自動車が安全に走行できるように点検をしたり、不具合のある自動車を修理したりする自動車整備士は自動車のお医者さんです。
カーディーラーや民間の自動車整備工場は自動車の総合病院となる場所ですが、病院に接骨院や歯科医院、耳鼻科医院等の専門分野に特化した病院があるように,、自動車整備士にも特定の分野に特化した自動車整備士がいます。
それが特殊整備士です。
特殊整備士はカーディーラーや民間の自動車整備工場に限らず、タイヤ販売店・板金塗装業・電装部品修理工場等の自動車関係の多岐に渡る分野で活躍できる自動車整備士です。
また、自動車整備工場に一定数の特殊整備士がいることによって優良自動車整備事業者の申請を行うことができ、運輸局の審査に合格することで優良自動車整備事業者になることができます。
(出典元 東京都整備振興会)
特殊整備士は1級・2級・3級自動車整備士とは別に設けられた自動車整備士の国家資格で、自動車電気装置整備士・自動車車体整備士・自動車タイヤ整備士の3種類に分かれています。
特殊整備士は1級・2級・3級自動車整備士資格のようにステップアップしていく資格ではなく、各試験に合格する事で特殊整備士の資格を得ることができます。
自動車を走行させるのに電気装置は欠かせないものとなっています。現在の自動車は電気制御式のものが大半を占めているために様々な部位で電気装置を使用しています。
燃料の噴射時間・噴射時期・各センサーの異常を検知しているECU(エンジン・コントロール・コンピューター)、エンジン始動時に必要な働きをするエンジン・スターター、走行中のバッテリー充電を制御するオルタネーター等走行に不可欠なものから、カーエアコンシステムやカーナビゲーションシステム、自動ドア等のお客様のカーライフを豊かにする為の装置等あらゆる部位で電気装置が使用されています。
自動車電気装置整備士は、このような自動車の様々な部位で使われている電気装置の修理に特化した資格となります。
自動車車体整備士は車体やフレームの点検整備に特化した資格で自動車の板金塗装業や自動車の組み立て工場において有意な資格となります。
板金塗装業や自動車の組み立て工場は資格を有していなくても就職することは可能ですが、技術・知識の向上のため取得しておいた方が良い資格となります。
自動車タイヤ整備士はタイヤ交換作業のみならず、タイヤの異常摩耗の点検・原因追究やタイヤの許容荷重の計算、お客様のニーズに合わせたタイヤ選び等に特化した資格となります。
自動車のタイヤは全て同じ様に見えますが、各タイヤメーカーにより性質が異なり、同メーカーの物でもタイヤのグレードによって自動車の乗り心地は大きく異なってきます。
お客様の自動車の使用状況やタイヤ購入の予算等を問診して適切なタイヤをお客様に提供するのも自動車タイヤ整備士の大切な仕事となります。
タイヤのスペシャリストとなる自動車タイヤ整備士ですが、タイヤ交換作業を行うのに資格が必要ないことや自動車整備士資格でタイヤについての知識を学べることから平成12年を最後に試験が行われていません。
(出典元 社団法人 帯広地方自動車整備振興会)
特殊整備士となるには特殊整備士の受験資格を得てから実技試験と学科試験に合格する必要があります。
特殊整備士は自動車整備士の資格の中でも特定の分野に特化した資格になるので明確な目的を持って資格取得を目指しましょう。
特定の機械工学学科や自動車整備学科以外の学校を卒業後に特殊整備士が関わる企業に就職をしてから特殊整備士の資格を取得する場合は2年の実務経験を積むことで受験資格が与えられます。
無資格でカーディーラーや民間の自動車整備工場に入社した際は特殊整備士よりも3級自動車整備士資格の取得、2級自動車整備士資格の取得の方が優先されるために特殊整備士の試験勉強に時間を割くことが難しくなります。
また、働きながらの勉強となるので自動車整備士資格の取得も困難となります。
自動車整備士養成施設の学校等で2級自動車整備士の資格を取得した後に特殊整備士に関わる企業に入社をした場合は1年の実務経験を積むことで特殊整備士の受験資格を取得することができます。
カーディーラーや民間自動車整備工場では自身のスキルアップの為に特殊整備士の資格を取得する者も多く、特殊整備士の資格を取得する王道のルートとなっています。
特殊整備士となるのに1番の近道が自動車整備士養成施設の学校の特殊整備士コースに進学をすることです。
