「子どもの将来は、どんな仕事に就いてほしいか」——そんな親の本音は、どこにあるのでしょうか。関東工業自動車大学校では2026年、中高生を持つ保護者124名を対象に、子どもに就いてほしい職業や職業観に関するアンケート調査を実施しました。進路選択で親が重視することから、自動車整備士へのイメージ、EVや自動運転の普及による仕事の見通しまで、10問にわたる質問に回答いただきました。公務員や医療系だけでなく「専門技術職」への関心が根強いこと、「手に職をつけさせたい」と考える保護者が全体の9割近くにのぼることなど、現代の保護者が子どもの進路をどんな視点で考えているのかが浮き彫りになりました。

Q1では、お子さまに就いてほしい職業のジャンルを複数選択で聞きました。最多は「公務員・行政職」で50名(40.3%)。安定した雇用・待遇への根強い信頼が反映されています。2位は「特にこだわらない」が41名(33.1%)と高く、職業の種類よりも本人がやりがいを持って働けるかどうかを重視する保護者が多い実態がわかります。
注目したいのが「専門技術職(整備士・建築士・電気工事士など)」が36名(29%)で3位に入っている点です。「IT・エンジニア・プログラマー」の31名(25%)を上回っており、デジタル系と並んで「手に職をつけた専門職」への期待が高い水準にあることが浮かび上がりました。「医療・福祉・介護」(22名・17.7%)、「経営・営業・マーケティング」(17名・13.7%)、「金融・会計」(15名・12.1%)と続き、「教育・保育」(12名・9.7%)、「クリエイター・デザイナー」(11名・8.9%)はやや少数にとどまりました。
公務員への安定志向は依然として根強いものの、「何かひとつ専門的なスキルを持ってほしい」という親の期待が、専門技術職への高い関心につながっていると考えられます。「特にこだわらない」と答えた層が多いことも含め、子どもの適性と意欲を最優先したいという保護者の姿勢が読み取れます。

Q2では、お子さまの職業選択で最も重視することを1つ選んでもらいました。「やりがい・好きな仕事かどうか」が55名(44.4%)と圧倒的な1位で、2位の「雇用の安定性」(36名・29%)を大きく引き離しています。かつては「まず安定した仕事に就いてほしい」という意識が親世代の主流でしたが、現代の保護者は子どもの仕事の充実感を最優先にしていることが数字で確認できました。
3位は「働きやすさ(残業・休日など)」の11名(8.9%)で、労働環境への関心も一定数あります。「将来もなくならない仕事かどうか」(8名・6.5%)、「収入の高さ」(6名・4.8%)、「資格・技術が身につくかどうか」(6名・4.8%)はいずれも少数にとどまりました。「社会的な信頼・知名度」を選んだのはわずか2名(1.6%)で、会社の名前や肩書きよりも実質的な働き方を重視する意識が強まっていると言えます。
やりがい重視の背景には、親世代自身の働き方の変化も影響していると考えられます。「安定しているから」「有名だから」という理由だけで選んだ職業では長く続かないという実感が、子どもへの希望にも反映されているのでしょう。特定の職業より「本人が心から取り組める仕事」を願う保護者の姿が、この結果から鮮明に見えてきます。

Q3では、「手に職をつける」ことをお子さまにすすめたいかを聞きました。「強くすすめたい」(36名・29%)と「どちらかといえばすすめたい」(73名・58.9%)を合わせると109名・87.9%にのぼりました。「あまりすすめたくない」は1名のみで、「すすめたくない」は0名という結果です。
「どちらともいえない」と答えた14名(11.3%)を含めても、積極的に反対する保護者はほぼ皆無といえる結果です。資格や専門スキルを持つことへの期待が、保護者の間でいかに広く共有されているかが数字に表れています。AIの台頭や産業構造の変化が議論されるなかでも、「技術や資格は裏切らない」という意識は親世代に根強く残っています。
また、Q1で「特にこだわらない」と答えた保護者が33%いたにもかかわらず、「手に職をつけてほしい」という思いは9割近くに達しているのは興味深い点です。特定の職種は決めていなくても、「何か専門的な力を持ってほしい」という方向性は共通して持っている保護者が多いと言えます。

