自動車整備士は国家資格であるため、専門的で難しいイメージを持たれている方も多いかもしれません。
しかし、しっかりと事前学習をした上で試験に臨めば、自動車整備士になることはできます。
今回は、自動車整備士の資格の種類や受験の流れ、そして自動車整備士になるための具体的な方法を紹介します。
自動車整備の仕事は必ずしも資格が必要なわけではありませんが、整備士のプロとして取り組むには自動車整備士資格が必須になります。
今回は自動車整備士の具体的な業務内容について説明します。
自動車整備士とは「メカニック」と呼ばれることがあります。
自動車のメンテナンス・調整や点検・修理、分解・組立などメイン業務とする専門的な仕事です。
一般の人から見たら自動車整備士の業務は、自動車にとっての「お医者さん」のような存在であり、不具合などが生じた場合には調査や修理などの対応を行います。
国家資格を所有して整備の仕事に携わっている人のことを、「自動車整備士」と呼びます。
自動車整備士の業務は「点検整備」「分解整備」「緊急整備」「その他」に分かれます。
「点検整備」は突発的な自動車の不具合の対応ではなく、自動車部品の劣化などを定期的に点検し、事故を未然に防ぐ業務です。
法定点検(6ヵ月、12ヵ月、24ヵ月)などが、代表としてあげられます。
車検・修理の際にパーツを自動車から取り外し、分解して修理するのが「分解整備」。
「オーバーホール」と呼ばれる、自動車の中で重要な機械部分を分解し、故障した箇所を見つけて整備する業務などが当てはまります。
交通事故のなどが原因で車両に激しい損傷が見られた場合などには、大規模な分解整備が必要となります。
「緊急整備」は、走行中や停車中に突然エンジンがかからない、事故で車体の一部が破損して走行できないなど、緊急度の高い事故や故障による修理・整備を行う業務のことをいいます。自動車の部品の交換や分解作業を行い、車が安全に走れるように修理します。
「その他」の業務は、ボディのキズ・凹み・ゆがみなどを修復する「板金」や自動車のボディをカラー液などでの塗装や、下地処理や磨き処理を行う「塗装」もなども自動車整備の業務に含まれます。
勤務先によっては自動車オプションの取り付け、タイヤ・オイルなどの交換作業、お客さまへの各種説明、接客業務、発注業務などの事務処理を自動車整備士が行うこともあります。
●自動車愛好家としての充実感
自動車整備士は自動車に関する専門知識や技術を駆使して仕事を行うため、自動車愛好家にとっては非常に充実感のある仕事です。自分の手で車を修理・整備し、顧客が安全かつ快適にドライブできるようにすることは、多くの整備士にとってやりがいを感じることができます。
●技術的な成長とスキルの獲得
自動車産業は常に進化しており、新しいテクノロジーやシステムが導入されています。自動車整備士として働くことで、常に新しいことを学び、技術的なスキルを向上させる機会があります。この過程で得られる知識やスキルは、将来のキャリアにおいて非常に有用です。
●多様な仕事内容と挑戦
自動車整備士の仕事は単調ではなく、様々な課題や問題に対処することが求められます。様々な車種やシステムに対応し、日々異なる状況に対処することで、整備士は自身の能力を試し、成長する機会を得ることができます。
●長時間の立ち仕事と体力的な負担
自動車整備士の仕事は、多くの場合、長時間立ちっぱなしで行われます。また、重い部品の持ち運びや車両の修理作業など、体力的な負担も少なくありません。これにより、身体的な疲労や負担が生じる可能性があります。
●環境の厳しさ
整備工場はしばしば騒音や化学物質の臭いなど、過酷な作業環境にさらされることがあります。また、作業中には油やガソリンなどの有害な物質に触れる機会もあります。これらの環境要因により、整備士の健康や快適性に影響を与える可能性があります。
●技術の急速な進化
自動車産業は急速に変化しており、新しいテクノロジーやシステムが短期間で導入されることがあります。これにより、整備士は常に最新の情報やスキルを習得する必要があります。技術の急速な進化に追いつくことが難しい場合もあります。
自動車整備士の資格は1級から3級まで、3つの等級に分かれています。次の項目では、それぞれの資格で可能な業務内容などについて紹介していきます。
