なEVの分野でも存在感を高めています。ホンダは、単なる移動手段ではない、乗る人の生活を豊かにするEV開発を目指しています。

購入前に知っておきたい補助金と税金の優遇制度

二酸化炭素を出さない車、特に電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)は、環境性能に優れる一方で、同クラスのガソリン車に比べて車両本体価格が高価になる傾向があります。しかし、その初期費用を大幅に軽減するために、国や地方自治体が手厚い補助金制度や税金の優遇措置を設けています。これらの制度を賢く活用することで、購入のハードルは大きく下がります。ここでは、購入前に必ず知っておきたいお金のサポートについて、具体的な制度内容を詳しく解説します。

国が実施するCEV補助金の概要

国が主体となって実施している代表的な制度が「CEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)」です。これは経済産業省の事業の一環で、EV、プラグインハイブリッド車(PHEV)、FCVといった環境性能の高い車両の購入者を対象に、補助金を交付するものです。補助金の額は、車両の種類や性能、搭載されているバッテリー容量、外部への給電機能の有無などによって細かく定められています。例えば、一般的なEVであれば最大で85万円、FCVの場合はさらに高額な補助が設定されています。この補助金は年度ごとに予算が組まれており、申請額が予算の上限に達した時点で受付が終了してしまうため、購入を検討する際は早めに情報を確認することが重要です。通常、申請手続きは購入する販売ディーラーが代行してくれるため、購入者は煩雑な手続きをすることなく制度を利用できます。

地方自治体による上乗せ補助金

国のCEV補助金に加えて、多くの都道府県や市区町村が独自の補助金制度を設けています。これは、国の補助金に「上乗せ」して受け取れる場合が多く、組み合わせることで購入者の負担をさらに軽減できます。補助の内容は自治体によって様々で、例えば東京都では独自の「ZEV(ゼロエミッション・ビークル)導入促進補助金」により、国の補助金と合わせると非常に手厚い支援が受けられます。補助金の対象条件や金額は、お住まいの自治体によって大きく異なるため、必ず事前に確認が必要です。また、再生可能エネルギー由来の電力で充電することを条件に補助額を増額する自治体もあり、環境への貢献度に応じて支援内容が変わるケースも見られます。購入を検討している車両が決まったら、まずはご自身の住民票がある自治体のウェブサイトで補助金制度の有無を確認しましょう。

エコカー減税やグリーン化特例について

補助金だけでなく、税制面での優遇措置も大きなメリットです。代表的なものに「エコカー減税」「グリーン化特例」「環境性能割」があります。まず「エコカー減税」は、自動車の購入時と車検時に支払う自動車重量税が減免される制度です。二酸化炭素を一切排出しないEVやFCVは最高の基準を満たすため、新規登録時と初回の継続車検時の合計2回分の自動車重量税が全額免除されます。次に「グリーン化特例」は、毎年支払う自動車税(種別割)に関する優遇措置です。EVやFCVを新車で購入した場合、購入した翌年度の自動車税がおおむね75%も軽減されます。さらに、自動車の購入時にかかる「環境性能割」は、燃費性能に応じて税率が決まりますが、EVやFCVは非課税となり、支払う必要がありません。これらの税優遇は、購入時の初期費用だけでなく、所有期間中の維持費削減にも直接つながります。

二酸化炭素を出さない車の未来と解決すべき課題

二酸化炭素を出さない車は、カーボンニュートラル社会の実現に向けた切り札として期待されています。しかし、その完全な普及には、技術革新から社会インフラの整備、そして環境負荷に対するより本質的な視点まで、乗り越えるべきいくつかの課題が存在します。ここでは、これらの車が描く未来像と、私たちが向き合うべき重要な課題について詳しく解説します。

バッテリー技術の進化と全固体電池への期待

電気自動車(EV)の性能を飛躍的に向上させる鍵として、バッテリー技術の革新が挙げられます。現在主流のリチウムイオン電池は性能向上を続けていますが、航続距離の延長や充電時間の短縮、そして安全性の確保にはまだ改善の余地があります。そこで次世代の技術として大きな期待が寄せられているのが「全固体電池」です。電解質を液体から固体に変えることで、発火のリスクを大幅に低減し安全性を高めます。さらに、エネルギー密度が向上するため、一度の充電で走行できる距離が格段に伸び、充電時間も大幅に短縮できるとされています。トヨタ自動車をはじめとする日本のメーカーが世界に先駆けて開発を進めており、実用化されればEVの利便性は飛躍的に向上し、普及がさらに加速することが見込まれます。

充電インフラと水素ステーションの普及

どれだけ優れた性能を持つ車でも、エネルギーを補給するインフラが整っていなければ普及は進みません。EVにおいては、充電器の数は着実に増加していますが、特に地方や集合住宅での設置、長距離移動の要となる高速道路での急速充電器の不足といった「充電インフラの壁」が依然として課題です。一方で燃料電池自動車(FCV)は、水素ステーションの絶対数が少なく、利用できるエリアが都市部に限られているのが最大の障壁となっています。これらの課題を解決するためには、国や自治体、民間企業が連携し、より計画的で利用しやすいインフラ網を構築していく必要があります。誰もが安心して二酸化炭素を出さない車を選べる社会の実現には、エネルギー供給網の整備が不可欠です。

製造から廃棄までのCO2排出量(LCA)の重要性

「走行中に二酸化炭素を出さない」という点だけでなく、車のライフサイクル全体での環境負荷を考える視点がますます重要になっています。そこで注目されるのが、LCA(ライフサイクルアセスメント)という考え方です。これは、原材料の調達から製造、使用、そして廃棄・リサイクルに至るまでの全工程で、どれだけのCO2が排出されるかを評価するものです。例えば、EVのバッテリーを製造する際には多くの電力を消費します。その電力が化石燃料由来であれば、製造段階で多くのCO2を排出することになります。真のカーボンニュートラルを達成するためには、工場の使用電力を再生可能エネルギーに切り替えることや、使用済みバッテリーを効率的にリサイクル・リユースする技術の確立が急務です。車の一生を通じた環境貢献こそが、未来の車に求められる本質的な価値と言えるでしょう。

まとめ

地球温暖化対策が世界的な課題となる中、二酸化炭素を出さない車は、私たちが目指すカーボンニュートラル社会を実現するための重要な鍵となっています。環境規制の強化やSDGsへの貢献という観点からも、その存在感は日々増しています。

この記事で解説したように、静粛性と力強い加速が魅力の電気自動車(EV)や、短い時間でエネルギーを充填できる燃料電池自動車(FCV)など、技術は多様化しています。日産のアリアやトヨタのMIRAIといった具体的な選択肢も増え、ライフスタイルに合わせて次世代の車を選べる環境が整いつつあります。

充電インフラの整備やバッテリー技術の進化など、解決すべき課題はまだ残されていますが、全固体電池のような革新的な技術開発も進んでいます。国や自治体の補助金制度を賢く活用し、地球の未来に貢献する一台を選んでみてはいかがでしょうか。あなたの一歩が、クリーンな社会への大きな推進力となります。