Q4「AIや自動化が進む中で、資格・技術職は将来も安定しているか」という問いに対し、「強くそう思う」(17名・13.7%)と「どちらかといえばそう思う」(67名・54%)を合わせて84名・67.7%が肯定的に答えました。「どちらともいえない」は29名(23.4%)、否定的な回答は「あまりそう思わない」(10名・8.1%)と「そう思わない」(1名・0.8%)にとどまっています。
AIによって様々な職業が自動化されるという議論が活発になるなか、それでも多くの保護者は「現場で手を動かす技術職は残る」という感覚を持っていることが確認できました。完全な自動化が難しいとされる専門技術作業、とりわけ実際の現場対応が必要な職業への信頼が、この数字に反映されていると考えられます。
一方で、4人に1人が「どちらともいえない」と答えており、将来への一定の不確かさも存在します。それでも否定派が1割に満たないことを考えると、技術・資格職への信頼は揺るぎなく根付いていると言えるでしょう。技術が進化しても「人の手が必要な仕事は残る」という保護者の現実的な判断が、数字の背景にあります。

Q5では「自動車整備士」という職業に対するイメージを複数回答で聞きました。最多は「体力的にきつそう」で81名(65.3%)。重労働というイメージは依然として根強く、進路選択の際のネガティブな先入観として機能している実態が見えます。
ただし、次点の「技術・資格が身につく」が73名(58.9%)で、「社会に必要な仕事だと思う」も55名(44.4%)と高い数値を示しています。きつい仕事というイメージと同時に、専門性や社会的な意義は正しく認識されており、両面の評価が共存していることが読み取れます。
「収入が低そう」は27名(21.8%)で約2割が抱くイメージです。「安定している」と答えたのは14名(11.3%)にとどまり、安定性のイメージはまだ十分に浸透していません。一方で「EVや自動化で将来なくなりそう」はわずか8名(6.5%)で、技術進化によって仕事が失われるという不安は保護者の間では少数派です。「女性でも活躍できそう」も3名(2.4%)と少なく、女性活躍のイメージ浸透が今後の発信課題として浮かび上がります。

Q6では、進路として大学進学と専門学校進学のどちらを希望するかを聞きました。「どちらでもよい(本人の意思を尊重)」が66名(53.2%)と過半数を占めました。「大学進学を希望する」は46名(37.1%)、「専門学校進学を希望する」は9名(7.3%)にとどまっています。
大学進学を望む保護者はまだ4割近くいますが、過半数が「本人の選択を尊重したい」と答えている点は注目すべき変化です。かつては「できれば4年制大学へ」という意識が多数派だった時代と比べると、専門性を身につける進路としての専門学校が、保護者の認識の中でも選択肢として位置づけられてきていると言えます。
ただし、「専門学校進学を希望する」と積極的に答えた保護者は7.3%にとどまっており、専門学校が親主体で選ばれる進路としての浸透余地はまだ大きいと言えます。「わからない」と答えた3名(2.4%)も含め、進路の方向性を強く決めつける保護者の姿勢は薄れつつあることは確かです。

Q7では、10年前と比べて「手に職・技術職」に対するイメージが変わったかを聞きました。「変わらない」が最多の61名(49.2%)でした。一方で「少しよくなった」(43名・34.7%)と「かなりよくなった」(15名・12.1%)を合わせると58名・46.8%が「よくなった」と感じています。
「少し悪くなった」は5名(4%)、「かなり悪くなった」は0名で、ネガティブな方向への変化を感じている保護者はほとんどいません。職人仕事や技術職を取り上げるメディアやコンテンツの増加、技術者の待遇改善に向けた社会的な議論の高まりなどが、じわじわとイメージ改善につながっていると考えられます。
ただし「変わらない」が約半数を占めており、イメージが劇的に改善されたわけではありません。肯定的な変化を感じている保護者が約47%いる一方で、まだ変化を実感できていない層も多く、継続的な情報発信の重要性を示しています。技術職への社会的な評価を高めるためには、実際に現場で働く人の姿をより具体的に発信し続けることが求められます。