一級自動車整備士は、等級別に分かれている自動車整備士の資格の中でも最上級の資格です。そのため、知識と技能のレベルに関しての高い水準が求められます。
一般に、自動車整備士として勤務する際には、二級自動車整備士の資格を有していれば、整備士としての業務全般を担うことができます。一級自動車整備士になるということは、それらの業務に加えて、他の整備士、作業員に対しての指示出しや指導を行う立場となることを意味します。
一級自動車整備士のには、以下3つの種類があります。
1)一級大型自動車整備士
2)一級小型自動車整備士
3)一級二輪自動車整備士
しかし、2021年現在は一級小型自動車整備士の資格試験のみ実施されており、一級大型自動車整備士、一級二輪自動車整備士の資格試験は実施されていません。
二級自動車整備士は、自動車の整備に関しての業務全般を実施できる資格です。三級自動車整備士では許可されていない業務についても、二級自動車整備士であれば実施できます。そのため、自動車整備士として仕事をしていく上では、取得しておくべき資格と言えます。
ただし、二級自動車整備士としての作業には、限界もあります。例えば、高い技術が求められる分解整備や、自動車検査員としての業務などです。これらの業務は、一級自動車整備士や自動車検査員、工場で任命された整備主任者の手による検査・確認業務が必要となります。
また、二級自動車整備士の資格としては、以下4つの種類があります。
1)二級自動車シャシ整備士
2)二級ジーゼル自動車整備士
3)二級ガソリン自動車整備士
4)二級二輪自動車整備士
上記全ての資格を取得しなければならないわけではなく、自分が携わる業務の内容によって1~2つの資格を取得するのが一般的です。
三級自動車整備士は、整備に関する基本的な業務を実施できる資格です。主として、上級の自動車整備士の指示に従った業務となります。ブレーキやエンジン、サスペンションといった分解整備の業務を、三級自動車整備士が単独で実施することはできません。
三級自動車整備士の資格としては、以下4つの種類があります。
1)三級自動車シャシ整備士
2)三級ジーゼル自動車整備士
3)三級ガソリン自動車整備士
4)三級二輪自動車整備士
資格の区分としては、二級自動車整備士と同様となっています。ただし、二級自動車整備士であれば工場内の自動車整備主任者に選任されることもありますが、三級自動車整備士はその対象にはならないという違いもあります。
自動車整備士の試験を受けるためには、受験資格を満たしていることが必須となります。以下の項目で、具体的な受験条件や試験内容について紹介していきますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
自動車整備士の受験条件は以下に定められています。
1)自動車整備士課程のある専門学校、もしくは高校を卒業した場合
学校を卒業すると同時に受験資格を得られます。
一級自動車整備課程から三級自動車整備士課程まで分かれているので、自分に見合った整備課程を選択する必要があります。
2)機械工学科系の専門学校や高校、大学を卒業した場合
実務経験を6カ月以上積むと、三級自動車整備士の受験資格を得られます。
3)自動車整備士課程や機械工学科以外の学校を卒業した場合
実務経験を1年以上積むと、三級自動車整備士の受験資格を得られます。
上記の条件からも分かるように、自動車整備士課程のある学校以外を卒業した場合は、実務経験が必須であることに加えて、三級自動車整備士からの受験となります。
自動車整備士の試験では、全ての等級で筆記試験と学科試験があります。まずは学科試験を受験して合格した後に、実技試験を受験するという流れになります。
自動車整備士の等級別の試験内容は、以下となっています。
1)一級自動車整備士の試験内容
・筆記試験
「構造、機能及び取扱い法」や「点検、修理、調整及び完成検査の方法」などに関する内容で、4択マークシート方式です。
出題数は50問で、試験時間は100分です。
・実技試験
「基本工作」や「点検、分解、組立て、調整及び完成検査」などに関する実技試験をします。試験時間は30分です。
2)二級自動車整備士の試験内容
・筆記試験
「構造、機能及び取扱い法に関する一般知識」や「点検、修理、調整及び完成検査の方法」などに関する内容で、4択マークシート方式です。
二級自動車シャシ整備士のみ、問題数30問で、試験時間は60分です。その他は、問題数40問で、試験時間は80分です。
