自動車検査員という職種があります。
自動車整備士によりも高待遇で、整備業界では多くの人が目標にしている職種です。
この職種に就くには資格が必要です。
資格を得るはどうしたらいいか、またどう勉強すればいいのかなど、自動車検査員についてご案内します。
自動車大学校等の専門学校を卒業して、2級以上の自動車整備士資格を手に業界入りする人もいます。
そういったケースを除けば、自動車整備業界ではひとつずつステップアップしていくとともに、新たな資格を必要とします。
ステップアップしていったいちばん先にある自動車検査員という職種および資格の、整備業界における位置づけから確認しておきましょう。
自動車整備士は未経験者でも始められる仕事です。専門学校に行かなかった人は、さらに無資格者でもあります。
実際に整備士見習の募集求人があり、それにより多数の人が見習いとして働いているということは、資格がなくても整備に携われることを意味します。
とはいえ人の命を預かる仕事です。資格を持たないまま担当業務を広げていくことはできません。
経験年数により受験資格を満たして整備士資格を取得し、その後経験年数と業務の広がりに合わせて、さらに資格を取得していく必要があります。
実務経験と試験合格によって、整備工場で働く整備士は次の通りステップアップしていきます。
見習(資格不要・簡単な業務)
↓
(原則1年勤務後)3級自動車整備士資格取得
↓
整備補助業務
↓
(原則3年勤務後)2級自動車整備士資格取得
↓
整備業務全般
↓
自動車整備主任者に選任
↓
自動車検査員資格取得
↓
自動車検査員
このルート以外に、板金や電装関係の整備を行う特殊整備士がおり、そのための特殊整備士資格もあります。
職場によっては一直線にこのルートを進むとは限りません。たとえばカーディーラーの整備士であれば、経験を活かして営業に回ることなどもあります。
いずれにしても、整備工場の中でも指定工場(民間車検場)で必要とされる最終ポストが自動車検査員です。
自動車整備士には、さらに最高資格である「1級自動車整備士」も存在します。
自動車検査員と1級整備士との間に序列はありませんが、試験の難易度は1級整備士のほうがはるかに高く、業界最高資格は1級整備士といえるでしょう。
ただ1級自動車整備士は、自動車開発に携わるコンサルティングの側面が強い資格です。整備工場においてはここまでの知識を必要としないので、自動車検査員が実質的な最高位といえます。
自動車検査員が、指定整備工場における最高職種であることを先に見ました。
具体的にどんな仕事をするのか、確認しましょう。
自動車検査員は車検を取り扱う大事な仕事ですが、自動車整備工場のすべてに車検の取り扱いがあるわけではありません。
車検のできない整備工場においては、自動車検査員はいません。
先に、この区別を見てみます。
・指定工場(民間車検場)・・・車検ができる
・認証工場・・・車検ができない
整備工場においては、2級自動車整備士資格があれば、実務経験に基づいてほとんどの整備業務を担当することができます。
2級整備士資格があってもできない業務が、車検です。車検(自動車継続検査)については自動車検査員が担当します。
保安基準適合証に、自動車検査員の署名捺印により証明をするというのが車検の完結です。
車検は自動車の状態が保安基準に適合しているかを確認する国の業務ですが、このための人員は国家公務員だけではとても足りません。
その代わり整備工場で勤務する自動車検査員有資格者を「みなし公務員」に選任し、国の業務を担当してもらっているわけです。
非常に責任の大きな仕事だということがわかります。
自動車検査員は、車検に関しては国の業務を行うので、みなし公務員とされています。
みなし公務員とは、特定の業務においては公務員とみなされるという意味です。
刑罰に関しても、公務員と同じ扱いです。車検で考えられる行為は、依頼者から金品を受け取って不正に車検を通すことですが、この場合自動車検査員は収賄罪に問われることになります。
また、顧客の秘密を保持する義務も負います。
自動車の安全性を確保するという国の業務を担当する以上、このことは当然といえます。
自動車検査員がいないと、整備工場(指定工場)の大事な職務である、車検ができません。
重要な職務である自動車検査員になるには資格が必要です。
資格といってもいろいろな種類がありますが、自動車検査員の場合、選任とワンセットで取得するものです。
自動車整備士がキャリアアップをもくろみ、勉強して取ってきて会社に報告という種類のものではありません。
見ていきます。
整備工場で必須の存在、検査員に選任されるまでを確認します。
1.シャシを除く2級以上の自動車整備士資格保有者が、指定工場の整備主任者に選任される
2.整備主任者として1年以上の経験
3.直近の整備主任者研修に出席している
4.地方運輸局長が行う自動車検査員教習を受講し、修了試験に合格
5.地方運輸局に指名その他を届出し、受理される
つまり、自動車検査員になる前に、整備工場内で自動車整備主任者に選任されている必要があります。段階を踏まないと検査員にはなれません。
そして試験に合格する必要がありますが、検査員の試験とは、上記で言う「修了試験」のことです。
整備主任者として実務経験を持つ人が整備工場でノミネートされ、教習に出席します。
誰でも受けられるわけではないのです。
自動車検査員教習は4回あります。4回の教習を終えると、修了試験が待っています。
教習を受けないと検査員にはなれませんが、だからといって4回の教習だけで車検に関する知識が身につくわけではありません。
ですから教習に出席する前から、過去問を徹底的に勉強しなければ合格はおぼつかないといえます。
過去問が出版されているので、これを徹底的にやり込むといいでしょう。
自動車検査員試験は運輸局の管轄ごとに違う問題が出題されるため、過去問も地域別に編纂されています。
余力のある限り、より多くの地域と年度の過去問を勉強すればいいでしょう。
合格率は年度と地域により異なりますが、おおむね6割程度です。
決して甘い試験ではありませんが、整備士試験と違い難関の実技試験もない(実際には甲種に通って免除を受ける人が多い)ので、きちんと勉強すれば受かるはずです。
みなし公務員として、社会的地位も高い自動車検査員になる方法について見てきました。
指定工場で自動車整備士として働いてきたなら、最後に自動車検査員をぜひ目指しましょう。
地位も待遇も上がります。
そのためには日ごろの整備業務をおろそかにせず、そしてシャシを除く2級整備士資格もちゃんと取得しましょう。
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