自動車整備士として働く人の多くは、二級整備士資格の保持者です。ただし、整備士の最高峰として一級があります。
一級と二級は、自動車整備士の実務や評価において、また難易度においてどう違うのでしょうか。自動車整備士としてのキャリアを考えるうえで大事な、資格の性質の違いについて解説します。
自動車整備士の一級と二級では、業務内容や責任などが、どう違うのでしょうか。
二級整備士は整備士の仕事をするのに必要不可欠であり、いっぽう一級整備士は、電気自動車や水素自動車をはじめとする、未来のクルマを整備するのに不可欠な、先を見据えたときの有望資格です。
自動車整備業界の仕事としては、資格が一級か二級かは、まだ大きな差でないのが実情です。
二級を持っていれば、おおむね整備において責任のある仕事を任せられます。
そのため一級を取得しようとしない二級保持者も数多くいるのは、仕方ないのかもしれません。
一級自動車整備士資格については、もともと試験が2002年まで実施されず、長らく二級が最高峰の資格だったため、業界において不可欠のものという認識がまだ足りないようです。
後から加わった一級に応じた仕事内容が少ないのは、そのためと考えられます。
とはいえ一級自動車整備士は、電気自動車や水素自動車等、最新のハイテク自動車の整備もできる資格です。
ガソリン車やディーゼル車であっても、最新の安全装備と電気系統を持ったクルマについて熟知している貴重な存在です。
二級自動車整備士資格については長らく最高峰だったため、これを取得していると、おおむね資格手当等の給与に反映されます。
いっぽうで一級自動車整備士資格については、特に小規模な整備場において必須の資格だと考えられてはいません。
せっかく一級を取っても、手当に反映されないことも残念ながら多いです。
ただし、業界すべてがそうだというのではありません。
最先端のクルマを開発する自動車メーカーや、同じく販売するカーディーラーに勤める整備士であれば、一級の資格手当が用意されていることが多くなります。
自動車整備士における一級と二級の違いは、このように説明されます。
・一級・・・電気自動車や水素自動車、それから電気系統の複雑な新しいクルマをすべて整備することができる。
・二級・・・責任のある整備の仕事をするためには必須。一口に二級と言っても、エンジン、車種と整備の範囲による細かい種別がある。
この二種類の級を取得するための、整備士試験について見てみます。
一級にも二級にも、自動車整備士試験には受験資格があります。次の通りです。
・一級:二級自動車整備士(シャシ整備士を除く)を取得後、整備士として3年以上の実務経験
・二級(ガソリン、ジーゼル、二輪):三級自動車整備士取得後、3年間の実務経験
・二級(シャシ):三級自動車整備士取得後、1年間の実務経験
試験を受けて整備士資格を得たい場合、下の級の資格取得と、実務経験が前提となります。
二級は複数の資格がありますが、二級のうち一級の受験資格を得られるのは、「ガソリン、ジーゼル、二輪」の3種類のみです。
二級シャシ整備士だけでは一級の受験資格は得られません。二級シャシ整備士取得の後、さらに1年間の実務経験を踏まえ「ガソリン、ジーゼル、二輪」の2級整備士を取得する必要があります。
一級と二級の最も大きな違いですが、二級については、次の通り4種類に分かれています。
・二級ガソリン自動車整備士
・二級ジーゼル自動車整備士
・二級自動車シャシ整備士
・二級二輪自動車整備士
一級には、このような種別はありません。
正確には、現在試験が実施されている一級資格は「一級小型自動車整備士」であり、他に試験未実施の「大型」「二輪」が存在します。ただ、実質的に一級は一種類です。
一級の資格ではガソリン、ディーゼルといったエンジンの種類を問わず、すべての整備をすることができます。
電気自動車や水素自動車など新世代のクルマ、電気系統の複雑なクルマも整備の範囲に含まれます。
一級と二級の最新試験(2021年3月)の「学科」の合格率を見てみます。
二級は「ガソリン」整備士の数字です。
・一級・・・61.1%
・二級・・・89.8%
学科合格後、一級には口述試験と実技試験が、二級には実技試験が設けられています。
実技も決して簡単ではありませんが、後述する自動車整備士学校に通えば実技は免除です。
最新の学科試験の合格率は、比較的高めです。ただ級を問わず、学科合格率が5割を下回る年も多いことは知っておきましょう。
学校に通っている人の合格率は、サポートがあるのでぐっと上昇します。
試験の難易度については、合格率だけを見てもわかりませんが、後述する専門学校での「2年」の学習の違いの分、大きく異なります。
一級は、クルマがすべてわかっていることだけにとどまらず、地球温暖化対策など最近の環境への知識まで求められます。
難易度としては大きく差のある、自動車整備士資格試験の二級と一級の、資格取得方法を見てみましょう。
試験受験までの要件はどちらも共通しています。
整備士試験を受けるために求められるのは、実務経験です。そして下位の級の資格を持っている必要があります。基本的には必要な実務の経験を積みつつ、さらに勉強をする必要があります。
手先が器用なだけ、指示をこなしているだけでは試験に受かりません。机に向かってする勉強量も多く必要です。
クルマのことならなんでも好きで、新たな知識を取り入れるのが苦にならない人にはとても向いています。
独学以外の方法では、一級と二級に共通する方法として、自動車整備士の学校に通うのがおすすめです。この場合、実務経験は不要です。
学校に通った場合でも整備士試験は受けなくては資格が得られません。ただし、実技試験は免除となります。
一級も二級も、自動車整備士学校に通って取得できます。
実際に多くの生徒が、2年の過程で二級自動車整備士資格を取得し、整備士としての第一歩を踏み出しています。
一級も自動車整備士学校で取得できますが、このコースは4年間です。
大学に行くのと同じ期間を掛けて学ぶことからも、一級整備士が難関であることがわかります。
4年間の一級整備士養成コースでは、前半の2年間で二級整備士を取得し、その後さらに2年間を掛けて学習を続け、一級整備士受験資格を得ます。
自動車整備士の一級と二級を比較して見てきました。
現状、一級資格は、どんな仕事場でもすぐ活かせるとまでは言えません。ですが、期待される難関資格であり、確実にこれからの自動車業界では求められていきます。
キャリア形成という長期的な視野からは、一級自動車整備士資格の取得を目指すべきでしょう。
二級自動車整備士資格は、整備工場やカーディーラーでの実務には直結します。すぐに世に出て働きたい人にはここから始めるといいでしょう。
二級自動車整備士としての実務経験があれば一級の自動車整備士資格試験も受けられるので、ステップアップしたい場合はぜひ目指してください。
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