自動車整備士を目指す方やキャリアアップを考えている方へ。自動車整備士の国家資格は、一級・二級・三級・特殊整備士の4つの等級に分かれ、さらに業務内容によって細かく種類が定められています。この記事では、全14種類の資格を一覧で解説し、それぞれの仕事内容、取得方法、試験の難易度まで網羅的に紹介します。この記事を読めば、ご自身の目標に最適な資格と、その取得までの具体的な道のりが明確になります。

自動車整備士資格は、自動車の安全性を確保し、利用者が安心して車に乗るために不可欠な専門知識と技術を証明する国家資格です。現代社会において自動車は重要な移動手段ですが、その構造は非常に複雑であり、一歩間違えれば人命に関わる重大な事故につながる可能性があります。そのため、整備を行う者には高い専門性が求められます。この章では、自動車整備士という仕事における国家資格の重要性や、法律的な位置づけについて詳しく解説します。
資格には「名称独占資格」と「業務独占資格」がありますが、自動車整備士資格は少し特殊な位置づけです。医師や弁護士のように、資格がないと名乗ることすらできない「名称独占資格」ではありません。しかし、自動車の安全性を左右する重要部分の整備、いわゆる「分解整備」は、国から認証を受けた事業場(認証工場)でなければ行うことができません。そして、その認証工場では、有資格者である自動車整備士が作業を行うか、無資格者の作業を指導・監督することが法律で義務付けられています。このため、実質的には特定の業務を独占する側面を持っており、プロの整備士として働く上で資格は必須と言えるのです。
自動車整備士に国家資格が必要な最大の理由は、言うまでもなく「自動車の安全確保」です。ブレーキやエンジン、ステアリングといった重要保安部品の整備不良は、大事故の直接的な原因となります。国が道路運送車両法に基づいて資格制度を設けているのは、整備士の技術レベルを一定水準以上に保ち、国民の生命と財産を守るためです。また、この資格は整備士個人の技術力を客観的に証明するものでもあります。資格を持つことで、顧客からの信頼を得ることができ、「安心して愛車を任せられるプロフェッショナル」としての地位を確立できます。これは、整備士自身のキャリアだけでなく、勤務する整備工場全体の社会的信用にも繋がる重要な要素です。
自動車の分解整備を事業として行うすべての工場は、地方運輸局長の「認証」を受け、「認証工場」となる必要があります。この認証基準の一つに、有資格者の配置が定められています。具体的には、事業場ごとに2名以上の自動車整備士を配置し、そのうち1名は二級以上の資格保有者でなければなりません。さらに、車検(継続検査)まで自社で完結できる「指定工場(民間車検場)」になるには、より厳しい設備基準や人員基準を満たし、自動車検査員という資格を持つ整備士を置く必要があります。つまり、自動車整備を事業として行う工場で正規の整備士として働くためには、国家資格の取得が絶対条件となります。無資格では補助的な作業しかできず、キャリアアップや収入アップも望めないため、この資格は整備業界で働くためのパスポートと言えるでしょう。

自動車整備士の資格は、国土交通省が管轄する国家資格です。自動車の安全確保や公害防止という重要な役割を担うため、専門的な知識と技術が求められます。この資格は大きく分けて「一級」「二級」「三級」「特殊」の4つの等級に分類されており、それぞれで対応できる業務範囲や求められるスキルレベルが異なります。まずはこの等級の違いを理解することが、自動車整備士を目指す上での第一歩となります。ご自身のキャリアプランに合わせて、どの資格を目指すべきか考えていきましょう。
一級自動車整備士は、自動車整備士資格の中で最も上位に位置する最高峰の資格です。二級整備士の業務範囲に加えて、他の整備士への指導や、ハイブリッド車・電気自動車(EV)といった電子制御技術が多用される次世代自動車の高度な診断・整備まで行うことができます。単なる整備技術者としてだけでなく、現場のリーダーや指導者としての役割が期待されるレベルです。また、安全管理や環境保全に関する深い知識も求められ、整備工場全体の品質と安全性を向上させるための重要な存在となります。取得難易度は最も高いですが、その分、自動車業界でのキャリアアップにおいて大きな強みとなる資格です。資格は「一級大型」「一級小型」「一級二輪」の3種類に分かれています。