特殊整備士は就職先が固定的になってしまうために自分の進路を決めてから進学するようにしましょう。
また、特殊整備士の資格を取得すれば3級自動車整備士の試験を実務経験を積まなくても受験することができるので仕事に合わせて取得するようにしましょう。
特殊整備士は各分野に特化している資格なので必然的に目指す就職先が決まってきます。
カーディーラーや民間の自動車整備工場では運営に必要な2級自動車整備士以上の求人がほとんどの為、特殊整備士は各専門業種の会社に就職することが目標となってきます。
特殊整備士は各専門分野においてスペシャリストとなる存在ですが、自動車の走る・曲がる・止まるの重要な保安部位の分解整備を単独で行うことができません。
分解整備を単独で行うには2級自動車整備士以上の資格が必要となり、カーディーラーや民間の自動車整備工場では分解整備を伴う車検や法定点検がメインの仕事となる為に、特殊整備士より2級自動車整備士以上の資格保有者の方が就職に有利となります。
また、2級自動車整備士以上の資格を保有していれば整備主任者を経て自動車検査員となることができ、自動車整備工場の運営に関わる重要なポジションに就くことができます。
カーディーラーや民間の自動車整備工場への就職を希望する場合は2級自動車整備士以上の資格を取得してから入社をして、1年の実務経験を経てから特殊整備士の資格を取得することが望ましいです。特殊整備士の資格を取得することで更なるスキルアップすることを目指しましょう。
自動車電気装置整備士の主な就職先は電装部品の修理工場や電装部品のメーカーとなります。
多種多様な自動車用品を取り扱う自動車用品店でもカーナビゲーションや室内の電飾、セキュリティーシステムの取り付け等配線加工をする作業があるので自動車電気装置整備士の資格は就職の際に有利となります。
電装部品の修理工場や電装部品のメーカーに特殊整備士として就職をした後は、自動車の基本的な構造や働きを知る必要があるために自身のスキルアップも兼ねて3級自動車整備士資格取得を目指しましょう。
また、近年では次世代カーの登場により動力源が電気の自動車が増えてきたので、今後注目の資格となります。
自動車車体整備士の主な就職先は板金塗装工場となります。
板金塗装工場に特殊整備士として就職した後は、3級自動車シャシ整備士資格・3級自動車整備士資格の取得を目指しましょう。
板金塗装工場でも修理を行う場所によっては分解整備を伴う部品の脱着や交換作業が必要となるので、最終目標を2級自動車整備士資格取得とすることでスキルアップをすることができます。
また、板金塗装工場以外の就職先として損害保険会社の事故車の修理見積りを行うアジャスター職があります。
事故車の修理見積りを行うには自動車の構造や仕組み等の知識が必要となるため、特殊整備士として就職をした後は3級自動車整備士資格を取得しましょう。
自動車タイヤ整備士資格の試験は上記で述べたように現在は実施されていません。
自動車タイヤ整備士と同様にタイヤ販売店やタイヤメーカー、タイヤを取り扱う自動車用品店への就職を希望する方は3級自動車整備士以上の資格を取得することでタイヤに関する知識を得る事ができます。
特殊整備士になるのには自動車整備士養成施設の学校に進学するのが1番の近道と前述しましたが、自動車整備士養成施設の学校によっては特殊整備士コースを設定していない学校があります。
特殊整備士を目指す方は事前に学校案内の確認や体験入学等を試してみて、その学校に自分の希望する特殊整備士コースがあるかを確認しましょう。
関東工業自動車大学校の車体整備科では最初の2年課程で2級自動車整備士の資格を取得してから自動車車体整備士資格の取得を目指します。
車体整備科では自動車の基本的な構造や仕組みに加えて板金塗装やフレーム修正の技術も身に付けることができます。
2級自動車整備士資格と自動車車体整備士資格の両方を取得できれば就職活動の際に
大きな武器となります。
ここまで特殊整備士について説明をしてきましたが、自動車整備業界において特殊整備士じゃなければ作業できない整備や点検
が存在していない為に特殊整備士は軽視されがちになっています。
しかし、分野に特化した知識を得る事で自身のスキルアップをすることは自動車整備士にとって非常に重要なことになります。
自分に必要だて思う資格はドンドン取得していって自動車整備士としてのキャリアアップをしていきましょう。