KANTO Industrial College

自動車整備士の仕事がつらくなったらどうする? 辞める?転職する?

自動車整備士として働いていて、仕事がつらいと感じる人も多くいます。

どんなことが、なぜつらいのでしょうか。

実際につらくなったとき、どうすればいいでしょうか。

原因と対策を見ていきます。

国は自動車整備士の待遇改善を図っている

整備士の労働実態を知ることも大事ですが、業界が変わりつつある事実にも触れておきましょう。

自動車整備は社会の安全を守るため、なくてはならない産業です。

いまだに3K現場と言われることも多く、また人手不足が解消しない整備士の仕事ですが、国としてはその状況に懸念を抱いています。

国(国土交通省)の対策が遅々として進まないという不満も現場にあるところですが、一方で着実にこの業界、改善が見られるという声も聞かれます。

実際に整備士の年収も、少しずつですが増加が見られます。

クルマの電気系統、安全設備の進化、エコカーの増加によって、今以上に整備業務の重要性が増していくことは確かです。働き甲斐と言う点でも大きく期待が持てます。

とはいえ、個人のレベルで現実に仕事がつらい状況があるなら、「今によくなる」と言われても響かないかもしれません。

次に、整備士個々における「つらさ」を見ていきます。

カーディーラーと整備工場、それぞれのつらさとは

自動車整備業の仕事は、大きく分けるとカーディーラーと、街の整備工場となります。

このうち、待遇面から人気を集めるのは、圧倒的にカーディーラーです。

実際、自動車整備の専門学校を卒業した人の多くはカーディーラーに進んでいます。

とはいえ、恵まれているとされるカーディーラー整備士にも、働く上での悩みは多数あるようです。

それぞれ、そして整備士に共通する悩みも見ていきましょう。

改善策のあるものは合わせて記載しています。

共通してつらいこと

カーディーラーでも整備工場でも、共通したつらさがあります。

・体力的な問題

・人間関係

・工具が自腹になることがある

女性の整備士も増えてきて、職場の機械化が進んでいる場合はそれほど力が要らないこともあります。

ただ、そうはいってもデスクワークではないので、基本体力勝負なのは確かです。

腰を痛める人もいます。

年齢とともに体力は落ちていくので、体力の面で問題を抱えているのなら、これは転職したほうがいいでしょう。

次に人間関係ですが、どこの職場にもある問題ながら、整備業界では特に問題視されます。

もともと体育系文化が強い職場なので、長く勤めている人が高圧的だったり、きちんと教えてくれなかったりする職場も多くあるようです。

なまじ転職しやすい業界のため、転職で雰囲気の悪い職場から逃げる人も多くいます。

業界も変わっていかないといけないし、実際徐々に改善されつつあることも確かでしょう。

工具は自分の使いやすいものが欲しいのなら自腹でも不満はないかもしれません。

ただ、当然のように自腹になると、やる気を削がれるでしょう。

カーディーラーは長時間労働がつらい

次にカーディーラー固有の問題です。

クルマを売るディーラーでは、顧客の都合が最優先のため、納期に間に合わせるため残業が増える構造があります。

ただしサービス残業はいけませんが、時間外労働が給与についてプラスに働くのも事実で、この点評価が難しいところです。

ところでカーディーラー勤務の場合、整備士業務に対する多くの不満を解消するすべがあります。

人事異動です。

ディーラーの場合、営業やフロントマンに進む道があります。そして、整備士の経験に基づくクルマの知識は、これらの業務にすべて役立つのです。

もちろん営業は売って初めて評価される仕事であり、別の難しさがあります。

それでもチャレンジしてみる価値はあるでしょう。

整備工場では夏冬がつらい

カーディーラーの場合、冷暖房完備の整備場も増えてきました。

しかし相変わらずなのが街の整備工場です。

酷暑や極寒の時季も、ほぼ外で作業をしなければなりません。

熱中症とも戦わないといけませんし、冬は冬で水仕事がつらくなります。

ただ、新たな機器の増加により、つらい職場は徐々に変わりつつはあります。

少なくとも夏に関しては、スポットクーラーにより冷風を直接浴びることができるようになってきています。

せっかくのスポットクーラーを意地悪な先輩が独り占めするなどという話もなくはないのですが、これはもう職場の人間関係の問題のほうでしょう。

自然状況だけではありません。

整備工場につきまとう悩みとして「給料の安さ」が挙げられます。

長く勤めてもそれほど増えないことがわかってくると、絶望するかもしれません。

整備士がつらいときにはどうするか

仕事はしないわけにいきませんが、悩みは尽きません。

「辞めたいが、今辞めたら生活できない」

「転職したいが、きっと同じような職場になってしまうだろう」

「別の業界に進みたいがなにもスキルがない」

など、さまざまな悩みがあるものです。

整備士にとっての、つらいときの解消法を考えます。

現在の状況を冷静に判断する

パワハラの横行する職場などであれば、すぐに逃げ出すのが正解でしょう。

ただ雰囲気が悪い程度であれば、次の要素を冷静に考えてみましょう。

・この職場で学べるスキルがまだあるか

・どのぐらい続ければ地位や責任が上がるか

・現在の問題状況を、他人に相談して解消できそうか

転職しようと決めつけるのではなく、続けた結果と辞めた場合を冷静に比較することが重要です。

比較したうえで、どうするかを決めましょう。

ステップアップを目指そう

「整備士が向いていない」と気づいてしまえば別ですが、まだクルマが好きな気持ちがあるならステップアップしましょう。

整備業界でのステップアップの方法です。

・3級整備士なら2級を、2級整備士なら1級を目指す

・自動車検査員を目指す

・電気設備、安全設備などに関する最新の知識を身に着ける

これらにより直ちに職場の地位が上がり、給与が増えるとは限らないかもしれません。

それでも、整備の業界を新たな角度から眺められるようになると、視野が広くなります。

将来も開けてきます。

もちろん勉強は続けなければなりません。

勉強がつらい、という人もいるのですが、専門職において勉強が必要なのはどの世界でも同じことです。

新たな仕事に就こう

整備士に見切りをつけ、まったく違う仕事を始める人も多くいます。

それはそれで一つの方法です。まるで違う仕事に就いたからといって、経験が無意味ということはないのです。

ただ、どうせなら整備士の経験を活かす方法もあります。

先に挙げた、カーディーラー内で営業等にまわる方法もありますが、他にこんな仕事もあります。

・損害保険のアジャスター

・産業機械のエンジニア

アジャスターは自動車事故の調査業務を行う専門職です。

クルマについての深い知識が必要なので、整備士からの転身先として人気があります。

もちろん、クルマをよく知っているだけではなれません。

勉強して試験に合格する必要があります。

クルマではなく、「エンジニア」の属性で転職を果たす人もいます。

世に多数ある産業機械のメンテナンスは重要な仕事です。クルマも機械なので、この点扱うものが違っても新たに始めるハードルは低めです。

仕事がつらいときはいったん立ち止まってみよう

つらいときにこそ避けたいのは、「ひとまず辞める」です。

これをすると、ステップアップも転職も難しくなります。

つらいときこそ、今後の見通しについて立ち止まって考えてみてください。

ただ、我慢を美徳とするような時代ではないので、精神疾患を発症するまでいる必要はありません。健康最優先、次にキャリア形成を考えてください。