・実技試験
「基本工作」や「点検、分解、組立て、調整及び完成検査」などに関する実技試験をします。試験時間は30分です。
3)三級自動車整備士の試験内容
・筆記試験
「構造、機能及び取扱い法に関する初等知識」や「点検、修理及び調整に関する初等知識」などに関する内容で、4択マークシート方式です。
出題数は30問で、試験時間は60分です。
・実技試験
「簡単な基本工作」や「分解、組立て、簡単な点検及び調整」などに関する実技試験をします。試験時間は30分です。
自動車整備士の資格は、等級ごとに難易度が異なります。一級自動車整備士から三級自動車整備士まで、それぞれの資格の難易度を確認していきましょう。
一級自動車整備士の資格である一級小型自動車整備士試験の難易度を確認しましょう。各試験の合格率は以下です。
1)筆記試験
平成30年度第2回:49.3%
令和元年度第2回:52.7%
令和2年度第1回:61.1%
2)口述試験
平成30年度第2回:95.2%
令和元年度第2回:96.4%
令和2年度第2回:99.2%
3)実技試験
平成29年度第2回:51.3%
平成30年度第2回:19.9%
令和元年度第2回:73.8%
一級小型自動車整備士の口述試験の合格率は90%台後半の高い合格率です。一方、筆記試験に関しては、例年の合格率が約5割程度と、高い難易度であることが分かります。実技試験に関しても、合格率にばらつきはありますが、筆記試験と同じく難易度は高めと言えます。
二級自動車整備士の難易度を確認していきましょう。学科試験、実技試験それぞれの合格率は以下となっています。
1)学科試験
・二級自動車シャシ整備士
平成30年度第2回:84.7%
令和元年度第2回:93.0%
令和2年度第2回:83.8%
・二級ジーゼル自動車整備士
令和元年度第1回:46.2%
令和元年度第2回:90.0%
令和2年度第1回:43.1%
・二級ガソリン自動車整備士
令和元年度第1回:49.9%
令和元年度第2回:84.1%
令和2年度第1回:93.0%
・二級二輪自動車整備士
平成29年度第1回:75.3%
令和元年度第1回:68.9%
令和2年度第1回:83.8%
2)実技試験
・二級ガソリン自動車整備士
平成28年度第1回:43.1%
平成30年度第1回:22.0%
令和2年度第1回:46.2%
・二級ジーゼル自動車整備士
平成27年度第1回:30.8%
平成29年度第1回:25.0%
令和元年度第1回:0%
筆記試験の合格率は年度によってばらつきはあるものの、40%~90%の間に位置しています。実技試験に関しては50%を超えることはなく、比較的難しい試験であることがうかがえます。
三級自動車整備士の難易度を確認しましょう。学科試験と実技試験、それぞれの合格率は以下です。
1)学科試験
・三級自動車シャシ整備士
令和元年度第1回:70.5%
令和元年度第2回:57.4%
令和2年度第1回:69.2%
・三級ジーゼル自動車整備士
令和元年度第1回:60.3%
令和元年度第2回:64.6%
令和2年度第1回:73.6%
・三級ガソリン自動車整備士
令和元年度第1回:66.1%
令和元年度第2回:71.1%
令和2年度第1回:61.6%
・三級二輪自動車整備士
平成30年度第2回:71.9%
令和元年度第2回:68.7%
令和2年度第2回:82.7%
2)実技試験
・三級自動車シャシ整備士
平成28年度第1回:60.0%
平成30年度第1回:71.4%
令和2年度第1回:66.2%
・三級ガソリン自動車整備士
平成27年度第1回:90.2%
平成29年度第1回:51.4%
令和元年度第1回:43.0%
三級自動車整備士の学科試験合格率は、60~70%で安定しています。また、実技試験に関しても、二級自動車整備士試験の合格率と比較して高い傾向にあることが分かります。
現在、自動車の整備工場には「認証工場」「指定工場」の2つの工場があります。
どちらも自動車の分解整備がおこなえる工場となっていますが、大きな違いは工場にて車検検査がおこなえるかどうかになります。
自動車検査員とは、車検や自動車定期の点検の業務をおこなうのに必要な国家資格となります。
資格取得することで資格手当がつくこともあり、車検をおこなう指定工場での勤務の場合は業務の幅を広げることができます。