二級自動車整備士は、自動車整備の現場で中心的役割を担う、最も一般的で需要の高い資格です。エンジンやトランスミッションの脱着といった分解整備を含む、自動車整備に関するほとんどの作業を一人で実施することができます。多くの整備工場やディーラーでは、この二級自動車整備士資格の保有を求人応募の条件としています。整備業務全般を任されるため、自動車整備士として本格的にキャリアを築いていく上では必須の資格と言えるでしょう。また、整備された自動車が保安基準に適合しているかを最終チェックする「自動車検査員」になるための前提条件でもあり、キャリアパスの観点からも非常に重要です。資格は「二級ガソリン」「二級ジーゼル」「二級シャシ」「二級二輪」の4種類があります。
三級自動車整備士は、自動車整備士としてのキャリアをスタートさせるための入門的な資格です。この資格を取得することで、基本的な整備作業を行うことが可能になります。ただし、行える業務はエンジンやブレーキなどの基本的な分解整備に限定されており、単独で行える作業範囲は限られています。そのため、実際の現場では二級以上の資格を持つ整備士の指導や監督のもとで作業を行うことが一般的です。主な作業内容としては、タイヤ交換、オイル交換、ブレーキパッドの交換などが挙げられます。これから自動車整備士を目指す方が、実務経験を積みながら上位資格である二級自動車整備士を目指すためのステップアップとして位置づけられる資格です。資格は「三級シャシ」「三級ガソリン・エンジン」「三級ジーゼル・エンジン」「三級二輪」の4種類に分かれています。
特殊整備士は、一級から三級までの等級とは異なり、特定の分野に特化した専門知識と技術を証明するための資格です。自動車の構造が複雑化する中で、より専門的なスキルを持つ整備士の需要が高まっています。この資格は、「自動車タイヤ」「自動車電気装置」「自動車車体」の3つの分野に分かれており、それぞれのスペシャリストとして活躍することを目指せます。「自動車車体整備士」は主に板金塗装、「自動車電気装置整備士」は電装系のトラブルシューティング、「自動車タイヤ整備士」はタイヤに関する高度な整備を行います。二級や三級の資格とあわせて取得することで、自身の専門性を高め、整備士としての市場価値をさらに向上させることができます。

自動車整備士資格は、等級だけでなく、対象とする自動車の種類や整備箇所によってさらに細かく分類されています。ここでは、それぞれの資格がどのような業務に対応しているのか、具体的な仕事内容とあわせて詳しく解説します。ご自身の興味や目指すキャリアに合わせて、最適な資格を見つけるための参考にしてください。
一級自動車整備士は、整備士資格の最高峰に位置づけられます。二級整備士の業務範囲に加え、先進技術が搭載された自動車の高度な故障診断や、他の整備士への技術指導など、指導者としての役割も担います。環境保全や安全管理といった分野においても、より深い専門知識が求められる資格です。
一級大型自動車整備士は、バスやトラックといった大型車両の整備におけるスペシャリストです。複雑な構造を持つ大型車のエンジン、シャシ、電子制御システムなど、あらゆる箇所の高度な点検・整備・故障探求を行います。特に、物流や公共交通を支える車両の安全運行に不可欠な存在であり、整備工場でのリーダーや管理者として、後進の育成や作業工程の管理といったマネジメント業務も担当します。高度な診断技術を駆使して、難解なトラブルを解決する最後の砦となる重要な役割を担います。
