趣味や好きなことを仕事にしたい!
誰もが1度は考えたことがあることかとは思いますが、いざ趣味や好きなことを仕事にすると想像していた世界と違う為に途中で挫折してしまう人が数多くいます。
自動車整備士として働いている人に、なぜ自動車整備士になったのか?と質問をすれば、ほとんどの自動車整備士が子供の頃から自動車やバイクが好きだったからと答えるでしょう。
しかし、自動車整備士に趣味や好きなことが職業として成立しているか?と質問をしたらほぼ全員がNO!と答えます。
では何故NO!と答えるのか?今回は自動車整備士の仕事がキツいと感じることや仕事内容を詳しく解説していきます。
現在3Kとは高身長・高学歴・高収入と、人から好かれるポジティブな言葉ですが、ひと昔前までは3Kと言えばキツい・汚い・危険な職業を指すネガティブな言葉でした。
自動車整備士はまさしく3Kの代表格と言える職業となります。
自動車整備士の仕事がキツい理由は沢山ありますが、自動車整備士全員がキツいと感じることは夏暑くて、冬寒いということです。
当たり前のことを言っているようですが、これが想像以上にキツく過酷な状況での仕事となります。
夏場は風通しが悪く自動車のエンジンの熱と排気ガスで熱せられた自動車整備工場内はサウナルーム状態となります。自動車の室内に潜り行う整備はさらに蒸し暑く、過酷な作業となります。真夏であっても自動車整備工場の外に出ると涼しく感じるくらい自動車整備工場内は蒸し暑く、仕事はキツいです。
冬場は作業着の上からジャンパー等の上着を着てしまうとエンジンルーム等の狭い所に手が入りづらくなってしまう為、厚着をすることができません。更に、危険防止の為に自動車整備士は安全靴を履くことが必須ですが、安全靴の鉄板部は冷たく冬場は足の爪先が常に痺れているような状態になります。
自動車整備士の仕事は1〜3月が繁忙期となり、夜遅くまで残業をすることがあります。冬場に夜遅くまで作業を行う際、厚着をすることができない状況はかなりキツくなります。
自動車は室内や外観が綺麗であってもエンジンルームや足廻り、下廻り等、整備を行う部分はオイル汚れや泥汚れがあります。
自動車整備士は作業着を汚さないようになって1人前と言われていますが、どんなにベテランの自動車整備士でも目立つ部位の汚れがつかないだけで作業着は汚れます。
そして、作業着の汚れ以上に自動車整備士を悩ませるのが手の汚れです。自動車の整備は手袋をしても整備ができる場所がありますが、手の感触や感覚が必要となる自動車の整備は基本的に素手で行います。
手や爪の間のオイル汚れは非常に落ちにくく、毎日の仕事により染み付いたオイル汚れは、長期休暇でもなければ落ちることはなく、自動車整備士として経験を重ねるごとにオイル汚れで荒れた汚い手となります。
オイル汚れで荒れた手にコンプレックスをいだいている自動車整備士も多く、特に若年層の自動車整備士は手の汚れを気にして手を見られるのを嫌がる人が多いです。
自動車整備士の仕事は危険が伴い、全国の自動車整備工場で毎年500件以上の死傷事故が起きています。
自動車整備工場で1番多い事故が車両の落下事故で、ジャッキポイントやリフトアップポイントがズレてしまうと、車両の重量バランスが悪くなり車両がジャッキやリフトから落下してしまいます。最悪車両の下敷きになってしまい死亡事故となってしまうケースがあります。
また、近年はエアバッグの展開作業中の死傷事故も多くなっています。エアバッグの部品交換を行った場合、エアバッグを展開して中のガスを抜かないと廃棄することができません。エアバッグの展開作業時の爆発力は人を軽く吹き飛ばす力があり、誤った方法でエアバッグの展開作業を行うと重大な事故に繋がってしまいます。
その他にもエンジンの回転ベルトに巻き込まれての負傷やエンジンや排気装置部分に触れたことによる火傷、油脂類や鉄粉が目に付着してしまう等、自動車整備工場内の仕事には数多くの危険が存在しています。
自動車整備士を目指して自動車整備工場に就職をすると、想像していた世界との違いに驚く人が多いです。
自動車整備工場も他業種の企業と同じように営利目的の為に運営を行っています。技術職であってもお客様からお金を貰い仕事をしていることを忘れてはいけません。
新卒で自動車整備工場に入社した自動車整備士と面談等で話をすると、自動車やバイクが好きで人と話すのが苦手だから自動車整備士になったと言う人が数多くいます。
しかし、これは大きな間違いです。自動車整備士こそ高いコミュニケーション能力が必要となる職業です。
自動車整備士は自動車のお医者さんです。調子が悪くて病院にいって調子が悪いんで診てくださいと言ってもお医者さんはすぐに診察を行いません。診察の前にどこがどう調子悪いのか事細かに聞いて、症状の確認をしてから診察を行います。
これは自動車整備士も同じで自動車の調子が悪いと言われただけでは修理をすることができません。どこがどう調子が悪いのかお客様のご用命を聞き出し修理をしなければなりません。