Q8「お子さまが自動車整備士になりたいと言ったら、どう思いますか」という問いには、「応援する」(39名・31.5%)と「どちらかといえば応援する」(50名・40.3%)を合わせて89名・71.8%が肯定的な反応を示しました。「どちらかといえば反対する」(8名・6.5%)と「反対する」(2名・1.6%)を合わせた反対派は8.1%にとどまります。
Q5では「体力的にきつそう」というイメージを65%が持っていたにもかかわらず、実際に子どもが希望するなら7割以上が背中を押すという結果は重要です。職業のイメージと、実際の進路選択へのスタンスには大きなギャップがあることがわかります。「きつい仕事だとは思うけれど、本人がやりたいなら応援する」という保護者の姿勢が、数字の背景にあると言えるでしょう。
「どちらともいえない」は25名(20.2%)で、頭ごなしに反対はしないが手放しで賛成もできない保護者が2割います。この層に向けては、整備士という職業の具体的なキャリアや待遇、やりがいの実態を伝えることが、背中を押す情報として機能すると考えられます。

Q9「EVや自動運転の普及により、自動車整備士の仕事は今後どうなると思いますか」に対し、「変わらないと思う」が最多の66名(53.2%)でした。「さらに需要が増えると思う」(13名・10.5%)を合わせると79名・63.7%が少なくともマイナスの見通しを持っていない結果です。
「少し減ると思う」は31名(25%)、「大きく減ると思う」はわずか2名(1.6%)で、急激な需要消滅を予測する保護者は極めて少数にとどまりました。「わからない」は12名(9.7%)でした。EVシフトが進む中でも、自動車の点検・修理という根本的な役割への需要は続くという感覚が、保護者の間では主流となっています。
Q5で「EVや自動化で将来なくなりそう」と答えたのはわずか6.5%(8名)だったことと合わせて、「EV普及=整備士不要」という誤解は保護者の間では広まっていないことが確認できました。EVは動力系が変わるだけで車体・安全装置・ブレーキなど多くの整備項目は残り、むしろ新技術に対応できる整備士の需要が高まるという実態が、保護者にも伝わっていると言えます。

Q10では、職業選択における保護者の関与度について聞きました。「本人が決め、保護者はサポートに徹するべき」が78名(62.9%)と最多で、「保護者の意見を参考に本人が決めるべき」が40名(32.3%)と続きます。「保護者が主導して決めるべき」はわずか1名(0.8%)、「完全に本人に任せるべき」も5名(4%)にとどまりました。
保護者の大多数が「本人の意思を主体としながら、関わり方はサポート」というスタンスを取っています。Q2でやりがいを最重視した傾向とも一致しており、「自分で選んだ仕事でいきいき働いてほしい」という親心が数字の背景にあります。「保護者が主導して決める」というスタンスを選んだのが1名にとどまる点は、昭和・平成の親世代と比べると際立った変化と言えます。
Q6で本人の意思を尊重したいという回答が53%を超えたことと合わせて見ると、進路全体にわたって「本人が決める、親は見守る」という価値観が主流になっていることがよくわかります。一方で32%が「保護者の意見を参考に本人が決める」と答えており、関わりをゼロにするわけではなく、「情報を提供しながら本人の判断を後押しする」役割を担いたいと考えている保護者も確実に存在します。
今回の調査では、中高生の保護者124名のリアルな職業観が浮かび上がりました。全体を通じて見えてくるのは、3つの共通したテーマです。
まず、「手に職をつけさせたい」という意識が9割近くにのぼる一方で、「どの職業に就くかは本人が決めてほしい」という姿勢も強く共存しています。親が進路の方向性を決めつけるのではなく、専門技術職というキャリアの可能性を示しながらも、最終的な判断は子どもに委ねたいという価値観が広がっています。
次に、自動車整備士については「体力的にきつそう」というイメージが根強い一方で、「技術・資格が身につく」「社会に必要な仕事」という評価も高く、EVや自動化で仕事がなくなるという不安は少数にとどまっています。子どもが整備士を希望したら7割以上が応援すると答えており、職業イメージと実際の受け入れ度合いの間には想像以上のギャップがあることも明らかになりました。
そして、保護者が職業選択で最も重視するのは「やりがい」であり、収入や社会的な知名度よりも、子どもが自分の意思で選んだ仕事で充実した生活を送ることを願っていることが全体の回答から一貫して見えてきました。自動車整備士というキャリアが保護者にどう映っているかを把握することは、進路情報の提供においても重要な視点です。