一級小型自動車整備士は、私たちが日常的に利用する乗用車(ガソリン車、ディーゼル車)や小型トラックなどを対象とする資格です。ハイブリッド自動車(HV)や電気自動車(EV)といった次世代自動車の普及に伴い、電子制御装置や高度な安全技術に関する専門知識が不可欠となっています。整備工場においては、二級・三級整備士を指導する現場のリーダーであり、お客様に対して整備内容を論理的に説明するアドバイザーとしての役割も重要です。ディーラーや大手整備工場で、工場長やサービスマネージャーへのキャリアパスが開かれています。
一級二輪自動車整備士は、2018年に新設された比較的新しい資格で、原動機付自転車から大型バイクまで、あらゆる二輪自動車の整備に対応します。二輪車特有の構造や電子制御システムに関する深い知識と、高度な故障診断技術が求められます。趣味性の高い乗り物であるため、顧客の要望に応じたカスタマイズやパフォーマンス向上に関するアドバイスなど、技術力に加えて高いコミュニケーション能力も必要とされる仕事です。大規模なバイクショップや専門性の高いカスタムショップでの活躍が期待されます。
二級自動車整備士は、自動車整備業界における中心的な資格です。エンジンやトランスミッションの分解を伴う「分解整備」を含め、自動車の点検、整備、修理に関するほとんどすべての作業を一人で行うことができます。多くの整備工場で必須とされる資格であり、取得することで就職やキャリアアップにおいて大きなアドバンテージとなります。
二級ガソリン自動車整備士は、ガソリンエンジンを搭載した普通自動車、四輪・三輪の小型自動車、軽自動車の整備を専門とします。自動車整備士の中で最も取得者が多く、ディーラーや民間の整備工場、カー用品店など、活躍の場が非常に広いのが特徴です。車検などの定期点検業務から、エンジンや足回りの分解整備、故障診断まで、幅広い業務を担当します。自動車整備のプロフェッショナルとして、キャリアをスタートさせる上で基本となる資格です。
二級ジーゼル自動車整備士は、ディーゼルエンジンを搭載した自動車の整備を専門とします。主にトラックやバスなどの大型・中型車両が対象となりますが、近年ではディーゼル乗用車の整備も行います。ガソリンエンジンとは異なる構造や燃料噴射システム、排出ガス浄化装置(DPFなど)に関する専門知識が必要です。運送会社やバス会社の整備部門、建設機械のメンテナンスなど、社会インフラを支える分野で需要が高く、安定したキャリアを築くことができます。
二級自動車シャシ整備士は、自動車の「シャシ」部分に特化した資格です。シャシとは、エンジンやボディを除いた、動力伝達装置(トランスミッション、プロペラシャフト)、走行装置(タイヤ、ホイール)、操舵装置(ステアリング)、制動装置(ブレーキ)などを指します。自動車の「走る・曲がる・止まる」という基本性能に直結する重要な部分の分解整備を担当するため、高い精度と安全への意識が求められます。タイヤ専門店やブレーキ専門の整備工場などで専門性を活かして活躍できます。
二級二輪自動車整備士は、原動機付自転車から大型バイクまで、二輪自動車全般の整備を行うための資格です。エンジン、車体、電装系など、バイク全体の分解整備が可能であり、バイクショップで働く上で必須の資格と言えます。定期点検や修理はもちろん、顧客の好みに合わせたカスタマイズやチューニングといった専門的な作業も行います。バイクという趣味性の高い乗り物を扱うため、顧客とのコミュニケーションを楽しみながら専門技術を追求できる魅力的な仕事です。
三級自動車整備士は、自動車整備の基本的な知識と技術を証明する入門的な資格です。二級整備士のように分解整備を一人で行うことはできませんが、上級整備士の指示のもとで、エンジンやシャシなどの基本的な分解整備作業に携わることができます。整備士としてのキャリアの第一歩であり、ここから実務経験を積んで二級を目指すのが一般的です。
三級自動車シャシ整備士は、自動車のシャシ部分に関する基本的な整備作業を行うことができます。具体的には、タイヤ交換、ブレーキパッドの交換、サスペンションの簡単な部品交換など、足回りの基本的な分解整備が主な業務範囲です。二級整備士の監督下で作業を行うことが前提となりますが、ガソリンスタンドやカー用品店、タイヤショップなどで即戦力として活躍することが可能です。
