自動車整備士は一生モノの仕事です。
もっとも、ずっと同じ職場で働き続けると決まっているわけではありません。転職の機会も巡ってきます。
いい条件を求めてキャリアップを図る、あるいは念願だったカーディーラー整備士になりたいなど、新しい職場の面接を受ける機会もやってきます。
面接において、志望動機をどうアピールするかは非常に重要です。
志望動機をアピールする機会は、転職時だけではありません。
新卒で入社試験を受ける際、あるいはまったくの未経験で見習工を志望する際など、アピールの機会が必ずあります。
志望動機をきちんと説明できるかどうかで、その後の運命が変わるかもしれません。
誰にとっても重要な、整備士の志望動機について掘り下げてみましょう。
履歴書に書く内容も大事ですし、面接の際、自分の口から説明する内容はもっと重要です。
志望動機が就職の際にどれだけ重要か、その点から先に確認しておききましょう。
整備士だけではなく、基本的にはすべての職種について当てはまる内容です。
<h3>一緒に働きたいと思ってもらわないと採用されない</h3>
採用担当者の意向や見解は、採用の決定に大きな役割を果たします。
実際のところは、権限をあまり持っていない人も面接をします。ですがその場合でも、担当者が就職希望者についてどのような感想を持ったかは、なんらかの形で必ず反映されます。
採用担当者が一緒に働きたいと思った人なら、採用の可能性は大きく上がります。
そして採用担当者を動かすものは、なによりも誠実さです。
ウソだらけであったり、その人なりの思いのなにもないカラッポの志望動機は面接官の心を動かしませんし、逆効果になります。
<h3>人手不足の業種であっても志望動機は大事</h3>
自動車整備業界では、慢性的な人手不足が続いています。
人手不足だから就職しやすいと思ったとして、数字の問題としてはそれは正しいものです。ですが、人手不足を直接の理由に、あなたが選んでもらえるとは限りません。
できるだけいい条件で働きたい人は、業種職種を問わず志望動機にきちんと向かい合わなければなりません。
腕があったとしても、せっかくのその腕を発揮する機会を与えてもらえないことも、
ごく普通にあるのです。
面接の機会では、自分自身の考えの中にもともとある志望動機を、ふくらませてアピールすることが大事です。
難しいと思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
誰にでも必ず、整備士になりたいと思った瞬間があるのです。家族の影響、知人の影響等きっかけはいろいろでしょうが、整備士になりたいと思ったきっかけ、整備士を続けたいと思ったきっかけを思い起こしてみましょう。
結構漠然と整備士を続けてしまった人なら、「かつては漠然と仕事に取り組んでいたが、あるとき一生続けたいと思ったきっかけがあった」ことを語りましょう。
先輩との出会い、顧客との出会い等、間違いなくあります。
志望動機は一から作るものではありません。それまでの社会人生活の積み重ねから生まれます。
整備士になろうと思う、あるいは整備士として転職しようと思うまでの筋道だったストーリーは誰にでもあります。事実を膨らませて、矛盾しない説明を作り上げましょう。
志望動機から、筋道が読み取れないと就職では苦戦します。応募する自分自身では理解していても、他人に伝えられないと意味がありません。
そして、きちんと筋道を伝えられる能力があると、円滑に仕事を進めていける人だという評価につながります。
わかりやすい説明ができる人なら、適切なチームワークが構築できることまで想像してもらえます。
志望動機に自然と、周りとの協力関係がうかがえればベストです。
志望動機をどう書いて、そして面接でどう説明していいかわからない人のために、相手に期待される内容をわかりやすく分割して整理します。
・整備士を志すきっかけ
・整備士に向いていると考える理由(長所)
・周りとの協力体制
・今後の課題(現状不足しているが、獲得したいスキル)
・貢献できると考える理由
最低限この程度は押さえておきたいものです。
もちろん、これだけではありません。自分自身で考えるアピールポイントをさらに付け加えて構いません。
整備工場でなくカーディーラー志望であれば、「なぜそのディーラー」「なぜそのメーカー系列」を志すのか、その理由も盛り込んでおけばよりいいでしょう。
前職の退職理由も必ず語る必要があります。ただ、本当にいい職場だったら辞めないことは、相手も理解しています。
詳細に説明して墓穴を掘るよりも、新しい職場への期待を前向きに語る分量の多いほうがいいでしょう。
分割した要素を個別に見ていきます。
子供の頃からクルマが好きで、メカニックが好きだというのは整備士の志望動機としては悪いものではありません。ただ、ほとんどの人がそうなので、差はつきません。
専門学校や、実務で「今まで以上に整備士でありたいと思った」経験は誰にでもあるはずです。
整備士を続けている、あるいは他の業界から戻りたいと思う理由を掘り下げていきましょう。
顧客との関係についてのエピソードがあると、なおいいでしょう。
整備士の適性についても「手先が器用」「コツコツやる」程度では弱いでしょう。
これからの自動車整備士においては、コンサルティング能力が重要になります。
人の話を聞いて理解し、解決の方法を提示する能力(経験)がアピールできると有利です。
現状自信のない人は、「今後の課題」にこれを置くといいでしょう。
一匹狼の職人肌がもてはやされる時代ではありません。周囲と円滑に、協力して仕事をし、よりよいものを生み出す能力をアピールしましょう。
そのような経験がなくても、架空のストーリーを作るとボロが出ますので、よくありません。
「あのとき、もう少し周りといい協力関係を作れれば、もっといい成果が出ていた」ことを語りましょう。
協力関係が最重要だという事実に気づいていることをアピールできます。
至らなかった過去は誰にでもあるので、そちらを語りすぎる必要はありません。
ただ、課題点を見出し、次につなげる意思はアピール点になります。
それから整備士の場合、2級までの資格を持つことが必要になってくるので、現在資格がない人は、資格獲得の意思と予定とをきちんと見せましょう。
自動車整備士としての腕は当然必要ですが、技術のアピールを強くしても、評価する側も同業者ですからそれほど伝わりません。
技術は最低限のものと考えて、組織内でどう役立てるかを考えるほうが重要です。
右も左もわからない見習工から、整備工場の責任者として呼ばれるレベルの人まで、これは共通しています。
自分の与えられた仕事を理解し、全力を発揮できることを伝えましょう。
自動車整備士における志望動機の作り方について見てきました。
求められる内容を分割して取り組むと、比較的作りやすくなります。
「専門学校時代も技術は同期で一番でした」というだけではアピールにはなりません。チームを活用できるかどうかという組織の中での視点を盛り込んで、せっかくの技術を評価してもらいましょう。