入社した企業に何を求めるかは人によって違います。
高収入を求める人、将来の安定性を求める人、プライベートの充実性を求める人、仕事のやりがいを求める人等、人によって仕事に何を求めるかは様々です。
現状の仕事が自分の求める条件と異なる場合、自分の求める条件の職場に転職することも珍しくない時代になり、仕事で得たノウハウを活かして独立して起業をする人も増えてきました。
自動車整備工場で働く自動車整備士も自らの希望を叶えるために独立して新たに自動車整備工場を開業する人がいます。
自動車整備工場を開業すれば自分の思うように営業をすることは可能ですが、それに伴い数多くのデメリットも発生してしまいます。
今回は自動車整備工場を開業する方法やメリット・デメリット等を解説していきます。
自動車整備工場を開業するのに資格は必要ありません。脱サラをしてラーメン屋さんや蕎麦屋さんを開業するように誰でも自動車整備工場を開業することができます。
脱サラをしてラーメン屋さんや蕎麦屋さんを開業、小さいお店だけれども1人で切り盛りをして頑張っているなんて話を耳にすることがあります。
しかし、ラーメン屋さんや蕎麦屋さんとは違い自動車整備工場は1人では開業をして営業をすることができません。
自動車整備工場として運営を行うのには地方運輸局長より認証整備工場または指定整備工場の承認を得なければなりません。
自動車整備工場を開業する場合は認証整備工場の承認を先に取得することになります。
2020年4月より電気制御装置の整備に関する特定整備法が施行された為、自動車整備工場内で電子制御装置の整備を行うか行わないかによって認証整備工場の申請の条件が異なりますが、どちらの認証工場も承認を取得をするのに従業員が2名以上必要となります。
特定整備法が施行される以前の認証整備工場は自動車の走る・曲がる・止まるに関わる重要な保安部位の分解整備を行い運営を行ってきました。
特定整備法が施行された後、分解整備は特定整備と名称を変え、認証整備工場では特定整備法施行前の分解整備の部分のみ継続して作業をすることができるようなり、次世代カー等に使用されている電子制御装置の分解作業が行えなくなりました。
特定整備認証工場、認証工場共に2名以上の従業員が必要となり、その内の4分の1以上が自動車整備士資格を保有する工員でなければ認証の承認は行われません。
更に、特定整備認証工場では2級自動車整備士資格を保有している者で、特定整備主任者講習を受けて資格を取得した特定整備主任者が在籍している必要があります。認証工場は2級自動車整備士資格を保有している者を整備主任者に任命することで認証の承認を取得することができます。
これから自動車整備工場を開業して事業として成り立たせるには次世代カーに対する知識や技術、設備が必須となります。
次世代カーはあらゆる部位で電子制御装置を使用しています。これから新たに自動車整備工場を開業する場合は、次世代カーの点検・整備が行える特定整備認証工場の承認を得なければ円滑な運営を行うことができません。
指定整備工場と特定整備認証工場・認証整備工場の大きな違いは車検整備の完成検査を自社の自動車整備工場で行えるか行えないかです。
特定整備認証工場や認証整備工場では車検整備を行った後、最寄りの地方運輸支局に車両を持ち込んで検査をしなければ車検証の更新ができません。
指定整備工場では自動車検査員資格を取得していて、尚且つ自動車整備工場より自動車検査員に任命された者が車検の完成検査を行うことで、車両の持ち込みを省略して書類のみを地方運輸支局に提出することで車検証の更新ができます。
特定整備認証工場・認証整備工場共に承認を得るのに2人以上の従業員が必要となりますが、指定整備工場では4人以上の従業員が必要となります。ただし、車両総重量8t以上、最大積載量5t以上及び乗車定員30名以上の大型車を対象とした指定整備工場の承認を受けるには5人以上の従業員が必要となります。
指定整備工場では従業員の4分の1以上が自動車整備士資格を取得している工員であることと、自動車検査員資格を取得している自動車整備士を1人以上検査員として任命する必要があります。
自動車検査員資格は整備主任者の実務経験を1年以上積むことで受験資格が与えられるので、指定整備工場の承認を得る場合には経験力のある自動車整備士が必要となります。
指定整備工場、特殊整備認証工場、認証整備工場共に車両整備作業場・点検作業場・部品整備作業場・車両置場と点検・整備に関する機器工具の設置が必須となります。
特殊整備認証工場は電気制御装置点検整備作業場、電子制御装置の診断ツール、水準器、各電気制御装置の点検要領書の設置義務が追加されています。
指定整備工場は追加で車検の完成検査場の設置が義務付けられており、完成検査に必要な検査機器の設置も義務付けられています。