三級自動車ガソリン・エンジン整備士は、ガソリンエンジンに関する基本的な分解整備作業を担当します。エンジンオイルや点火プラグ、ファンベルトの交換といった基本的なメンテナンス作業に加えて、エンジン本体の一部の分解や部品交換といった作業も行います。整備士としての基礎を固めるための重要な資格であり、ディーラーや整備工場でアシスタントとして働きながら、より高度な技術を学んでいくことになります。
三級自動車ジーゼル・エンジン整備士は、ディーゼルエンジンに関する基本的な分解整備を行うための資格です。燃料フィルターやエンジンオイルの交換といった日常的なメンテナンス作業が中心となります。ガソリンエンジンとは異なるディーゼル特有の構造や燃料系統に関する基礎知識を身につけることができ、トラックやバスを扱う整備工場でのキャリアのスタートラインとなります。
三級二輪自動車整備士は、二輪自動車の基本的な整備作業を行う資格です。タイヤ交換やチェーンの調整・交換、ブレーキフルードの交換など、バイクの安全走行に欠かせない基本的なメンテナンス作業を担当します。バイクショップで整備アシスタントとして働きながら、二級二輪自動車整備士を目指すためのステップアップとして位置づけられています。
特殊整備士は、自動車整備の中でも特定の分野に特化した、高度な専門知識と技術を証明する資格です。それぞれの分野におけるプロフェッショナルとして、他の整備士では対応が難しい専門的な作業を担当します。特定の分野を深く追求したい方に適した資格です。
自動車タイヤ整備士は、その名の通りタイヤに関する専門家です。タイヤの組み換えやホイールバランスの調整、パンク修理といった基本的な作業はもちろん、車両の走行性能や安全性を大きく左右するホイールアライメントの測定・調整といった高度な作業も行います。タイヤの構造や性能に関する深い知識を活かし、顧客に最適なタイヤを提案するアドバイザーとしての役割も担います。タイヤ専門店や大手カー用品店、ディーラーなどで活躍できます。
自動車電気装置整備士は、自動車の電気系統全般を扱うスペシャリストです。バッテリーやスターター、オルタネーター(発電機)といった基本的な電装品から、エアコン、カーナビ、オーディオ、各種センサーまで、その範囲は多岐にわたります。近年では、ハイブリッドシステムや先進運転支援システム(ADAS)など、電子制御の塊である現代の自動車整備において、その重要性がますます高まっています。電装品専門店やディーラーで、電気系統の複雑なトラブルシューティングを行います。
自動車車体整備士は、事故や経年劣化によって損傷した自動車のボディを修復する専門家です。板金作業によって凹んだパネルを元の形に戻し、塗装作業によって美しい外観を復元します。特に、自動車の骨格であるフレームが歪んだ場合の修正作業には、ミリ単位の精度が求められる高度な技術が必要です。単に見た目を直すだけでなく、自動車本来の強度や安全性を回復させるという重要な役割を担っており、板金塗装工場(ボディショップ)でその専門性を発揮します。

自動車整備士の国家資格を取得するための道のりは、大きく分けて2つのルートが存在します。一つは、整備工場などで働きながら実務経験を積んで受験資格を得る方法。もう一つは、専門学校などの養成施設に通い、知識と技術を体系的に学んでから受験する方法です。どちらのルートを選ぶかによって、必要な期間や費用、学習スタイルが大きく異なります。ここでは、それぞれのルートの特徴と、等級ごとに定められた具体的な受験資格について詳しく解説します。ご自身の学歴やキャリアプランに合った最適な方法を見つけましょう。
