自動車整備士を目指し、自動車大学校など専門学校に通う人は数多くいます。
自動車が好きでメカニックが好きという人にとっては、将来の楽しみがいっぱいかもしれません。
ですが、夢に水を指す意見も世間には多く見られます。
この記事は、「自動車整備士にならないほうがいい」という声を真っ向から否定するものではありません。実際の意見を知っておくのも、大事なことでしょう。
自動車整備士を勧めないそういった意見を十分に理解した上で、なおそれらの見解に取り上げられていない情報をお伝えします。
専門学校通学中の生徒さんや、志望者からすると、自動車整備士を否定するように映る情報は耳障りかもしれません。
ですが、情報を載せている人の多くは実際に整備士を経験してきた人です。
先輩の意見も参考にしておいて、損はしないでしょう。
整備士をめぐる厳しい意見を見ていきましょう。
給料の高い安いは、一言で言い表せるものではありません。
ただ整備士の場合、「仕事の価値」と比較したとき、安いと感じてしまいがちかもしれません。
国家資格を持つ専門家なのにこの給与なのかと感じると、転業したくなる人もいるでしょう。
仕事のキツさにも種類がありますが、「肉体の負担が大きい」というのは切実です。
夏も冬も、ほぼ屋外で仕事をする環境の整備工場も多くあり、そして古い職場では機械化も進んでおらず、力仕事も多くなります。
これに、労働時間の長さも加わります。
労働時間が長い職場は、街の整備工場よりも、専門学校出身者の多くが進むカーディーラーにしばしば見られます。いっぽうディーラー整備士のほうが、暑さ寒さについては設備がいいため恵まれてはいます。
労働時間(残業)が多くなると、「給料が安い」が解消する傾向にはあるのは皮肉です。なかなか両立はしないものです。
これも、土日祝日こそ書き入れ時となるカーディーラーの特徴です。
客商売である以上、土日に働くのは当然ですが、ライフスタイルに合わない人もいるわけです。
街の整備工場においては、サービスの性質上、大多数の勤務者が自動車整備士です。
こうした職場には、中高年層の現役整備士が多くいます。
整備士の先輩として頼れる存在でもありますが、いっぽう、体育会系の風土で育ってきた世代でもあります。
こうした職場では、「仕事をきちんと教えない」「嫌がらせをされる」などがまかり通っていることもあります。
そうした先輩を見ていると、自分の将来にも絶望することになります。
若手からそう捉えられる人たちは、「見て覚えるのが仕事」と思っているかもしれません。ただ現代では、どこでも通用しない発想です。
こうした人間関係に悩んで退職または転職する人も多くいるのは事実です。
カーディーラー勤務の場合、現場を上がって営業やフロントマンになる人が多いので、職場の閉塞感がひどいということは少ないでしょう。
ただ、「ディーラーから整備工場には転職できない」と考えると、進路が狭まる大きな理由にはなります。
自動車整備士業界の不満を並べてみました。
いずれの不満も、決して根拠がないものではありませんが、解消できる不満は先に解決しておきましょう。
特に、カーディーラーでのありがちな誤解を解いておきます。
・ディーラー整備士の給料は安いとまではいえない
・ディーラーでは、いつまでも整備士(肉体労働)ではない
・職場の機会化や冷暖房の改善で、女性の整備士も活躍しやすくなってきている
・人間関係はどこでもつきまとう問題
・土日に勤務する職場はカーディーラーだけではない
カーディーラーでは、自動車整備士の平均年収は480万円程度となっています。
世の仕事と比較しても、決して低い数字ではありません。国が、自動車整備を根幹産業と捉え、待遇を改善するつもりでいる点も見逃せません。
そしてメーカー系カーディーラーは大企業であり、福利厚生やキャリアプランが比較的しっかりしています。
若手の頃は整備士として技術を学び、やがて配属替えにより、車を知り尽くした営業としてさらにキャリアを積むことができます。
年齢が高くなった際に、キツい肉体労働をさせられるようなことは少なくなっています。
人間関係については、少なくともカーディーラーならベテランが幅をきかせすぎることは少ないものです。
最後に、休みの問題について。
カーディーラーでクルマを売るため、土日に稼働しても当然で、この点は整備士が特殊なのではありません。
待遇など他の不満については、すべて一理はあるものです。
政府も、整備業が重要な産業であると考えています。不満を感じる人がいる以上解消されていくべき要素であることは確かです。
そうだとして、「土日に働きたくない」人は、最初から整備士を目指すべきではないでしょう。
Webの情報は、避けずに一度、すべて受け入れて読み込んでみましょう。
根拠なく否定したり、自分だけは違うと考えたりする必要はありません。
そのうえで、情報をどう捉えるか、どう役立てるべきかを考えてみます。
まず現代の、「手に職」の考え方から整理しましょう。
現代では、ひとつの道を極めること自体が美徳とはされません。仕事を一生モノとして捉える必要はなく、この点自動車整備士も同様です。
将来整備士を辞めたとして、整備士の経験が活きないかというと、必ずしもそうではありません。
具体的に役立つとは限らないものの、仕事の経験は思わぬところで役立つことも多いのです。
ひとまず、整備士でいる間はこの業界で懸命に努力し、経験を積みましょう。将来的にそこから離れることは、悪と思わなくていいのです。
自動車整備士を辞めた人の体験談は、探すと多く見つかります。
共通点としては、「こんなに問題点のある職場では、辞めるのも仕方ない。いや、むしろ最初から目指すべきではなかった」ということが挙げられます。
ですが、現役の整備士、または志願者が読む場合は、気を付けないとなりません。
辞めた人の気持ちも想像してみましょう。次の傾向がうかがえます。
・業界を何とかしたいという意思より、自分の決断のほうが重要
・辞める判断を、後付けで納得したがっている
・辞めた決断について、他人に共感してもらいたがっている
・クルマ自体は今でもおおむね好きで、できれば関係のある仕事をしたがっている
先に触れたように、「整備士から転業する」こと自体は悪でも、恥でもありません。
ですが自分の意志で辞めた多くの感想が、「整備士をやり抜いた」結果でないことは、おおむね共通しています。
自動車整備士の職場もいろいろであり、ディーラー整備士だけ取り上げても同じ環境にはありません。
業界の特性が目に付くと、整備士としての将来が不安になるかもしれません。
ですが整備士、未来がまったくないような業界ではないので、一生懸命働くことで未来は開けます。
将来整備士からステップアップする場合であっても、前向きに卒業していきたいものですね。
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