指定整備工場、特定整備認証工場、認証整備工場のいずれも開業する際には、運輸支局の職員が工場内の設備・機器工具・人員の確認等を厳しく検査します。また、事業主や検査員は自動車整備事業や整備に関する法律について口頭質問をされ、それに答えられなければ承認を受けることができません。
●電動化と新技術の台頭
自動車産業は電動化と自動運転技術の開発に向けて急速な変化を遂げています。これに伴い、従来のエンジン整備に加えて、電気自動車(EV)やハイブリッド車の整備が求められるようになる可能性があります。整備工場では、新しい技術や設備に追随し、修理やメンテナンスのスキルを習得する必要があるでしょう。
●デジタル化と顧客体験
デジタルテクノロジーは、顧客体験の向上に重要な役割を果たします。予約システムや顧客管理、修理状況のリアルタイムな追跡など、顧客との接点を強化するためのデジタルツールが重要になります。オンラインでの予約や支払い、修理状況の透明性などが顧客にとって重視される要素となるでしょう。
●持続可能性と環境への配慮
自動車業界全体が持続可能性に向けて取り組んでおり、整備工場も例外ではありません。再利用可能な部品の活用やリサイクル、廃棄物の管理など、環境への配慮が求められます。また、EVなどのエコカーの台頭に伴い、関連するサービスや環境対応の整備ニーズが増加する可能性があります。
●データ活用と予防メンテナンス
IoT(モノのインターネット)技術を活用した車両のデータ収集や分析が進展しています。整備工場では、車両から得られるデータを活用し、予防メンテナンスや故障の事前検知、効率的な修理手法の開発に取り組むことが求められます。
これらのトレンドは、自動車整備工場にとって新たなビジネスチャンスを提供する一方で、適応と技術的な進化に対する柔軟性が要求されます。業界のこれらの動向を把握し、革新的なアプローチやサービスの提供を通じて、競争力を維持することが重要となります。
どんな職業のお店を開業するのにもメリット・デメリットはありますが、現状で自動車整備工場を開業するのにはデメリットの方が多く、軽い気持ちで自動車整備工場を開業して運営をしていくことはできません。
自動車整備工場の1番のデメリットは資金面になります。資金面がデメリットとなると運営の全てに影響を与えるので自動車整備工場の開業には多くのデメリットが発生してしまいます。
自動車整備工場を開業するのに自動車整備工場の中古物件の購入であれば約500万円程度、新規に自動車整備工場を建設するには約5000万円程度かかります。
一般的に自動車整備料金の利益率は1割〜2割程度になっていて、車検整備1台につき1万円程度の利益にしかなりません。そこから光熱費や機器工具のメンテナンス代、人件費等を引くと利益はほとんど出ません。
自動車整備士が独立をして自動車整備工場を開業した場合、家族等に経理や受付係として手伝ってもらい自身が工員になることで、特定整備認証工場・認証整備工場の規定の人数を満たせるので運営をしていくことができます。
しかし、自動車整備士1人では整備できる台数に限界があり、車検整備であれば1日に2〜3台程度しかできません。
更に、地方運輸支局は各都道府県に数ヶ所しかなく、地方運輸支局から距離のある市町村で自動車整備工場を開業してしまうと、車検の持ち込み検査に行くために往復で1時間以上かかってしまい1日の整備作業のできる台数がかなり減ってしまいます。
1日の整備台数を増やす為には自動車整備士の人員を増やさなければいけないのですが、自動車整備士不足が問題化している現在、新たに自動車整備士を雇うのは難しく、たとえ自動車整備士を雇えたとしても利益率の低い自動車整備工場では人件費を算出するのが難しくなってしまいます。
新車販売や中古車販売店に併設された自動車整備工場では、自動車を購入されたお客様がそのまま自動車整備工場の新規のお客様になってくれることが多々あります。
しかし、新規に自動車整備工場だけで開業をした場合、集客は親戚、友人、知人を頼らなければなりません。
親戚、友人、知人に紹介された新規のお客様には紹介されて自動車を入庫させているんだから優遇されて当たり前と考えている人も多く、金額面や融通面といった営業努力が必要となります。
自動車整備工場はある程度の集客ができるようになり、経営が安定するまでに数年以上かかることも珍しくありません。
自動車整備工場で利益をあげるには必要以上の仕事量を確保しなければなりません。
修理納期を守る為に残業が続くことも多く、常に時間に追われるようになります。
また、現在は携帯電話でお客様とのやり取りを行うことも多く、営業時間外であっても事故を起こしてしまったお客様やトラブルにあったお客様の対応をしなければなりません。
