自動車整備士に関わらず、全ての職業において就職活動で希望の企業に入社できたら安泰というわけではありません。
むしろ、入社してからの方が重要で、いかに自身をスキルアップさせていくかによって社会人人生は大きく変わってきます。
今回は自動車整備士がスキルアップするために取得すべき資格を詳しく説明していきます。
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自動車整備士に関する資格は多種多様にあります。それら全ての資格を取得することも可能ではありますが、全ての資格を取得するには莫大な時間を要してしまいます。
自動車整備士としてスキルアップする為には、自分が目指す自動車整備士の姿を明確にし、必要となる資格を取得することです。
当たり前のことですが、自動車整備士資格を取得しなければ自動車整備士にはなれません。無資格で自動車整備工場や自動車板金工場で働くことは可能ですが無資格者は従業員として扱われるのみで自動車整備士として扱われません。
自動車整備士資格は1級自動車整備士、2級自動車整備士、3級自動車整備士、特殊整備士にわかれています。
現在、9割以上の自動車整備工場で求人は自動車整備士資格を取得している人のみとなっています。
3級自動車整備士資格を取得している人は2級自動車整備士資格、2級自動車整備士資格を取得している人は1級自動車整備士資格の取得を目指してスキルアップをしていきます。
1級自動車整備士資格はスキルアップとして目指す資格ですがスキルアップのゴールではありません。
1級自動車整備士資格がゴール地点だと、専門学校で1級自動車整備士資格を取得してきた新卒の自動車整備士はスキルアップしないということになってしまいます。
1級自動車整備士資格を取得してから自動車整備工場に新卒として入社した人は、資格取得でのスキルアップではなく、仕事の流れや段取りを覚えながら技術力・知識力のスキルアップをしていきます。
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自動車整備工場は車検の検査を自工場で行える指定整備工場と、車検の車両を運輸支局に持ち込み検査を行う認証整備工場にわかれています。
車検の検査を行う自動車検査員は『みなし公務員』や『準公務員』等と呼ばれており、法律に違反するような行為を行えば公務員と同等の重い処罰を受けます。
特に指定整備工場での自動車検査員の責任は重く、車検や点検等整備に関わる部分で違法な行為や不備があった場合はほぼ全ての責任を自動車検査員が負うことになります。
自動車整備工場で不正改造車の整備を行ったり、車検や自動車整備工場の運営に関わる書類に不備があると指定や認証の取り消しや停止処分になってしまいます。
そのため、自動車整備工場の事業者は信頼のおける人を自動車検査員に任命して、自動車整備工場の中心人物として仕事を任せます。
自動車検査員の資格は自動車検査員試験に合格することで取得することができます。
自動車検査員試験を受けるには自動車整備主任者として1年の実務経験(1級自動車整備士は6ヶ月の実務経験)を積まなければなりません。
整備主任者は2級自動車整備士資格以上を取得している人で、事業者の任命により陸運局に申請をすることにより就任できます。
自動車整備主任者は2級自動車整備士資格以上を取得していれば誰でも任命することができますが、自動車整備主任者は自動車検査員に次ぐ責任を負う立場となるので経験を積んだ自動車整備士でなければ任命されることはありません。
新卒で入社した自動車整備士は経験を積んで自動車整備主任者、更に経験を積んで自動車検査員というルートでステップアップしていきます。
自動車整備工場によっては手当ての関係や組織の関係で主自動車検査員を1名、副自動車検査員を1〜2名という体制をとっています。
主自動車検査員は自動車整備工場内で1番経験のあるベテランが、副自動車検査員は次点のベテランが就任して業務を行っていることが多いです。
そのため、中堅の自動車整備士で自動車検査員の資格は取得しているが、自動車検査員の業務を行ったことがない人が任命される順番待ちをしているような状態となっている自動車整備工場もおります。
主自動車検査員や副自動車検査員が退職するまで自動車検査員としてのスキルアップができないのは非常に大きな損失となります。状況をみて別の自動車整備工場への転職やカーディーラーであれば他店舗への移動願いをだす等の行動を起こしましょう。
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自動車メーカーのカーディーラーでは新卒で入社してから各年次ごとに明確なスキルアップのための研修を行います。
自動車メーカーではメーカー内の技術検定試験を行っていて、研修を通じて試験合格を目指すので確実にスキルアップしていきます。
特に自動車メーカーの1級技術検定試験は国家1級自動車整備士資格試験よりも難しく、国家1級自動車整備士資格保持者でも大きなスキルアップをできるものとなっています。
カーディーラーでは自動車整備士の技術検定試験のための研修以外にも見積り作成や接客対応の業務認定試験やCS(カスタマーサポート)に関する試験等もあり、自動車整備士としてだけではなく社会人としてのスキルアップもしていきます。
また、事業に関わる部分での法改正が行われた時や自動車の新機構が搭載された時にも随時研修が行われるために時代に合わせたスキルアップができます。
カーディーラーに自動車整備士として入社してから自動車整備主任者、自動車検査員として経験を積んで、最終的にはサービスフロントやサービスマネージャー、工場長となるのが理想の出世コースとなっています。
理想の出世コースなので自動車整備士として何年経験を積んでも責任能力が無ければ、自動車整備主任者や自動車検査員に任命されずに平の工員として社会人人生を終えてしまう人もいます。
また、前述したように自動車検査員の任命の順番待ちを防ぐように、カーディーラーではある程度の年齢を機にサービスフロント業務やサービスマネージャー業務にシフトチェンジを行っているところがあります。
自動車検査員経験者でも部品管理能力や売上管理能力が低かったり、マネジメント能力が低ければ営業職への転属や平工員への降格とされてしまいます。
最終的に目指すポジションはサービスフロント、サービスマネージャー、工場長ですが、就任して終わりではなく日々スキルアップを求められ、それに答え続けなければなりません。
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自動車整備士資格やカーディーラーの技術認定級等、自動車整備士がスキルアップをしていくうえで必須となる資格の他にも自動車整備工場で働くうえで取得をしておいた方がいい資格があります。
自動車を整備するのには必ずしも必要な資格ではないのですが、自動車整備工場の業務上必要となる場面の多くなる資格をいくつか紹介します。
カーディーラーや民間の自動車整備工場は自動車損害保険の代理店を兼務しているところがほとんどとなります。
自動車損害保険の代理店の看板を掲げている以上は自動車損害保険の商品を扱えなければなりません。
損害保険募集人の資格が無ければ保険代の集金をした際の領収書を切ることもできないので、自動車整備工場によっては強制的に取得させられます。
自動車販売店で働く営業職のひとには必須となる中古車査定士の資格ですが、カーディーラーではサービスフロントやサービスマネージャーといった、お客様との距離が近く接客をメインとしているポジションの人に中古車査定士の資格を取得させています。
中古車査定士資格は小型査定士資格と大型査定士資格にわかれています。普段から事故車の修理見積りを作成しているサービスフロントやサービスマネージャーであれば難無く合格できる資格となっています。
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自動車整備士は黙々と作業をしているイメージがありますが、実はかなり多くのコミュニケーションが必要となってきます。
働いている自動車整備工場で事業者や上司は普段の働いている姿やコミュニケーションを通じて信頼関係が築けた人を自動車整備主任者や自動車検査員に任命します。
資格の取得は自身のスキルアップに非常に重要になってきます。しかし、資格を取得しただけで仕事に活かせなければ意味はありません。
資格を取得して会社が自分に何を求めているのか把握しながらスキルアップをしていきましょう。