自動車整備士として働いている人、今から働こうと考えている人にとって、この業界の待遇はどう映るでしょうか?
自動車整備士の待遇改善と、業界の将来性を見ていきましょう。
この記事の結論は、「自動車整備業階の待遇はよくなる」です。ただし結論に至るまでに、反対の見方も多数取り上げます。
待遇改善に期待ができるといっても、すべての自動車整備士の待遇が自動的に上がるとまではいえません。業界の努力に加え、ひとりひとりの自助努力も求められます。
自動車整備業界の悪い状況に慣れてしまい、感覚の麻痺している人も多数見られる中ではありますが、今後に向けてのいい材料を積極的に見ていきましょう。
現在の状況はまるでよくないという意味ではありません。
事実として多くの問題点もありますが、すでに一部改善が見られる部分もあります。そうでないと、今後の期待など持てないでしょう。
クルマを取り巻く環境は次の通り大きく変わってきました。
(性能面)
・環境に適合したエコカー増加
・自動運転システムの充実
・ぶつからないシステム
・電気系統の進化
(クルマの利用面)
・クルマ離れ
・若者がクルマに興味がなくなっている
・クルマの個人所有の減少
・カーシェアの隆盛
クルマ自体の性能と使い方が変われば、自動車整備業界も否応なしに変わっていきますし、現に変わりつつあります。
クルマが好きな若者の減少は、整備士志望者の減少という側面にすでに現れており、業界の人材不足の要因のひとつともなっています。
こういった変化から、明るい未来と、そうでもない可能性と、両方が考えられます。
次のとおりです。
(明るい)
・エコカーが増え、安全設備、電気設備の点検業務が多くなる
・機械の確実性を確保するため、自動車整備士の責任が大きくなり、社会的な評価が高まる
・油にまみれる業務は大きく減り、3Kのうちの「汚い」が減って職場のイメージが向上
・整備設備の向上により、力仕事も減って現役年数が伸び、女性の整備士も増加する
・全般的な待遇向上に連れて、不足している整備士の数も安定してくる
(暗い)
・カーシェアが増え、個人ユーザーの車輌整備需要が減る
・自動運転が増え、車輌の破損修理の需要が減る
・整備士に求められる知識が増え、ついていけない人も出てくる
・人手不足が解消せず、ますます激務になっていく(離職率も高いまま)
・負のスパイラルとして、待遇の改善も計れない
比較してみるとわかりますが、明るい未来も、暗い未来も実のところ表裏一体の関係にあります。
個人のクルマは減っていっても、社会のクルマ自体が減るとは考えられません。
そしてクルマがある以上、整備に関わる人間はいなくならないのです。
これからはガソリン自動車が減り、ハイブリッドカーや電気自動車が主流になりますが、従来の仕事を続けているだけの整備士は取り残されていくでしょう。
これはどんな業界においても起こってきた変革です。整備士は常に最新のテクノロジーに合わせて、自らのスキルを高めていかなければなりません。
待遇をよくしようと考える人にとっては、当然のことです。
自動車整備士の働く環境は劣悪で、しかも給与が見合っていないという感想は現在でも多数見受けられます。むしろひどくなっている実感の人もいるはずです。
「酷暑の夏や、底冷えのする真冬でも、冷房設備等もなく働き、しかも危険が多い、にも関わらずサービス残業だらけで年収350万円」などという話は無数にあります。
実際に見切りをつけて転職する人も多いので、この実感はまるで間違っているとはいえないものです。
民間整備工場に勤める自動車整備士には、共通した悩みです。
同時に人手不足で年中忙しいのであれば、不満があっても無理はないかもしれません。生産性に問題があることは否めません。
ですが希望の光も見えます。
整備士が国の基幹産業である以上、劣悪な環境のままではこれを支えられません。
政府の待遇改善の動きはここに来ていよいよ大きくなってきました。補助金などの活用で、就労環境、そして給与面の向上はある程度図られていくものと思われます。
現在の整備業界は、人出不足で、極端な売り手市場にあります。
売り手市場というものは、業界自体が世に必要とされている状態で発生します。そして国は、間違いなく整備業界を今後も重要と考えています。
売り手市場が続く状態は不自然です。売り手市場を長引かせているのは、業界のイメージが決して高くないためでしょう。
不自然な状態が正常に戻るにあたり、業界イメージの改善と、待遇改善が同時に進んでいくものと予測されます。
いっぽうで、人気のカーディーラー勤務の自動車整備士の場合は、決して悪い状況でもありません。
ディーラー整備士に関していうなら、令和の始めで年収450万円程度は超えています。しかも、年々数字が上がり続けている状況です。
ディーラーでは冷暖房完備の職場も多く、設備の充実により力仕事も少なく、さらに年収が500万円近いなら、必ずしも悪い環境とは言えないでしょう。
自動車メーカーから最新の技術を得られるのも、整備士としてのスキルアップの点で大きなメリットです。
もちろん、ディーラーに入れたらそれで不満がないかというと、これらの職場にも悩みは多数あります。
代表的な悩みは「休日が思うようにならない。残業も多い」です。
ただ休日や残業の件は解決しないにしても、ディーラーならではのメリットがあります。営業やフロント等の別職種に移りやすいことです。希望によらず異動になるケースも多くみられます。
こういった多職種において、整備士の経験が大きく活きます。顧客に具体的な説明ができて、信頼してもらえるためです。
異動に際し、「せっかく整備士になったのに」という感想は的外れでしょう。
整備の知識を活かし営業に転身して、自ら環境をよくしていくことができる可能性があります。
「人と接するのが苦手なので」営業はイヤだというディーラー整備士も多いのですが、本来整備士自体、クルマだけいじっていればいいような職種ではありません。
業界内で比較すればカーディーラーは恵まれていますが、特にメーカー系列のディーラーは新卒採用メインのため、整備の専門学校に通った人のほうが就職には断然有利です。
ひとくちに自動車整備士の将来性といっても、職場によってさまざまであることを見てきました。
カーディーラーの整備士も悪くないものの、業界を志望段階の人なら、自分で道を切り開いていくこともできます。
自動車整備士専門学校の4年コースに入学すると、卒業時に1級自動車整備士の資格を取得することができます。
実技試験は免除されますが学科試験自体はあるので、必ず合格の保証はないものの、4年コースの卒業生はおおむね合格している実績があります。
1級は整備業界の最高峰の資格ですが、整備の現場では、この資格はやや高度すぎる現状があります。
しかし、1級を取得していることで、専門学校を出てメーカーの研究開発職に採用される可能性もあるわけです。
現場の自動車整備もいいのですが、クルマを知り尽くしたうえでさらに高待遇のエンジニアになる道があります。
自動車整備士の待遇改善について見てきました。
待遇を改善する方法として、次の2種類があります。
・政治主導で、業界の待遇改善
・個人の努力によるステップアップ
どちらにも、可能性が見られます。
どんな業界でもそうですが、スキルアップを望む人には見返りがあります。
整備士の今後に期待しましょう。