日本の自動車の保有台数は約8100万台となっています。そのうちの約13%が大型のトラックやバスとなっています。
乗用自動車は買い物や通勤等、生活には欠かせないものになっていますが、大型自動車も物流を行うのに欠かせません。
大型自動車はその用途から乗用自動車に比べて過酷な状況で使用されています。その為、大型自動車は乗用自動車よりも部品の劣化や消耗が激しく、大型自動車の点検・車検では部品交換等に多くの時間が必要となります。
点検や車検の整備に多くの時間がかかる大型自動車ですが、普段、皆さんが利用する自動車整備工場やカーディーラーで整備をしている姿を見かけませんよね?
実は、大型自動車は専門の自動車工場でなければ整備を行う事ができません。
今回は専門の自動車工場で大型自動車の整備を行う自動車整備士について徹底解説をしていきます。
(出典元 パブリックドメインQ フリー素材)
大型自動車整備士のイメージとして『キツイ・汚い・危険』の3Kを思い浮かべる人が多いですが、実際に乗用自動車の整備士に比べてどれぐらいの違いがあるのか?仕事量や給与面の違いはあるのか?
もちろん、違いはあります。正直な話、自動車整備士の中で大型自動車の整備士になりたいという人は少なく、自動車整備士不足が問題となっている自動車整備業界でも、大型自動車整備士不足は特に深刻な問題となっています。
自動車整備士が大型自動車整備士になりたくない理由は仕事がキツイからです。
通常の乗用自動車と違い大型自動車の部品はサイズが大きく、タイヤ1本外すだけでも重労働となります。大型自動車を整備するのには体力が必要となり、大きな部品を交換する際は危険も伴います。
また、部品交換に多くの時間を要するので必然的に残業も多くなります。
自動車整備士が1時間働いて得る工賃(レバレート)は約8千円程度となっています。
自動車整備工場によってレバレートは違いますが、どんな自動車の整備であってもレバレートは変わりません。
大型自動車の整備ってキツイはずなのに乗用自動車の整備と同じ工賃って変だと思いませんか?
実は変じゃないんです。
大型自動車整備士は大きな部品を交換するのに多くの時間を要しますが、乗用車の整備士は多くの仕事をこなします。
極端な話ですが、大型自動車と乗用車のタイヤを1時間で何本交換できるか?という作業をした時に、乗用自動車のタイヤ交換は大型自動車の何倍もの本数のタイヤ交換を行う事ができます。
1時間で行える作業は部品の大きさや構造により時間が異なりますが、自動車整備士は1時間定められた量の仕事をこなしているので工賃に差はありません。
乗用自動車の整備士は仕事をしていくなかで、お客様より整備代が高いというクレームを日常的にうけます。その時に必ずレバレートが大型自動車の整備工賃といっしょなのはおかしいと言われます。
実際に乗用自動車と大型自動車の車検の基本工賃を比べると、乗用車の車検基本工賃が平均で2万円前後に対し、大型自動車の車検基本工賃は平均で7万円前後となっています。
一見すると大型自動車の車検基本工賃の方が高いように感じますが、レバレートで計算をすると乗用自動車の車検は2時間半弱、大型自動車の車検は9時間弱という時間がかかるので、作業時間が多い大型自動車の基本工賃の方が高くなります。
お客様より整備代について質問をされた時は、レバレートに作業時間をかけたのが工賃で、レバレートはどこの自動車整備工場でも大差はないということを説明できるようにしておきましょう。
(出典元 イラストAC フリー素材)
前述したように自動車整備士のレバレートは同じなのですが、給料は大型自動車整備士の方が多くもらえます。
乗用自動車の整備士の平均年収が400万円前後に対し、大型自動車の整備士の平均年収は450万円前後となっています。更に、大型自動車の整備には多くの時間を有する為に、残業の多い自動車整備工場では残業手当を含めると平均年収以上の収入を得ることができます。
前述したように大型自動車専門の自動車整備工場への就職を希望する人は少なく、自動車整備士の人員を確保するために大型自動車専門の自動車整備工場は給料を高く設定しています。
自動車整備士の仕事は利益率が低く、ある程度の経験を積むまでは給料が低いのですが、大型自動車の整備は部品代の利益が大きい為に、若手でも平均年収に近い収入を得ることができます。
乗用自動車、大型自動車共に自動車整備士の年収は、民間の自動車整備工場よりもカーディーラーの方が高い傾向にあります。
乗用自動車のカーディーラーは各都道府県内に数十店舗を展開し運営を行っていますが、大型自動車のカーディーラーは各都道府県の主要地域のみに店舗を展開して運営を行っています。
大型自動車は生産台数が少ない為、少ない店舗数でも充分に運営を行うことができます。大型自動車のカーディーラーは少ない運営費で乗用自動車のカーディーラー同様の利益をあげることができるので、自動車整備士の給与を高くすることが可能となります。
(出典元 出典元 FreePik フリー素材)
実は大型自動車専門の自動車整備士というのは存在しないんです。変な話ですよね?大型自動車を整備する自動車整備士は大型自動車ばかり整備してますよね?
