近年、社会に欠かせない役割を担う自動車整備士。この仕事を子どもたちはどのように見ているのでしょうか?
今回、全国の中学生・高校生の保護者を対象にアンケートを実施し、整備士という職業への関心度やイメージ、体験イベントへの参加意欲などを調査しました。その結果、若い世代が抱くリアルな「職業観」が明らかになりました。
今回の回答者の性別は以下のとおりです。
また、本アンケートでは、女性のお子さまからも整備体験や自動車関連の仕事に興味を示す回答が確認されました。
今回のアンケートでは、「まったくない」「あまりない」と答えた保護者が過半数を占め、全体としてクルマやバイクに対する関心が低い傾向が見られました。特に女子では「まったくない」という回答が多く、男子と比較すると関心度に大きな差があることがわかります。
一方で、「とてもある」「まあまあある」と回答した層も一定数おり、特に男子中学生や高校生に多く見られました。中には、「普段からクルマの動画をよく見ている」「父親と一緒に整備をしている」など、趣味と実体験が結びついているケースも存在します。
家庭環境や日常生活の中でクルマに接する機会の有無が、興味の有無に強く影響していることが読み取れる結果となりました。
「まったくない」「ほとんどない」と答えた家庭が全体の約65%を占め、現代の子どもたちが日常生活で機械やものづくりに触れる機会が非常に少ないことが明らかになりました。都市部ではDIYの文化も薄れ、工具や機械と無縁な生活を送る子どもも珍しくありません。
その一方で、「ときどきある」「よくある」と答えたのは、クルマやバイクに興味を持っている子が多く、「ラジコンを一緒に改造した」「自転車を自分で直した」など、身近な体験を通じて関心を育んでいる様子が見られました。
体験の有無が関心の深さに直結しており、学校や家庭で意識的に「触れる場」をつくることが、職業選択への関心を育てる第一歩となりそうです。
「ぜひ参加したい」「興味はある」と答えた家庭が全体の約55%を占め、イベント自体への関心は比較的高い水準にあります。特にクルマ好きなお子さまがいる家庭では、「親子で一緒に体験できるならぜひ行きたい」という前向きな回答が多く寄せられました。
一方で、「あまり興味がない」「まったく興味がない」と回答した家庭もあり、イベントのテーマや内容によって関心の広がりには差が出ることがわかります。
対象層を明確にしつつ、初心者でも楽しめる設計にすることで、参加意欲を高めることができると考えられます。
最も人気が高かったのは「タイヤ交換やオイル交換の体験」「運転シミュレーター」「カスタム・ペイント体験」など、“実際に手を動かす”系のプログラムでした。また「プロ整備士とのトーク」「学校見学+整備体験」といった“リアルな現場を知る”体験も高評価でした。
一方で、座学だけの説明や動画鑑賞では「つまらなそう」と感じる子も多く、五感で学べる体験型イベントの方が職業理解につながることがはっきりしています。単なる「進路説明会」ではなく、「遊びながら学べる」場が、将来の職業選択につながる貴重なきっかけとなるでしょう。
「全く思わない」「あまり思わない」と答えた保護者が多い一方で、「どちらかといえば思う」と回答した方も一定数存在し、完全に否定的なわけではないことがわかりました。
保護者からは、「好きなことを活かせるならいいと思う」「手に職がつくのは魅力」という声もある一方で、「長時間労働が心配」「収入が不安定そう」といった懸念も多く聞かれました。
つまり、「職業自体への偏見」というよりも、「働き方や将来性への不安」が選ばれにくい理由となっているようです。
圧倒的に多かったのは「体力が必要そう」「長時間労働になりそう」「専門的で難しそう」という印象です。さらに、「人手不足で大変そう」「収入が高くなさそう」といった現実的な不安も多く挙がりました。
一方で、「手に職がつく」「かっこいい」「社会に必要とされる」という肯定的な意見も少なからずありました。特に、体験をしたことがある子どもや、クルマに興味を持っている層では好印象が目立ちました。
つまり、実体験を通じてポジティブな印象に変わる可能性がある職業であることがわかります。正しい情報と魅力を伝える機会が圧倒的に不足していることが課題です。
「知らなかった」と答えた保護者が全体の5割を超えており、進路に関する基本的な情報が浸透していないことが明らかになりました。進学といえば「大学」という認識がまだ根強く、専門学校=選択肢になっていないという現実があります。
この結果から、専門学校進学や就職ルートの具体例をもっと可視化することが急務だと言えます。パンフレットやSNS、進路ガイダンスなどを活用し、保護者と子どもに「実際の道筋」を見せていく取り組みが求められています。
最も多く挙がったのは、「安定した仕事」「好きなことを活かせる仕事」「どこでも通用するスキルが身につく仕事」でした。また、「人の役に立つ」「社会に必要とされる」「将来AIに奪われにくい仕事」といった“これからの時代を生き抜く視点”を持った回答も多く見られました。
これらの希望は、実は整備士という仕事とも重なる部分が多い職業観です。誤解されやすい職種であるからこそ、こうした価値観と整備士の実像を結びつける発信が今後のカギになるでしょう。
今回のアンケートを通じて、自動車整備士という職業に対する印象は、「知らないから興味が持てない」「誤解しているから選ばない」という現実が見えてきました。しかし裏を返せば、きっかけさえあれば興味を持つ余地があるということでもあります。
体験イベントやプロとの対話、専門学校の見学など、手を動かし、目で見て、話を聞く機会をつくることが、進路選択の可能性を広げる第一歩です。
整備士という仕事を“自分ごと”としてイメージできるようにするために、これからの教育現場や企業の役割はますます大きくなっていくでしょう。