もちろん、営業時間外だと断ることも可能ですが、その後の集客が非常に厳しくなります。
自動車整備士に限らず会社員として企業に勤めていると、自分の考え方や仕事への熱量が会社の考え方や熱量と違い、やりがいを失ってしまうことが多々あります。
独立して自動車整備工場を開業するメリットは、自分の考え方や熱量がそのまま経営に活かせることです。
ただし、自動車整備工場の利益は前述したように利益率が低いので、自分ペースでゆっくり仕事をしたいという人は独立して自動車整備工場を開業することには向いていません。
自動車整備工場の経営は自分の力量で大きく変わります。向上心・やる気のある人でなければ自動車整備工場を運営していくことはできません。
やりがいをを求めて仕事をして仕事をした分の利益を得られる。それが自動車整備工場を開業する最大のメリットです。
●交渉と提言について
自動車整備士の給与や労働条件を改善するため、業界団体は企業や政府に対して提言や交渉を行っています。具体的には、最低賃金の引き上げや労働時間の短縮などの改善策が議論されています。
●福利厚生の充実について
健康保険、年金制度、休暇制度の充実など、福利厚生の改善も重要な取り組みの一環です。
●専門学校との連携について
自動車整備士の教育機関と連携し、カリキュラムの充実や最新技術の導入を図っています。例えば、新しい電動車や自動運転技術に対応した研修プログラムの開発などがあります。
●資格取得支援について
業界団体は、資格取得のための支援制度や奨学金の提供を行い、若い世代の自動車整備士を育成しています。
自動車整備工場を開業する際、フランチャイズとして開業するか、独立経営を選ぶかは重要な選択です。両者にはそれぞれ異なるメリットとデメリットがあるため、開業希望者にとって自分の目的や状況に合った選択をすることが重要です。以下で、フランチャイズでのケースのメリット・デメリットをまとめました。
フランチャイズの最大のメリットは、既に確立されたブランド力です。消費者は知名度のあるブランドを信頼する傾向が強く、開業当初から一定の集客効果が期待できます。
フランチャイズ本部は、成功しているビジネスモデルを提供します。経営ノウハウ、運営マニュアル、マーケティング戦略、価格設定などが事前に整備されており、初めて経営を行う人でもスムーズに事業を開始できるサポートが受けられます。
本部からの研修やサポートが充実しています。新規従業員の研修や、設備の導入、トラブル発生時の対応など、本部のバックアップを受けられるため、経営リスクが軽減されます。
フランチャイズによる大量購入や契約に基づき、設備や部品の仕入れコストが安くなる場合があります。これは独立経営に比べ、経費削減に大きなメリットを持ちます。
フランチャイズの契約料やロイヤルティ(売上の一部を本部に支払う)がかかります。初期費用としてフランチャイズ加盟料や設備導入費用が必要なため、独立経営に比べて初期投資が高くなることがあります。
フランチャイズでは本部の指示に従う必要があります。経営方針やサービス内容、価格設定など、独自の施策を打つ自由度が制限されるため、クリエイティブな経営や地域特化型のサービス提供が難しいこともあります。
フランチャイズでは本部にロイヤルティ(通常は売上の一定割合)を支払う必要があります。これは収益に直接影響を与え、独立経営と比べると利益率が低くなる可能性があります。
フランチャイズ全体で問題が発生した場合、自分の経営に直接関与していない部分であっても、同じブランドを使用している以上、イメージダウンのリスクを背負うことになります。
今回は自動車整備工場の開業について説明させていただきましたが、実は今回の内容は重要な部分の極々一部をまとめたものです。
実際に自動車整備工場を開業するとなると膨大な量の法律を覚え、それに沿って開業準備を進めなければなりません。
カーディーラー等では本部に法律のスペシャリストを配置しており、新規店舗をオープンする際にはそのスペシャリストを中心に開業準備を進めています。
自動車整備士だからといって独立して自動車整備工場を開業するのは困難を極め、他業者だった人が自動車整備工場の開業をするのはほぼ不可能に近いです。
自動車が好きだから、開業資金があるから、いつかは社長になりたかった等、自動車整備工場を開業したい気持ちはわかります。
しかし、自動車整備士は自動車のお医者さんです。お客様の命を守る職業です。軽い気持ちで自動車整備工場を開業することはできません。自動車整備工場を開業するのには明確な目標や覚悟が必要です。それだけは念頭において下さい。
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