自動車整備士として働いている人、興味を持っている人なら、メカニック全般が好きで興味があるのではないでしょうか。
メカニックが豊富に存在する貴重な職場が、自衛隊です。当然ながら、兵器や特殊車輌をはじめとするメカニック整備の仕事も多数あります。
非常時に機械がきちんと作動することは、言うまでもなく重要です。
この記事では、自衛隊と自動車整備士との関係についてご説明します。
大きなテーマはふたつです。
・自衛隊に入隊したら自動車整備士資格を取得できる?
・自動車整備士が資格を活かして自衛隊に入隊できる?
それぞれ見ていきます。
自衛隊、得に陸上自衛隊において、一般の社会でも役立つ資格がいろいろ取れることは、ご存じかもしれません。
自衛隊で自動車整備士も取れるでしょうか。
結論から先に述べます。
・自衛隊で整備士資格を得られるかどうかは運不運が大きい(資格の得られない可能性のほうが高い)
・自衛隊に入隊し、整備士資格を取得する人は実際にいる
・自衛隊除隊後、資格を活かして自動車整備士として活躍している人も多い
細かく補足しながら見ていきます。
自動車整備の業界においては、最終的に「2級」整備士資格まで持っておくことが求められます。
逆にいうなら2級の資格があれば大部分の整備はできますし、将来は検査員になることも可能です。
2級を最も確実に取得する方法は、自動車大学校等の整備士専門学校に通うことです。2年の通学で、卒業時に2級まで取得できます。
いっぽう、学校に通わず整備工場等での実務経験から整備士のキャリアをスタートする場合、受験資格を得るまでにまず年数がかかります。
通常、3級の受験資格を得るまでの必要な実務経験は3年です。さらに3級合格後、2年から3年の実務経験をさらに経て、ようやく2級の受験資格が得られます(高校の専攻によって、それぞれ短縮の場合あり)。 自衛隊で給与を得ながら無償で整備士の資格を得られるなら、その後の人生におけるメリットは計り知れないわけです。ここまでは間違いありません。
自衛隊において、大型自動車運転免許などの資格を無償で取得できることはよく知られています。
実際には、入隊した全員が必ず取れる性質のものではないのですが、実際に大型免許の取得を目的に入隊する人も存在します。
ところで自衛隊内に自動車教習所はあっても整備の専門学校はなく、自動車整備士の資格を得るアプローチについては、運転免許の場合と大きく異なります。
整備士の専門学校に通うルートとはまったく異なり、自衛隊での車両整備の実務経験を踏まえ、整備士試験の受験資格を得て、実際に資格に合格する人がいるということです。
「学校に行かずに資格が取れる」というのとは、ちょっと違います。
さて、自動車整備の実務があるのは、主に陸上自衛隊の次の部隊です。
・武器科
・施設科
・機甲科
航空自衛隊や海上自衛隊にも特殊車輌が存在する以上、整備の仕事は存在しますが、機会は減ります。
整備士になることを目的に陸上自衛隊に入隊するとして、希望通り武器科に進めたとします。
そこまでうまく行ったとして、車輌の整備の仕事に必ず就けるという補償はありません。
整備の仕事に就けたとしても、車輌整備以外にも無数に仕事はあるわけですから、当然です。
希望を出す努力は求められるにせよ、基本、職業自衛官としてなんの仕事に従事するかは運次第です。
「自衛隊で整備士になる」と決めたとして、実現できる可能性のほうが少ないといえます。
とはいえ、「メカニック整備」を目標にするのなら、だいぶ可能性は大きくなるでしょう。
整備士資格が得られるかどうかは別にして、どんな仕事であっても、将来の実務経験に役立つものではあります。
次にテーマを変えて、逆の方向を見てみます。
すでに自動車整備士として働いている人や、専門学校を出て資格を得た人が、資格を活かして自衛隊に入隊できるかどうかです。
結論から先にいうと、こうです。
・自動車整備士の専門職として自衛隊に入る道はあるが、狭き門
・資格を持っている人が一般の枠で自衛隊に入隊するのは自由 ・自動車整備士が、予備自衛官になる道がある
自衛隊の人員の主力をなすのは、年齢の若い人です。
定年も一般の職業より低く、そして任期制で働くため、若いうちだけ自衛官を務める人も人員構成上多くなっています。
一般的には自衛隊を除隊してからの第二の人生のほうが長いのです。先に見たとおり、自動車整備士の仕事に就く人もいます。
いっぽうで自衛隊にも社会人採用の枠が存在し、資格や実務経験を活かして自衛隊に入隊するという、多数派と逆の流れも存在します。
すでに自動車整備士として働いている人が、社会人枠の専門職として自衛隊に入隊る道は一応あります。
ただし、常に募集があるわけではありません。
自衛隊が本質的に年齢の低い人の組織だということも考え合わせると、非常に狭き門であることは認識しておきましょう。 ただし国の防衛に携わりたいという強い意思を持った人については、予備自衛官の道が開かれています。こちらは後述します。
せっかく入隊するのなら、すでに取得した自動車整備士資格を活かせれば、そう思うのは当然です。
ただ決して簡単な道のりではありません。
それでも入隊の意思が強いなら、一般の枠で入隊すればいいでしょう。
自動車整備の専門学校で資格を得てから、若いうち(33歳未満)に入隊するとスムーズです。
整備士の資格が所属部隊で生きるかどうかは不明ですが、資格というものはさまざまな分野で活きるものです。
これは陸自だけでなく、航空自衛隊や海上自衛隊でも変わりません。
すでに資格を得ている以上、除隊後の心配がひとつ減るのは大きなメリットと考えられます。
予備自衛官をご存知でしょうか。
通常は一般の仕事についていて、戦時や災害時など非常時に自衛官を助けて働く職務です。
名誉職ではなく、年間5日以上の訓練も義務付けられている、非常勤の公務員です。
予備自衛官には次の手当が支給されています。
・月4,000円の予備自衛官手当
・日給8,100円の訓練招集手当
なお即応予備自衛官という、月30日以上訓練に従事する、現役の自衛官に準じた区分もあります。
予備自衛官には一般職と技能職とがあります。
一般職は34歳までですが、技能職の採用年齢は53歳から55歳と高くなっています。
さまざまな分野で技能職が募集されていますが、「整備」も対象となっています。
2級以上の自動車整備士資格で、応募資格があります。
仕事をやめる必要はありません。働きながら防衛に従事できるわけです。
日頃は意識しないかもしれませんが、自衛隊において自動車整備は必要不可欠のものです。
自動車整備の仕事を自衛官に直結させるのは難しいかもしれませんが、予備自衛官など関わる方法はあります。
整備士は国の基幹を支える仕事だということがよくわかります。
自衛隊に入らないまでも、誇りを持って整備の仕事をしてください。
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