このルートは、自動車整備士としてのキャリアを未経験からスタートさせたい方や、学費を抑えながら資格取得を目指したい方に適しています。まず認証工場や指定工場へ就職し、整備補助などの業務から始めて現場での経験を積んでいきます。最大のメリットは、給与を得ながら実践的なスキルを習得できる点です。現場の即戦力として必要な知識や技術が自然と身につくでしょう。一方で、資格取得までに必要な実務経験年数が長くなる傾向があり、働きながら試験勉強の時間を確保する必要があるため、強い意志と自己管理能力が求められます。多くの場合、各都道府県の自動車整備振興会が実施する技術講習を受講し、修了試験に合格することで実技試験の免除を受けてから、学科試験に臨むのが一般的です。
自動車整備士資格の取得において、最も効率的で一般的なのがこのルートです。国土交通大臣が指定する「自動車整備士養成施設」(専門学校や自動車大学校、職業能力開発校など)に入学し、専門的なカリキュラムに沿って学びます。養成施設には第一種と第二種の2種類があり、特に第一種養成施設を卒業すると、在学中に学んだ課程に対応する等級の実技試験が免除されるという大きなメリットがあります。そのため、卒業後すぐに学科試験に挑戦でき、最短期間での資格取得が可能です。体系的な教育により、基礎から最新技術まで幅広く学べるほか、就職サポートも手厚いため、卒業後のキャリアパスも描きやすいでしょう。ただし、専門学校への通学には当然ながら学費が必要となります。
自動車整備士の受験資格は、取得したい資格の等級や種類、そして最終学歴や養成施設の卒業有無によって細かく定められています。ここでは、実務経験を積んで直接受験する場合の一般的な実務経験年数を等級ごとに解説します。なお、ここでの実務経験とは、原則として認証工場または指定工場での整備経験を指します。
三級自動車整備士は、自動車整備の基本的な知識と技術を証明する資格です。受験資格を得るために必要な実務経験年数は、最終学歴によって異なります。
まずは整備工場で働きながら経験を積み、最初のステップとして三級資格の取得を目指す方が多くいます。
二級自動車整備士は、整備業務全般を担う中心的な資格であり、多くの整備士が最終目標としています。二級の受験資格は、三級資格の有無や学歴によってルートが分かれます。
第一種養成施設(二級課程)を卒業した場合は実務経験が不要となり、卒業と同時に受験資格が与えられます。
一級自動車整備士は、指導者レベルの高度な知識と技術が求められる最上級の資格です。受験するためには、二級整備士資格の取得が前提となります。
一級整備士の試験は難易度が高く、実務経験に加えてさらなる学習が不可欠です。一級課程のある第一種養成施設を卒業すれば、二級取得後の実務経験なしで受験資格を得ることができます。

自動車整備士の資格を取得するには、国土交通省が実施する国家試験に合格する必要があります。試験は、知識を問う「学科試験(登録試験)」と、技術力を測る「実技試験」の2つで構成されています。等級や種類によって試験範囲や難易度は異なりますが、いずれも自動車の安全を守るために必要な知識と技術が問われる重要な試験です。ここでは、それぞれの試験内容と近年の合格率について詳しく解説します。
学科試験は、自動車整備士として必要な法令や自動車の構造、点検・整備方法などに関する知識を問うもので、主にマークシート方式で実施されます。出題範囲は等級や種類ごとに定められており、例えば二級ガソリン自動車整備士であれば「構造・機能及び取扱い法」「点検、修理、調整及び完成検査の方法」「保安基準その他の自動車の整備に関する法規」などが含まれます。特に、一級自動車整備士の試験では、筆記試験に加えて口述試験も課されるため、より高度で実践的な知識が求められます。
一方、実技試験では、実際に車両やエンジン、測定機器などを用いて、基本的な取り扱いや分解・組立、点検・調整、修理といった一連の作業を正確かつ迅速に行えるかが評価されます。ただし、国土交通大臣が指定する自動車整備士養成施設(専門学校など)を卒業した場合は、この実技試験が免除されます。そのため、多くの受験者は養成施設ルートを選択しています。
