整備士の免許を取るにはいくらかかる?国家資格自動車整備士の取得コースと費用について
自動車整備業界で仕事をしようと思うのなら、資格の取得を避けて通れません。
自動車整備士です。
自動車整備士資格を取るには、お金はどのぐらいかかるのか、調べたい方も多いでしょう。
なお自動車の運転とは違って、整備士では「免許」という言い方はせず、資格と言います。
国家資格である自動車整備士取得に掛かる費用について見ていきます。
知らなくて恥をかくとほどではないものの、この機会に言葉の違いを簡単にご説明します。
自動車整備士が取得するのは免許でなく、資格です。
免許と資格の違いです。
・免許・・・持っていないとその業務に従事してはいけないもの
・資格・・・その業務を行うのにふさわしい能力を示すもの
運転免許は、これを持たず公道を運転することは禁じられています。
いっぽう自動車整備を資格なく行っても罪にはなりません。
実際、自動車整備士を受験するためには見習工としての実務経験が求められていることを見てもわかるように、無資格者の行う業務が最初から業界には想定されているわけです。
もっとも見習工では、整備をしようとしてもできません。
人の命を預かる、責任感が必要な仕事ですから、いつまでも見習工のまま続けられるわけではありません。自動車整備士資格を取得し、一人前の整備士になりましょう。
自動車整備士資格は、1~3級に分かれています。他に、特殊整備士の資格があります。
整備士資格を取得するルートは複数ありますが、この記事ではルートを費用の程度で分けて、見てみます。
ごく普通には、2級自動車整備士資格があれば整備に関するほぼすべての仕事ができます。働きながら資格を取るには、ここを目標にするのがいいでしょう。
さて、2級資格を学校に通わず安価に取得するためには、まず3級からスタートする必要があります。
3級の資格を取得する方法から見ていきます。
自動車整備士の最高資格は1級です。
1級には3種類あるものの、実施されているのは1種類のみで、1級といえば実施されている1級小型自動車整備士のことを指します。
1級整備士は、水素自動車等次世代のクルマ、複雑な電気系統なども含めた、クルマのすべての整備ができる資格です。
開発やコンサルティングなどのシーンにおいて、クルマのエキスパートとして働ける、奥行きのある資格なのです。
ただ、整備工場では通常、ここまでのレベルは求められていません。
学校に通わず、費用を掛けずに3級自動車整備士を取得できます。
整備工場の見習工から始めるのが最も安価なコースです。
整備士の見習工になるのに、資格や学歴は要りません。
見習工として給料をもらいながら実務経験を積み、さらに学科(ペーパー試験)対策をして、資格を取得することができます。
見習工になる目的は、資格だけではありません。自動車整備士として一人前になるために実務をしっかり習得していきましょう。
単に目先の仕事をこなすだけでなく、その先になにがあるのか、整備の仕事を常に体系的に理解するよう心がけましょう。
3級自動車整備士試験を受けるためには、1年間の実務経験が必要です。
高校・大学の機械科を出ている人なら、6か月間の実務経験で構いません。
3級には、次の4種類があります。
・ガソリン
・ジーゼル
・シャシ
・二輪
ガソリン、ジーゼルはエンジン種別であり、シャシはクルマの足回り部分です、
2級を取得するための必須条件として3級に挑む場合、4種あるうちのどれに合格しても差はありません。
試験は、学科と実技で構成されています。
学科は全員が受験します。テキストを買ってしっかり学習しましょう。
試験の受験料は、学科4,200円、実技16,000円です(2021年)。
3級の合格率は、年度によって異なりますがおおむね以下の通りです。
・学科・・・5~7割程度
・実技・・・5~6割程度
学科も大変そうに見える数字ですが、過去問をしっかりこなせば必ず受かる程度の難易度です。
難関なのは実技試験です。
実技試験では出題に基づき、実際に工具、クルマを触って作業をします。
実務で使ったことのない工具を使わなければならないこともあるなど、難易度が高く対策も困難です。
ただし、この難関実技試験を正面突破する方法なら、費用はほとんどかかりません。
ただ実技試験免除の方法があるので、次に見てみましょう。
都道府県ごとにある自動車整備商工組合で「自動車整備技術講習」を実施しているので、こちらに通うことで実技試験免除(2年間有効)となります。夜間コースもあるので、働きながら受講できます。
受講費用は、2021年の東京自動車整備商工組合の場合、次の通りです。
http://www.tossnet.or.jp/LinkClick.aspx?fileticket=NXbgUnxz%2bGw%3d&tabid=89
種別 | 時間数 | 東整振会員 | 会員外 |
3級基礎 | 48 時間 | 29,000 円 | 42,000 円 |
3級自動車シャシ | 96 時間 | 56,500 円 | 82,500 円 |
3級自動車ガソリン | 96 時間 | 56,500 円 | 82,500 円 |
3級二輪 | 96 時間 | 56,000 円 | 81,500 円 |
2級ガソリン | 32 時間 | 79,000 円 | 114,500 円 |
後ほど2級にも触れる関係で、併せて2級コースも載せておきます。