なぜ大型自動車ばかり整備するのか?その答えはいたってシンプルで、自動車整備工場がどの自動車を整備するのかの承認を国から受けているかです。
自動車整備士はどんな自動車を整備するにせよ必要な資格は自動車整備士資格となります。
大型自動車の整備工場への就職を希望する場合は、普通自動車(大型)の認証・指定を受けた自動車整備工場の求人を探すことになります。
自動車整備士資格は1〜3級自動車整備士と特殊整備士資格があり、2級自動車整備士資格以上の資格を取得することで保安部位に関わる特定整備(分解整備)を行うことができるようになります。
1級自動車整備士は1級小型自動車整備士・1級大型自動車整備士・1級二輪自動車整備士資格がありますが、2級自動車整備士との差別化が難しく2002年まで試験の実施が行われませんでした。現在は次世代カーの整備を主体とした1級小型自動車整備士の試験のみ実施されています。
2級・3級自動車整備士は自動車ガソリンエンジン、自動車ディーゼルエンジン、自動車シャシー、二輪自動車の4種類の資格があります。
ほとんどの大型自動車は軽油を原動力としているので、大型自動車の整備工場への就職を希望する人は2級もしくは3級自動車ディーゼルエンジンの資格を取得するようになります。できることなら特定整備(分解整備)の行える2級自動車整備士資格の取得するようにしましょう。
自動車整備士を目指すのには自動車整備士養成施設の専門学校に通うのが1番の近道となります。
自動車整備士養成施設の専門では4年制の1級自動車整備士コース、2年制の2級自動車整備士コースを設けていることが多いです。
2級自動車整備士コースではガソリンエンジンとディーゼルエンジンの両方の資格取得を目指すので、大型自動車の整備工場への就職を希望する人は2級自動車整備士コースに通って資格の取得を目指しましょう。
また、1級自動車整備士コースでは2級自動車整備士資格の知識や技術プラス次世代カーの電子制御等を学べますが、現状、大型自動車に関しては次世代カーも少なく試験も小型自動車のみの実施なので、1級自動車整備士コースよりも2級自動車整備士コースを選び、就職した自動車整備工場で経験を積むのがベストな選択となります。
関東工業自動車大学校の2級自動車整備科の2級自動車整備士資格試験合格率は、全国平均が89.9%に対して97.4%と物凄く高い合格率となっています。
また、希望就職先への就職率は100%となっていて、大型自動車の整備工場へ就職した先輩も数多くいます。
(出典元 FreePik フリー素材)
自動車整備士は若手の給料が少なく、転職をしてしまう人が数多くいます。その中には高収入を求めて乗用自動車の整備士から大型自動車の整備士になる人も沢山います。
大型自動車の整備士は大型自動車の運転免許を取得しなければいけなかったり、自動車整備工場までの通勤距離が長い等のデメリットもありますが、そのデメリットを上回る年収を若手のうちから得ることができます。
正直、自動車整備士の仕事は自動車の種類を問わずキツイです。
しかし、給料というのはキツイ仕事であっても明日も頑張ろうと思えるようになる重要なモチベーションアップのアイテムです。
より良いモチベーションアップを求めて大型自動車の整備士を目指すのも面白いと思います。