自動車整備士という職業に対するイメージは、どのようなものでしょうか。
整備士はクルマと人の安全を守る、世の中になくてはならない職業です。それは誰でも同意するところでしょう。
ただ、社会での必要性が高いからといって、比例して就労意欲が高くなるとは限りません。
整備士という仕事についての、直接的なイメージを問いかけてみます。
整備士について「かっこいい」「かっこ悪い」の二択だったら、どちらだと感じますか? そして、世間の人はどちらのイメージを持っていると思いますか?
自動車整備士が「かっこいい職業」であること、そして確実にそうなっていくであろうことを見ていきましょう。
どんな職業も、製造業やサービス業などの違いを問わず、重要でないものなどありません。
とはいえ、世間のイメージのよしあしはあり、またそれと関連し、人気のあるなしの違いはあります。
自動車整備士は、クルマ好き、メカニック好きの人には昔から人気がある職種ですが、世間的なイメージはというと、次のようなものだったかもしれません。
そして現在もそう思っている人が多いかもしれません。
・いつも油まみれ、制服も黒く汚れている
・油でいつも手や爪の間が黒く汚れている
・重いものを常に持ち上げる重労働で、年齢を重ねるごとにキツくなる
・整備の際不自然な体勢をとらなければならず、腰を痛めるなど体を壊しやすい
・真夏も真冬も、冷暖房のない環境で作業をする
・夏は大量に汗をかき、冬は手がひび割れる
・きつい、汚い、危険の3K
整備士は技術者であり、クルマの専門家です。
ですがその側面よりも、まずは現場作業のイメージが世間には強いかもしれません。現場作業は確かにそのとおりですが、現場には3Kのイメージがつきまといます。
マイナスのイメージが払拭されない限りは、誇り高い整備士業務についても、なかなか「かっこいい」と感じてはもらえないのではないでしょうか。
世間のイメージが、完全に払拭されたとまではいえないでしょう。むしろ働く側にも「油にまみれてこそ整備士」と考える人が多数います。
現場で働く誇りこそ、真にかっこいいものですが、ここで問題にしているかっこよさとは少々異なります。
ですが、環境は着実に変わってきています。
整備士が世間から見ても憧れの職業になるために必要な改善点を、次に見ていきましょう。
自動車整備士は人と社会の安全を預かる職業です。
政府も、国の基幹産業と捉えています。
この点で未来が明るく映るいっぽう、差し迫った問題として、整備士の数の不足が深刻になってきています。
そんな状態で、整備士のイメージアップなど図れるものでしょうか。
明るい要素が増えているので、確認していきましょう。
整備士減少の背景には、若者の志望者が減っていることがあります。
必要性の高さと裏腹な整備士の減少は、志望者にとってはむしろチャンスでもあります。ですがイメージが悪いからこそ志望者が減っているのであれば、そのマイナスイメージ自体気になるのも当然のことでしょう。
若者を捉えるためには給与休日等待遇の向上が重要ですが、それだけでは足りず、職種に対するイメージをよくしていかなければなりません。
昔ながらの環境の整備工場もまだまだ多数あるものの、設備投資のできない就労環境であれば、当然人手不足に悩まされています。
ですがいっぽうで最近は、カーディーラーなど、快適な就労環境に変わりつつある実態も見られます。
古いままの民間整備工場は確かに多く見られます。
ですが、自動車整備の専門学校を卒業した人の多くが就職するカーディーラーの整備業務については、徐々にではありますが、以前より快適に変わってきています。
機械工具も充実し、重いパーツを整備し自ら持ち上げる必要性も少なくなってきています。
なによりも、女性もできる仕事でないと、これから先、職業としては成り立たなくなります。
設備投資しているディーラー整備工場においては、無理な体勢での作業というものも減りつつあります。
3Kの要素がある職種でも、テクノロジーの発達で解消できることも多いのです。
排気ガスが出る以上、整備工場は半開放のところが多く、夏冬の過酷な時季をどう乗り切るかが整備士の問題です。
夏もどんどん暑くなっていく中、気合でなんとかなる時代はもう過ぎました。
カーディーラーの整備工場については、冷暖房完備が増えてきました。
街の整備工場も、徐々にスポットクーラー(作業現場を狙って冷気を吹きかける)の導入は見られます。少なくとも夏に関しては、対策を行っているところが増えつつあります。
力仕事の軽減が進み、女性も徐々に増えてきた整備業界ですが、女性が増えても解決しないのがオイルによる手の汚れです。
「洗えば落ちる」と特に気にしない人も多くいるいっぽう、爪先の黒い汚れが気になり、卑屈に感じる人も少なくありません。
手が根本的に汚れなくなるためには、電気自動車がクルマの主流になるのを待たなければなりません。
電気自動車もブレーキオイルは必要ですが、全体の使用量および交換の頻度は大きく減ります。
現状であれば、「自分でなんとかする」です。
素手のほうが作業しやすいことも多いですが、汚れだけでなく手荒れが気になる人なら、耐油手袋など活用しています。
本気で手を汚さないためには、手袋を多数持っておくのが正解です。
きめ細かい仕事と、手を汚さないことを両立する器用な整備士になりましょう。
専門家なのに、3K職場として扱われることもある自動車整備士ですが、徐々に変化も見られることを見てきました。
今後は、さらに整備士を誇り高い(かっこいい)職業にするため、自分自身でなにをしたらいいかを考えてみましょう。
クルマのメカニックに向かって黙々と仕事を続けることは、悪いわけではありません。大事なことです。
ですがそれだけで、外の世界に向かって、整備士という職業の素晴らしさが伝わるわけではありません。
自動車整備士にとって、最も重要な相手は誰でしょう。もちろん、お客様です。
お客様に対して、整備の必要性、必要な費用、メンテナンス実施の提案など、きちんと説明できるようになりましょう。
それによって信頼を得られるのです。
何もべらべら喋ればいいというわけではありません。伝える力、聞く力が必要です。
カーディーラー整備士の場合、このスキルは営業に異動したときにも役立ちます。
メカニックがよくわかって話のできる営業は引っ張りだこです。
自動車整備士は、ステップアップできる職業です。
下の立場では不満があることも、専門スキルをさらに高めることで仕事に対する満足度が上がります。
こんな、ステップアップルートがあります。
・自動車検査員
・1級自動車整備士
・損害保険のアジャスター(転職先)
自動車検査員は国の仕事である車検を担当するもので、みなし公務員とされます。
事故を起こさないための整備から、今度は整備が基準に適合しているかを確認する、責任の大きな仕事です。
1級自動車整備士はまさに自動車のスペシャリストであり、開発業務にも携われます。
自動車整備士そのものではないですが、整備士の知識を活かして自動車事故の際に欠かせない調査を行う、権威ある仕事です。
整備士の、世間にある悪いイメージを含め、どう克服して「かっこいい」職業になるかを見てきました。
人手不足を解消したい業界も変わりつつあります。
そしてさらに、自分自身でかっこよく業界を変えていってください。