3級については、各コース受講の前に、「3級基礎」の受講が必須です。
一覧に「3級ジーゼル」や「2級ジーゼル」等がないのは、この年の東京にはジーゼルのコースがないということです。毎年全部のコースが用意されてはいません。
3級自動車整備士を取得すると、見習工から仕事の幅が大きく増えます。
とはいえ3級ではまだ補助業務しかできません。この先、一人前になるためには2級の取得が求められます。
3級を取得した人は、2級も学校に行かずに取得することが可能です。
2級には、3級と同様、次の4種類があります。
併せて、3級合格後求められる実務経験年数も記載します。
・ガソリン(3年)
・ジーゼル(3年)
・シャシ(2年)
・二輪(3年)
3年の実務年数は、高校の機械科を出ていれば2年、大学の・専門学校の機械科で1年6か月間に短縮されます。
シャシ2級のみ、3級合格後2年で受けられる(機械科出身だと高校1年6か月、大学年)など、受験資格がやや優遇されています。
その代わりシャシ2級の場合、1級自動車整備士や自動車検査員の受験資格が得られません。
2級の場合、複数の種類を得る人も多く、シャシ2級から始めても問題ありません。
2級自動車整備士の試験も、3級と同様、学科と実技で構成されています。
試験の受験料は3級と同様、学科4,200円、実技16,000円です(2021年)。
2級の合格率は、科目と年度によって異なりますが、受験者の多い「ガソリン」を例にとるとおおむね以下の通りです。
・学科・・・4~8割程度
・実技・・・2~5割程度(ただし受験者が少ないため参考になりづらい)
2級の学科試験の場合、年2回あるうち春の試験の合格率が8割以上と高く、秋の試験だと5割程度に下がります。
春の試験は専門学校卒業生が数多く受験するためです。学校出身者は大部分が合格します。
整備士工場で3級からコツコツステップアップする人の実質合格率は5割前後とみておいたほうがいいでしょう。
いっぽう実技試験は受講生が非常に少なく、またすべての科目が毎年実施されるわけでもありません。
2級受験者の大部分は、3級の項でも紹介した自動車整備技術講習を受けて、実技試験免除を得ています。このため実技試験の合格率はあまり参考になりません。
2級の実技試験は、多くの人が講習に通い免除される道を選びますが、実際に受ける人もいます。
実技の内容は、大変に難しくなっています。
例を挙げます。
令和3年度の実技試験で実施されたのは「ジーゼル2級」のみでした。ガソリンと隔年で実施されています。
この際はわずか15人が受験し、5人のみ合格という難関でした。
その2年前に実施されたジーゼル2級の実技試験では、11人受験して合格者ゼロでした。
実技試験が免除されるための講習代を惜しまないほうがいいでしょう。
2級まで、整備士資格を安価に取得する方法を先に見ました。
理屈の上では、整備工場で働きながら、テキスト代だけで2級まで得られます。可能性としては、この先1級も可能です。
ただ、特に2級の実技試験が難しく、実技試験免除が得られる講習に通うのが普通のルートとなっています。
この費用はあらかじめ考えておくといいでしょう。東京の場合の費用を、3級の項に合わせて載せています。
さて、自動車大学校等の専門学校に通うことでも2級自動車整備士の資格が得られます。
費用は当然掛かりますが、確実性の高いこちらのコースを見てみます。
自動車整備士になるためには、養成施設に通うのが早道で、確実です。
養成施設には一種、二種の区別があります。二種が先に取り上げた講習です。
・一種・・・自動車大学校等の専門学校。実務経験のない人が対象
・二種・・・自動車整備技術講習。整備士あるいは見習いとして働きながら通う施設
専門学校は、一般的には高校卒業後に通うことが多いものです。
2年コースに通うと、2級自動車整備士を取得できます。
卒業後に2級の学科試験は受けなければなりませんが、専門学校の学生なら高確率で合格します。
全国各地にある自動車大学校等の専門学校は、一種養成施設です。
こちらの2年コースに行った人は、卒業時に2級を取得してから社会に出ます。
学校では2年間、徹底して実技を教え、試験対策もしてくれるため、卒業生の大部分が受かるのです。
整備士業界で大部分の仕事ができる2級を、学校で取得してから整備工場やカーディーラー等に就職できるわけですから、学校が人気なのも当然でしょう。
埼玉県鴻巣市にある関東自動車大学校を例に、2年間通う場合の費用を見てみます。
・入学金・・・330,000円
・1年次合計・・・1,030,000円
・2年次合計・・・1,030,000円
埼玉県全土から出るスクールバス無料と、学費以外の経費が一切掛からないという点が大きなメリットです。
寄付金も不要です。
約240万円用意すれば、2級を取って整備士生活をスタートできるわけです。
2級自動車整備士の資格を取るにあたってのまとめです。
・大きく分けると、費用の掛かる専門学校通学か、あまり掛からない独学か
・自動車大学校等、専門学校の2年コースに通うと、高い可能性で2級自動車整備士に合格する
・費用を掛けずに独学で取得するためには、整備工場の見習いから始める
・独学の場合、3級および2級の実技試験は難関
・自動車整備技術講習に通うと実技試験免除となる
どうぞご参考にしてください。
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