自動車検査員になるためには、下記の受験条件を満たして自動車検査員教習の試験に合格する必要があります。
・1級自動車整備士または2級自動車整備士の資格取得者をしていること(2級自動車シャシ整備士は除く)
・現在の職場で自動車整備主任者※に選定後、1年以上の実務経験を積んでいること
・自動車検査員講習を受講していること
特殊整備士は、自動車整備の業務範囲が特化した国家資格になります。
特殊整備士の種類は自動車車体整備士、自動車電気装置整備士、自動車タイヤ整備士の3つがあります。
特殊自動車整備士の資格を取ることで、より専門的な知識を身に付けることができます。
自動車整備士の資格取得を行うことで、下記の実用性が考えられます
●就業機会の拡大: 自動車整備士の資格を持つことで、ディーラーショップ、修理工場、自動車メーカーなどでの雇用機会が広がります。特に一定のレベルの資格を持つことで、需要の高いポジションにアクセスできる可能性が高まります。
●給与やキャリアの進展: 資格取得は給与水準やキャリアの進展に影響を与えます。資格保持者は一般的に非保持者よりも高い給与やキャリアパスが開かれることがあります。
●業界内での評価と信頼性: 資格は業界内での評価と信頼性を高めます。資格保持者は顧客や雇用主から信頼されやすく、高い技術と知識を持っていると認識されます。
●技術革新への適応: 資格取得プロセスは最新の自動車技術や修理方法について学ぶ機会を提供します。これにより、常に変化する自動車産業に適応し、競争力を維持できます。
自動車整備士の資格を取得するためには、実務経験を積むか、専門学校を卒業するといった受験資格が必要なことは、先ほどもお伝えしました。それらが具体的にどのような方法なのか、それぞれ解説していきます。
1つ目は、実務経験を積みながら、資格取得を目指す方法です。
自動車整備士課程のある学校を卒業していない場合は、受験資格を得るために実務経験が必要となります。期間は、機械工学科系の学校を卒業したのであれば実務経験が6カ月以上、それ以外の学校を卒業したのであれば実務経験が1年以上必要です。
そしてこれらの実務経験を積んだ後に受験できる対象の資格は、三級自動車整備士のみとなっています。1つ上の級である二級自動車整備士を受験したい場合は、三級自動車整備士の資格を取得後、さらに3年以上の実務経験が必要となるのです。
また、実務経験として認められるためには、認定工場や指定工場の整備工場で働かなければならないという規定があるため、注意が必要です。
2つ目は、自動車整備士の専門学校に通うという方法です。
埼玉県鴻巣市にある関東工大(関東工業自動車大学校)では、自動車整備士としての高い知識や技能を身に着けることができます。
将来の資格取得に向けたカリキュラムが充実しており、「ORANGE LABO」と呼ばれる平屋実習場では、クリーンな環境で実技を学ぶことができます。
また、驚くべきは自動車整備士試験の合格率です。以下にその数値を示します。
1)一級自動車整備士科
一級自動車整備士合格者累計:91.9%(合格者数842名/受験者数916名)
2)二級自動車整備科
二級自動車整備士合格者:97.4%(合格者151名/受験者数153名)
※2019年3月卒業生実績
一級自動車整備士、二級自動車整備士のどちらに関しても、合格率が90%を超える非常に高い合格率であることが分かります。
関東工大では、整備士課程を卒業すると同時に、試験の受験資格を得ることができます。
自動車整備課程のない学校を卒業した場合は必要となる実務経験が免除されるため、少しでも早く第一線で活躍したいという方にはぴったりの学校です。
ここまでの自動車整備士の資格と取得方法についてまとめます。
・自動車整備士の資格は、一級から三級まで等級別に分かれている
・試験には、筆記試験と実技試験がある
・受験資格として、自動車整備課程の学校を卒業していない場合は、実務経験が必要となる
・自動車整備士試験の難易度は比較的高い
自動車整備士の専門学校として紹介した関東工大では、ミニオープンキャンパスなどのイベントを毎週開催しています。
優れた合格率を誇る関東工大で学ぶことで、自動車整備士としての明るい未来を切り開くことができます。
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