クルマもどんどん進化して、電気自動車もすっかり普通になってきました。
ガソリン車にも、自動運転の時代です。
自動車整備士の仕事の対象となる、クルマの種類やその環境も大きく変わってくる昨今、車業界の今後を知っておくことは大変重要です。
仕事として取り組む以上、「クルマが好きだから目指す」という単純な意欲だけでは済まないことも多いものです。
自動車整備の業界だけでなく、自動車業界全体は今後どう変わっていくでしょうか。確かめましょう。
未来を探る前に、まず現状認識です。
業界についてさまざまな情報を見聞きしていると思います。
実際のところ自動車整備は今後どうでしょうか。先細りの要素が見えるでしょうか。
よい評判、悪い評判それぞれを検証します。
悪い評判のほうが目に付きやすいものです。
こちらを先に見ておきましょう。
・慢性的人手不足で、整備士ひとりに掛かる仕事の負担が多い
・給料が全般的に安く、なかなか昇給しない
・夏暑く冬寒い職場
・古い人がやたらと幅を利かすなど、人間関係に問題のある職場が多い
・力仕事が多く腰を痛めやすい
・手が汚れやすく、オイルが爪の間に沁みこむ
・工具が自己負担になることも多い
こうした職場も依然多くあるのは事実です。
街の整備工場の場合、環境が合わなければ転職しやすいメリットがありますが、これは人材の定着率が低いことの裏返しでもあります。
ただし職場環境については千差万別で、一部を見て全体がそうだということはありません。
街の整備工場でなく、カーディーラー勤務の整備士の場合、だいぶ環境はよくなります(後述)。
ただしディーラー整備士の場合であっても、次の悩みはしばしば見られます。
・労働時間が長い(時間外労働や休日労働が多い)
・顧客の都合による急ぎの納期対応が多い
・異動による、営業職への転換がある
特にカーディーラーの整備工場で働く整備士が中心となりますが、すべてではないものの、環境がよくなっているところもあります。
そうしたいい評判を見てみます。
・世間水準と比較し、整備士の給料が悪いとはいえない
・冷暖房完備
・機械化の推進による力仕事の減少(これにより女性の整備士も働きやすくなる)
・働き方改革の波(労働時間の減少)
・整備士の経験を活かした営業、フロントマンの仕事ができる
カーディーラーの整備工場の多くは、かつての3K職場から確実に働きやすく変わってきています。
女性が働きやすくなると、仕事場も体育会系の風土から着実に柔らかくなっていきます。
そして働き方改革の波は、整備業界にもゆっくりとやってきています。顧客第一ではなく、従業員の生活を大事にする環境に、転換してきています。
「少なくともうちの職場ではそんなことはない。サービス残業も多い」という感想を持つディーラー整備士ももちろんいるでしょう。それでも傾向としては、間違いなく変わってきています。
ただ、働き方改革は、「時間外労働の減少」にもつながるので、これによって収入の減る可能性もあることは知っておいたほうがいいでしょう。
世間と同様、認められる副業が盛んになっていくかもしれません。
それからディーラー整備士の場合、異動により職種が整備士でなくなる可能性があります。メリットであり、同時にデメリットと感じる人もいるはずです。
ただこれも前向きに捉えたほうがいいでしょう。営業担当者がクルマをよく知っていることは極めて重要なことですし、職場から期待もされているからです。
おおむね収入もアップします。
「人と接するのが苦手なので、ずっと整備士でいたい」と思う人もいるでしょうが、そもそも整備士だから人と接しなくていいなどということはありません。クルマに対する専門家ですから、きちんと説明する必要があるのです。
誰でも最初は、どんな仕事でも初心者なのですから、ディーラー上がりの営業やフロントマンとして頑張れば必ずいいことがあります。
まだまだよくない状況もあるものの、整備業界も確実によくなってきています。
それでは、さらに今後の見通しはどうでしょうか。その将来性を見ていきましょう。
自動車整備は、高速で走るクルマの安全を守り、市民の命を守る重要な仕事です。
その整備業界は、慢性的な人手不足にあります。
整備士が足りないということは、国家の安全政策の根幹にかかわるわけです。
このため、国(所轄官庁は国土交通省)としては、整備士の増員、そしてそのための待遇改善を真剣に考えています。女性整備士を増やす取り組みもここに含まれます。
具体的に業界の底上げがなされるまでは時間も掛かりそうですが、国が本気なのは事実なので、期待しましょう。
諸外国とはやや傾向が異なり、エコカーがハイブリッド車主体であった日本でも、このところ電気自動車が増えてきました。
ハイブリッド車であれば電気系統は多くても、従来の自動車整備の延長線上の存在です。
しかし電気自動車はまったく別物です。
ガソリンエンジンに変わり、モーターで走るクルマが増えると、整備業界にもこのような影響が生じるはずです。
・自動車整備士に既存のエンジンと異なる新たな知識が求められる
・オイルを使うことが大幅に減り、汚れ仕事が減る
・電気自動車に対応できない小規模整備工場が整理される
・ガソリンスタンドの廃業による、整備士の職場減少の可能性
現在のところ電気自動車の整備のため必要な、特別な資格は存在しません。ですが今後は設けられる可能性もあります。
ひとつ言えることは、従来の整備の知識も不可欠ながら、まったく新たな整備技術が求められていきます。
整備業界の地位は上がるでしょうが、いっぽうで常に最先端の知識を身につけなければならず、新たな負担となることも間違いありません。
対応を先延ばしにしていると、気づいた時には仕事がなくなっているでしょう。常に努力を続ける必要があります。
電気自動車でなくても、自動走行設備、自動ブレーキなど、従来の自動車にはない走行システムが増えてきました。
当然、こちらの設備が正しく機能するかどうかを確認する人が必要になっています。整備士も、これまで以上に高度な業務を求められるようになります。
特殊整備士資格の中に「自動車電気装置整備士」というものがあります。電気設備についてはすでに専門分野になっているのですが、今後さらに特殊整備資格が増えていくかもしれません。
資格ができるかどうかは別にして、整備士の担当業務や専門分野が増えて大変な時代になりますが、それでもこれはチャンスと考えたいものです。
整備士の地位は必ず向上するでしょう。
クルマがエンジンからモーターに変わっていく時代ですが、自動車整備の仕事自体は今後も残り続けますし、重要なものであり続けます。
電気自動車が主となった時代になって追いつこうとしても間に合いません。 整備士を目指すなら、常に最新の知識と取り入れていく覚悟を持ってください。