自動車整備士資格の難易度は、等級によって大きく異なります。一般社団法人日本自動車整備振興会連合会(日整連)が公表しているデータによると、二級・三級自動車整備士の学科試験の合格率は、例年80%~90%台と非常に高い水準で推移しています。これは、養成施設で体系的に学び、しっかりと試験対策を行えば、十分に合格が狙えるレベルであることを示しています。一方で、指導者レベルである一級自動車整備士(小型)の学科試験は、合格率が50%前後となることもあり、難易度が格段に上がります。また、養成施設を修了せずに実務経験のみで受験する場合に必要となる実技試験は、種類にもよりますが合格率が50%~70%程度と、学科試験に比べて低い傾向にあります。これは、作業の正確性や効率性、安全管理など、総合的な技術力が厳しく評価されるためです。どの等級を目指すにしても、計画的な学習と対策が合格への鍵となります。

自動車整備士資格を取得した後も、さらなるキャリアアップを目指せる関連資格が数多く存在します。これらの資格を取得することで、仕事の幅が広がり、より専門性の高い業務に携わることが可能になります。給与アップや役職への昇進にも繋がり、自動車業界で長く活躍していくための大きな武器となるでしょう。ここでは、自動車整備士からのステップアップとして特に人気が高く、実務に直結する3つの資格をご紹介します。
自動車検査員は、整備工場が「指定工場(民間車検場)」の指定を受けるために不可欠な国家資格です。主な仕事は、車検の最終的な合否を判定する「完成検査」を行うことです。整備士が点検・整備した車両が、道路運送車両法の保安基準に適合しているかを自らの権限と責任で判断します。自動車検査員になるには、二級自動車整備士以上の資格を持ち、整備主任者として1年以上の実務経験を積んだ上で、自動車検査員教習を修了し、修了試験に合格する必要があります。責任の重い仕事ですが、その分工場からの信頼も厚く、キャリアアップの代表的な選択肢とされています。
職業訓練指導員は、公共の職業能力開発施設や認定職業訓練施設などで、自動車整備士を目指す人たちに専門知識や技術を指導する役割を担います。いわば「自動車整備の先生」であり、後進の育成に貢献できるやりがいのある仕事です。この免許を取得するには、一級または二級自動車整備士技能検定に合格していることや、学歴に応じた実務経験年数を満たしていることなど、複数のルートがあります。指導員として働くためには、人に教えるためのコミュニケーション能力や指導力が求められるため、技術力だけでなく、教育に関心がある人に向いている資格と言えるでしょう。
中古自動車査定士は、中古車の価値を適正に評価(査定)するための専門資格で、一般財団法人日本自動車査定協会(JAAI)が認定しています。中古車販売店やディーラー、買取専門店などで活躍し、車種、年式、走行距離、車体の状態、修復歴の有無などを細かくチェックし、査定額を算出します。資格には「小型車査定士」と「大型車査定士」の2種類があり、自動車整備士の知識を活かして車両の状態を正確に見抜くことができるため、非常に親和性の高い資格です。査定業務は中古車ビジネスの根幹をなす重要な仕事であり、この資格を持つことで営業職や買取担当としてのキャリアパスも開けます。

この記事では、一級から三級、そして特殊整備士まで、多岐にわたる自動車整備士資格の種類、仕事内容、取得方法について詳しく解説しました。自動車整備士は、私たちの安全なカーライフを支える国家資格であり、その重要性はますます高まっています。
資格取得への道は、実務経験を積むルートと養成施設で学ぶルートがあります。ご自身の目標とする整備士像を明確にし、どの等級や種類の資格を目指すのか、どのようなルートで取得するのかを計画的に考えることが重要です。合格率や試験内容を参考に、着実に準備を進めましょう。
資格取得はキャリアのゴールではなく、新たなスタートです。自動車検査員や中古自動車査定士などの関連資格へステップアップすることで、活躍の場はさらに広がります。技術革新が進む自動車業界で、専門知識を持つ整備士は不可欠な存在です。この記事が、あなたの整備士としての未来を切り拓く一助となれば幸いです。