お客様は自動車整備に関する専門用語はわからないので、わかりやすい言葉でお客様が理解できるようにご用命を聞き出すのには高いコミュニケーション能力が必要となります。
前述したように自動車整備工場は営利目的の為に運営をしています。営業時間内、自動車整備士は売り上げをあげるために働いています。
営業時間内に自分の車を整備することは可能ですが、自分で整備をしたとしても整備料金がかかります。
営業時間内に自動車整備工場の設備を使い自分の車を整備するのは、お客様の車を整備するのと何ら変わりはありません。社員割引はしてもらえますが無料にはなりません。
また、労災保険の絡みで営業時間外のケガ等に対応できないため、仕事が終わった後の工場の使用を禁止している自動車整備工場も多数あります。
自動車整備士が自動車整備工場で行うのは仕事です。趣味や好きなことを職業にしたとしても自分の自由時間があるわけではありません。とは言え昼休みの間に自分の車を洗車するくらいの作業はできます。それ以上の作業は仕事となることを忘れずに自動車整備士を目指しましょう。
自動車整備士は自動車の整備だけをしていれば良いわけではありません。
自動車整備士はお客様があって初めて成立する職業です。お客様を確保するためにお客様に車検・点検の連絡をしたり、整備後の調子伺いをしたり、お客様の家まで車両の引き取り・納車も行います。
また、自動車メーカーのカーディーラーでは年間の新車販売台数のノルマを自動車整備士にも課すところがあります。年間数台程度のノルマですが、これも大切な仕事となります。
自動車整備士の仕事はキツい!とよく言われます。実際に若年層の自動車整備士が他業種への転職をしてしまうことは珍しくありません。
なぜ若年層の自動車整備士が転職してしまうのか?その主な理由や意外な理由を紹介していきます。
若年層の転職理由として1番多いのが給与が安いということです。
自動車整備士の平均年収は400万円前後となっていて、全国の就労者の平均年収より若干低い程度となっています。
若干低い程度で転職するの?と思う人もいると思いますが、自動車整備士の給与は何年もの経験を積んで技術力や知識を得ることで昇給をしていきます。
自動車整備工場では自動車整備士の高齢化が問題となっていて、平均年齢が30代後半と他業種に比べて高くなっています。
自動車整備士は年収の高いベテラン層が多く、平均年収が全国の就労者の平均年収と遜色のない額となっていますが、若年層の自動車整備士の年収は平均で250万円にも満たない額となってしまいます。
若年層の平均年収はかなり低く、将来が不安になったり、結婚を機に生活が苦しくなるのは困るからと転職してしまう人が多いです。
現在は自動車整備士の高齢化問題を改善するべく、自動車メーカーのカーディーラーを中心に若年層の給与ベースアップを図っています。
自動車整備工場では自動車整備士不足と自動車整備士の高齢化が問題となっています。
自動車整備工場の人員は多くても10数人程度です。その中で若年層の自動車整備士が1人で他が20歳くらい歳の離れたベテラン自動車整備士だと、うまくコミュニケーションがとれずに若年層の自動車整備士が他業種へと転職をしてしまいます。
自動車メーカーのカーディーラーや中古車販売のカーディーラーは土・日・祝日に来客イベントを行い集客をします。その為カーディーラーでは定休日を平日に設定しています。
家族で頻繁に旅行に行ったり、アウトドアでのスポーツ等が趣味の人は周りの人達と休日が合わずに土・日・祝日が定休日の職場へと転職をしてしまいます。
自動車整備工場で働きたいけど、趣味やプライベートを充実させたい人は求人情報の定休日をよく確認しましょう。
中堅の自動車整備士の転職理由として多いのが仕事の責任の重さにプレッシャー負けをしてしまうことです。
特に自動車検査員となると自動車整備工場内のほぼ全ての責任を負うよううになります。
自動車検査員は準公務員と呼ばれ、自動車整備工場内で不正や不備があった際に公務員と同等の罰を受けます。更に、自動車整備工場が運営停止処分を受けた際は、自動車検査員は運営停止期間の損害賠償を請求されます。
罰則や責任の重さを考えると自動車検査員は準公務員というよりは公務員の上位版となります。このプレッシャーは家でくつろいでいる時でも感じているものになるので、このプレッシャーから解放される為に転職をしてしまう人がいます。
今回は自動車整備士の仕事のキツいところを紹介してきましたが、どんな職業でもキツいと感じることは沢山あります。
現在では転職を行いキャリアアップをすることは珍しいことではありません。しかし、キャリアアップをしていく中で責任を負っていくことも当然となります。
自動車整備士を目指して自動車整備士になって挫折することもあると思いますが、転職して心機一転頑張るのも、自動車整備士を続けて自動車整備士として成長するのも同じくらいの努力が必要となります。
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